大田区マンション管理士会

姥捨てマンション

 昔の英国映画、それぞれ事情があってホテルに何年も居住する歳老いたご婦人たちが主人公です。そのホテルのレストランでアフタヌーンティーを楽しむ光景、いつだって身なり良く、おしゃれは欠かさないことで自己の尊厳を保っているようです。
 給仕やご婦人同士のKing’s Englishの気高く畏まった発音での会話は機智に富み、画面にはそれぞれの過ぎ去った栄光の日々が映し出されていました。
 しかし、ここへは自身の子や孫が会いに来ることはなく、人生の最期を迎えるホテルです。 

 日本のシニア向けマンション「子どもには迷惑をかけたくないので・・、独り身では不安なので・・、安心できる終の棲家を・・」入居理由は様々ですが、概ね老後は気兼ねすることなく安心して過ごしたいということですが、現実とは大きなギャップがあるようです。

クロード・モネ『ベヌクール近くのセーヌ川の浮氷』1893年

 ある賃貸型シニアマンションでは付き添いができないため外出は禁止、何を依頼しても別途請求があり、認知症や要介護が進むと退所させるという無茶な条件の施設もあるので注意が必要です。見守りどころか牢獄のようで、かといって戻れる場所もなく、年金を貪るこれは貧困ビジネスのスタイルに似ています。
 また賃貸型の別例では所有者(経営権者)の変更が多く、その度に管理費の値上、サービスの変更(低下や中止)が行われるのが常です。
 よくあるのが、最初は読書室や大画面で映画鑑賞もできるピアノラウンジだったところが、入所者の希望(これ言い訳)で、カラオケやマージャン室に変更、つまり声の大きな入所者が共用スペースを独占し、導入費用や維持費は他の人も負担させられる上に、騒音に悩まされる現状も聞かれます。尚、ピアノを弾ける方が誰もいません。www

クロード・モネ『ヴェトゥイユの教会』1879年 オルセー美術館

 分譲型のシニアマンションでは、基本的に区分所有マンションと同じですが、基本サービス料金の他は選択制です。初期の購入費用の他に高額なサービスが自分に合っているのか等、契約書の内容をしっかりと理解してからでないと購入のお勧めはできません。
 「こんなんだったら普通のマンションを買った方がずっとよかった。」と後悔しないように気を付けてください。

 また、地域の病院と健康診断等の提携はあっても、医師が常駐する救急病院が併設することはまれで、急病の場合は救急車に頼ります。
 3食サービスが(食べなくても)管理費(健康管理を含む)に込みの場合、買い物や好きなものを自炊ができる方、食べ歩き等が好きな方は、料理がワンパターンになりがちのためストレスが溜まるかもしれません。
 トレーニングルーム、各娯楽施設、これに温泉やプール、外来者も利用できるレストラン、フロント並びのミニコンビニまで併設されているところもありますが、自身が利用しなくてもそれらの運営維持費の多くが管理費に乗っかっているのが一般的です。

 区分所有の分譲マンションですので、シニア向け関連のサービス費用の他に、建物共用部分の維持・保守管理のための管理費や修繕積立金の負担が毎月必要になります。
 管理組合の一員となり役員を選出し理事会、総会を開催して組合運営を行うのは同じですが、通常は管理をしている会社が主導するので会計が不透明(監査し難い構造)になる傾向はあると思います。

クロード・モネ『赤いカーチフ』1868年 クリーブランド美術館

 区分所有建物のメリットは、相続で子供に財産(マンションの部屋)を残せることがあります。
 しかし、(立地環境によりますが)もともとシニアマンションの需要が少ないため、多くの場合は売却希望額には遠く及ばず、普通のマンションに比べ高額な毎月の負担金(管理費等)は、売却(購入希望者)を待つ期間の管理費等は短期間で数百万円となります。相続で揉めている間に売値を超え、最悪そのまま何年も放置すれば不良資産(負動産)となります。
 サービス付き高齢者住宅(サ高住)、賃貸型シニアマンション(健常者・自立型)、そのサービス内容の範囲(要介護不可等)で入退所条件が様々です。
 海岸通りから坂道を登り切ったリゾート地のシニアマンションでは、絶景が楽しめます。しかし車がないと買い物にも行けませんね。健康な時には全く気付かない盲点だらけです。高額商品ですので、くれぐれも慎重に選んでください。
 いずれも本人、家族が納得していればよいのですが、経営者(又は管理者)が変更になったので・・・という「お知らせ」も覚悟しておかなくてはなりません。

ポール・セザンヌ『レスタック・雪解け』1871年

 独居高齢者が600万人、うち100万人以上が一日中誰とも話さないと言われています。
 男性と比較して女性の方が長寿命ということも一因でしょうが、最近マンションで一人暮らしの高齢女性が目立ちます。その中には様々な事情で家族とは疎遠だという方が多く、孤独を感じているケースもあると思います。

 直近で会話したのはマンションの管理員さんだけ、緊急連絡先が家族ではなく、民間のサポートセンターにしている方もいます。わかっているだけで3万人の孤独死が報告されています。
 以前「楢山節考」の映画版を観ました。
 貧しい寒村の掟で齢70を超えた老婆(坂本スミ子)を背負って姥捨て(楢山参り)に向かう息子(緒形拳)のシーンが印象的です。
 貧農で女児が誕生した場合は、口減らしのため間引きする「子消し」が「こけし」の由来になっていると言われます。それを思うと東北地方のこけしの表情が悲しげに感じます。
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 NHKを始めとするオールドメディアは、いわゆる高市下げ(サブリミナル効果=古典的手法)を陰湿にかつ盛大にやらかして非難されていますが、先の無い業界の断末魔の叫び、やったもん勝ちの世界、もうAIに任せた方がよいのではと思います。

 挿絵はすべて美術ファン@世界の名画から冬をテーマにつまみ食いさせていただきました。松尾好朗

おまけ:池上梅園は、いまが見頃です。

尾形光琳 『紅白梅図屏風』

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