赤くて小さい宝ダニの季節です。

 「あれは何だ?!蜘蛛の子だ!外来種のアリよ!いや、あれはタカラダニ♪」(古い人ならわかるフレーズです。ww)
 5月と6月、マンションの開放廊下やバルコニー、手すりやコンクリート壁に、素早く動く小さい赤い点が見られます。目が慣れてきたら、ここにもあそこにも、いやいやいやものすごい数がいます。

 宝ダニ発生警報です。(カベアナタカラダニBalaustium murorum)晴れた日乾燥した環境でよく見かけます。人に寄生したり咬んだりしませんが、つぶすと赤い汁が服につくと厄介です。雑食性ですが花粉が大好き、卵が越冬して大繁殖します。

壁穴宝ダニ 体長1mm 耐熱45°

 天敵は水なので、水を噴霧するだけでも殺虫効果がありますが、くれぐれも下の階のバルコニーに干された布団へ、ダニ汁を垂らさないようにご注意ください。ww
 写真の通り8本足が昆虫でない証拠ですね。毎年、退治しようと思いながら、ある日いっせいに消え去ります。気持ち悪さが迷惑なだけで直接の害はありません。

マティス「赤い調和」1908年 フォービズム

 赤い虫で思い出すのは、カーマインです。絵の具のチューブに色名が書いてありますね。日本の色名は美しい呼び名が多くあるので、カーマインの由来もきっと素敵な物語があるのだろうと、勝手に想像していたのにカイガラムシ(カーマイン・臙脂虫)を乾燥して取り出した色と知って、がっかりしたのを覚えています。

 カイガラムシは、樹液を吸って糞や粘液で植物のスス病をもたらす害虫です。マンションの垣根によく使われるシラカシ等にも見られます。
 スペインは中米のウチワサボテンにつくコチニールカイガラムシ(カーマイン)を染料にして欧州に売り捌き大儲けした時代もあったようです。

エドヴァルト・ムンク「赤い蔦」1900年
ノルウェー出身

 カーマインの和名、臙脂(エンジ)は中国の燕の国(春秋十二列国)から伝わった脂(化粧紅)らしいのですが、私は鳥の燕(つばめ)の喉あたりが赤いので、燕の字が入っていると思ったのですが違いました。

 濃い臙脂色は、立命館や早稲田(大隈重信の乾いた血の色?)がスクールカラーにしています。フェアレディZの初代ボディー色がこれでした。
 英米語は、dark red,deep red (濃い赤、深い赤・・・そのままやんけ)、夢を感じませんね、まだ burgundy(ブルゴーニュのワインの色)といういい方なら許せます。ww
 ダニの写真だけではアレなので、私の好みの赤い絵を貼っておきます。
 松尾好朗

エゴン・シーレ(Egon Schiele)「膝を上げた赤いブラウスのヴァリー」1913年



管理会社への疑問符(相談会より2件)

 2件とも100戸弱の規模のマンション組合員からの相談でした。(区内と区外) 
1.Aマンションでは大規模修繕工事の実施が、ある大手管理会社が主導し総会提案され、金額も工事業者もそのまま決議(ほとんどが委任状)されました。さらに設計監理もその管理会社が行うという内容に疑問を抱いた組合員からの相談でした。

 その計画の仕様書内容の割には戸あたり150万円を超え、しかも設計監理料は新築工事と間違えるほどの金額が記載されていました。
 その上、修繕積立金のすべてを搔っ攫う(竣工時の残金ほぼ0円)という今後の管理組合の長期的な修繕計画を全く無視した計画なんですね。「管理会社利益ファースト」です。

 主導した管理会社だけでなく、工事費、監理料の見積もり価格を他社と比較もせずに管理会社へ任せて総会決議した管理組合の役員、結果的に管理会社の言いなりで誰も疑問視しなかった組合員を非難することになるため、詳しく報告はできないのが残念ですが、決議される前の相談が必要でした。

 次の大規模修繕工事の頃には、積立金を大幅に値上げしないと不足し、さらに借入しなければ不可能な状態です。決議されたので違法ではないというでしょうが、ここまで放置して残金を0円にするありえない計画を立てる管理会社のレベルを疑います。

2.Bマンションでは「今後の組合運営のため、第三者管理方式を採用するので、その説明会を開催します。」と理事長名で突然の発表がありました。役員の成り手不足の傾向はあるものの、なんとかこれまで組合運営を続け、来期には第2回目の大規模修繕工事を控えている管理組合の出来事です。

 概要は「大規模修繕工事は素人の私たちでは手に負えない。それに毎年の役員の選出が限界なので管理者を管理会社へお願いしようと思う。
 毎月の管理費が値上げになるが、私たちは役員から逃れられ、管理をプロに任せられるので将来的には組合員のためになる。」という内容でした。

 第三者管理を管理会社が行う場合、将来に亘り管理会社のATM、いわゆるカモにされるのを理解しなければなりません。第三者管理が必要な組合(リゾートマンションや投資型ワンルームマンションのように区分所有者が住んでいない場合)には役立つ場合もあると考えます。しかし、ごく一般的なファミリータイプのマンションへ、盛んに第三者管理を勧めてくる管理会社があるのが最近の傾向です。一度契約すると抜け出しにくいシステムで、植民地にされたように搾取され続けます。

 ご相談をいただいたこの2件の管理委託先は、同じ大手の管理会社でした。このビジネススタイルは、組合員の未来よりも今の自社の利益が優先としか見えませんね。

 いろいろあっても管理会社がちゃんとやってくれるだろう、「全部お任せ」は危険です。次の大規模修繕では、借金をさせて儲けてやろう。工事が終わって、もうこの組合からは利益は出ないと判断すると契約はサッサと解除され、借金マンションが荒野にポツンと残ります。

 どこかが故障しても修理するお金はなく放置され、資産価値が下がり朽ち果てるのを待つだけの寂れたマンションの未来が見えます。
 建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)第30条には、「管理又は使用に関する区分所有者相互間の事項は、規約で定めることができる。」とされ、その規約は国交省が推奨する標準管理規約(ひな形)として提示されています。
 その中第20条(区分所有者の責務)として、「その価値及び機能の維持推進を図るため、常に適正な管理を行うよう努めなければならない。」と示されています。
 第三者管理の方式は、この「区分所有者の責務」を放棄していることになります。先に書きましたが、管理会社が管理者になる場合、植民地経営になるので区分所有者を生かさず殺さず契約書で縛り上げて利益が出ている間は逃さず、価値がなくなると捨てられます。
 もう少し早くマンション管理士会に相談をいただいていればと悔やまれます。

15エコス通りブリュッセル

 挿絵の画家ポール・デルボーが、1901年4歳の時に転居したのはブリュッセルのエコス通り界隈です。おそらくこの最近の写真と街並みは変わっていないと思います。 
 建築を志すも数学がダメで画家の道へ。
 数多の画家の中では、絵から波の音や磯の匂い、都会の喧噪と乾いた空気、嵐の雨音が聞こえてくるような表現はよくありますが、この人の作品には共通してひんやりとした空気と静寂を感じます。

 LATEST
 私は兵庫県尼崎市出身ですので、先頃行われた兵庫県知事選の行方を興味深く見守っていました。
 斎藤氏が勝利した原因がSNSの力と言われています。しかし対抗候補の稲村元尼崎市長(緑の党-自公立推薦)を知っている人は、「この人だけは絶対あかん、このままだと組織票で当選してまうで」と普段は選挙に行かなかった層が投票に出向いた(投票率)からであり、皆が皆SNSに馴染んでいるわけではありません。その元尼崎市長は日本一の生活保護率(外国人含む)の実績を残し、自身は歴代最高額の退職金を受けた人物です。
 前川喜平氏(元文科省事務次官)は斎藤氏の当選がよほど気に食わないようで、兵庫県民への幼稚な悪口の連続投稿が止まりませんね、紙の試験でしか点数がとれない愚か者です。
 松尾好朗

配達員の出入り禁止??ブランズ渋谷常磐松

* 11/17(日)開催の無料相談会のお知らせはこちら

 もう読まれた方も多いのかと思いますが、次のマンションの玄関に掲示(写真)された内容がSNS上で炎上していましたね。
 「なんか腹立つ」「あんた何さま?」「だったらそっちが取りに来いよ」というような意見が目立っていました。www
 少し面白いので取り上げます。

Amazon 宅配業者へのお知らせ
建物の美観を損なう恐れのある「角バッグ又は籠等」を使っての館内配達は禁止です。
損傷の恐れある行為として警察に通報します。
※防犯カメラ作動中
ブランズ渋谷常磐松 管理室


 このマンションの管理会社である東急コミュニティーは批判を受けて、すでに掲示を外しました。
  

 ところで、「角バッグ」ってウーバーの背負っているあの四角いバッグのことですか?見たことないけどAmazonの配達で背負ってました?「籠」って、アフリカの女性が頭の上に野菜を入れた籠を載せて売りに来たか?とみんな思ってしまいますよね。www
 これ書いた人、まったく言葉が足りません。「角バッグ」って、大手の宅配業者が引き摺っている小さいコンテナ(マンション毎に荷分けされた60×45×高さが80cm程度の大きさ)のことでしょう。それと「籠・かご」って病院やホテルの裏方で見かけるキャスターの付いたカーゴ(cargo)の間違いですね?
 「建物の美観を損なう」とは、洗濯物や布団をバルコニー手摺より上に干すことを美観を損なうため禁止する等の時に使うことがありますが、宅配業者が出入りする行為を普通、美観を損ねるとは言いませんよね。
 

 マンションの管理員から宅配の配達員の持ってるバッグが、損傷の恐れがあるから捕まえてっ!と警察に通報されても困ります。www
 尚、私は洗濯物や布団をどのように干そうが自由だという考えなので、勝手にルールを作っても無効だと思っています。人の衛生、健康につながる行いは美観なんぞよりも優先されるからです。誰に邪魔されることなく太陽の恵みを授かりましょう。「バルコニーに布団を干そう!」布団は叩かず落とさずです。

 でも、掲示した側に立つと、ヤマト運輸や佐川急便等の大手の配達員や委託業者は社内教育を受けて(受けていなくても人として出来て)いるので、マンション内では居住者には挨拶やエレベーターは居住者優先、管理員への挨拶も欠かすことはなく、台車をガンガンぶつけることなく、マンション内の平穏を乱さず宅配員のインターホンからの呼び声もマンションの日常風景として調和しています。
 かたや、(人物によりますが)Amazon等の配達員は、風体怪しく深夜早朝から宅配ロッカーを独占、ウーバーの配達員もすれ違っても挨拶どころかスマホばかり睨んでいます。全員ではないと思いますが、こちらから挨拶しても無視されては確かに気分悪いです。
 雨の日は泥靴のまんま侵入(突入)、マンションの清掃済の廊下にしっかり足跡と台車のわだちを残します。これでは管理員・清掃員、管理会社も文句どころか、出禁を宣言したくなる気持ちもよく理解できますね。

一等地で、投資用に最適です。
13階で72戸、61㎡~150㎡ 東4-6-21
2017年(平成29年)9月竣工なので2024年で7年が経過まだ新しいですね。
 ロシア革命から100年経ち、桐生が100m9.98秒を記録した年です。
 ×常盤松⇒〇常磐松 皿は割れるので石になりました。
 この付近は江戸の頃は薩摩の島津家の地所でした。維新後は「東京府豊多摩郡渋谷町常磐松」明治の終わり頃まで皇室の御料乳牛場、広尾商店街のはずれに牧場の看板があった記憶があります。

 常盤松の由来は、吉良頼康の側室、源頼朝の側室の常盤の説がありますが、どちらも接点がなく後付けだと思います。
 私は昔このマンションの近くに住んでいました。恵比寿駅、渋谷駅、広尾駅、表参道駅どこに行くのも1,2kmぐらいで鉄道面では不便です。
 その頃は、安売りスーパーマーケットや個人商店もありましたが、地上げされて無計画にビルを建て、整理されないまま今に至ります。
 話がそれましたが、大手であろうとバイト配達員であろうと、館内に招き入れるのは居住者本人です。それが問題というなら、戸数以上の数の宅配ボックスの設置、またはホテルのようにすべての配達物はフロントで預かる方法しかないと思います。
 預かるためには大きめの冷蔵庫、冷凍庫が必要になりますね。大規模マンションでは中元・歳暮シーズンでは大量の荷物の置場が無くて混乱します。連絡してもなかなか取りに来ない人もいます。
 24時間コンシェルジュが常駐の高級マンションでは、配達員を立ち入らせないで運営ができているところもあります。
 防犯システムにより在宅しているか留守なのか常時監視されています。エレベーターも訪問者だけでは動きません。訪問者も時間や行き先、監視カメラの画像として記録されるので、プライバシーの問題があります。
 防犯面では安心なのですが、私はイヤですね、監視されて生活するのは。
松尾好朗
 

読みましたか?マンション防災

 5月19日(日曜日)14時開催の無料相談会の情報はこちらです。
 沖縄のマンションに住む女性からの投稿です。(ネットニュースより)
  ・・・4月3日の台湾東部沖での地震に伴い津波警報が出されました。幼い子供を連れた私には、指定されている高台への避難は無理なので、自宅マンションの屋上へ避難することにしました。

 ところが、屋上に通じる非常階段の扉にはカギがかけられていて開きません。管理員を探し、津波警報が出たので屋上へ避難します。すぐに非常階段の扉のカギを開けてくださいとお願いしたところ「津波なんて来ないさー」と対応され・・・という内容でした。
 共用廊下からの非常出口のカギを閉められては地震どころか火災の時も階段で逃げることができませんね。(通常は内側から開けられる仕様=避難路)

フェリックス・ヴァロットン(1865〜1925)
スイス生まれでパリで活動した画家です。

 この管理員だけでなく、知事も「なんくるないさー」と注意喚起が全くなかったのは危機管理能力が乏しすぎるような・・・。

フェリックス・ヴァロット
1898 「嘘」 ボルチモア美術館

 大田区のハザードマップでも多くの地域が0m以下です。
 指定された高台にある避難場所まで歩く防災訓練も必要ですが、マンションごとの事情に合わせた訓練が必要ですね、新たな問題点、改善すべき点が見つかる可能性があります。
 
 前々回の「そうだマンションに住もう!」と重複しますが、大規模な地震で多くの老朽化した建物の崩壊が予想されます。

 人命の救助、主要幹線道路の瓦礫撤去等と復旧、避難場所、救援物資ルート確保そしてインフラの復旧、仮設住宅・・・復興まで長引く場合は地域が疲弊しますね。

 一定の築年数を経た建物(特に木造)や崩壊のおそれのある建物は、改修の強い指導、期限を定めての改善命令が必要です。
 能登の惨状を見れば、再び三たび、日本のどこかで繰り返されるのは明らかです。
 その都度、当然崩壊するような建物の復旧に税金投入するのは疑問です。
 災害時の避難所生活や車中泊は長くできるものではありません。乳幼児や要介護の高齢者、ペット連れだとなおさらです。

The family of trees 1922年

 マンションの場合、建物に大きな損壊が無ければ、ほとんどの場合は在宅避難が可能です。
 高層マンションではエレベータが復旧するまでは階段の上り下りに苦労しますが、数日間分の飲料水と食べ物の準備、簡易トイレや情報が取れる手段(radio等)の対策をしておけば、避難所で窮屈な思いをするより格段にマシでしょう。

フェリックス・ヴァロットン 
お金(アンティミテ5)木版画

 避難所での良い面を紹介されていますが、数日経てば、エゴやズル、マウント取りや変態の輩がうごめく環境になりストレスが溜まるばかりです。
 あいさつ文に小池知事の顔が入った「東京防災」B6版の冊子が配られました。前回は舛添知事の時にも顔入りで配られましたね。
 その中の「マンション防災」は目を通しておきましょう。

 その小冊子「都では対応無理なので、そっちでうまくやってね」という内容でした。
 マンション内での共助は出来ると思います。しかし、地域の共助となると普段の交流はなく、災害では家族や友人や仕事関係等をまず優先すると思います。
 地域で頼りにしていた人が被災する場合もあり、地域共助は人材確保が課題ですね。

 建築・建材展に行ってきました。防災関連のブースが多くありましたが、スマホのアプリで災害対策というのが共通していました。
 国交省の防災ポータブルとハザードマップ、気象庁のキキクル(危険度分布)がありますね、これらも配信側の機器や自家発の損傷、通信インフラそのものが停波したらなんの役にも立ちません。

ヴァロットン1922「貞節なシュザンヌ」
ローザンヌ州立美術館

 あまり日本では有名ではない(と思う)絵画を紹介します。
 フェリックス・ヴァロットン(1865年-1925年)一度、日本でも展覧会が開催されました。防災と関係がありませんが、関東大震災(T12)の2年後に彼は亡くなっています。そんな時代の人です。この頃からアールデコと呼ばれる美術様式が始まっています。
 画風は同時代のロートレックやピアズリーを連想してしまいます。この人はWWⅠの時に兵士に応募しましたが年齢(49歳)を理由に断られた話が有名です。心身共に元気な人だったのでしょう。
 油彩の外に木版画による白黒表現に長けたところがあり、「私こそが日本の浮世絵に影響を受けた画家です。」と訴えているようで、大胆な構図がそれを証明しています。

 Latest
 東京15区衆院補選では、組織票を持つ夜盗野党相乗り候補が当選、2位が格闘家でした。
 パー券、減税、子育て支援の連呼だけで魅力のある政策は無く、投票率の絶望的な低さがそれを示しています。
 そんな中で、学生時代に中東イスラム圏に政府の国費留学をしていたという女性候補の演説には興味い深いものがありました。欧州の移民問題、遠い国の話ではありません。
 でも東京15区の江東区民がそれを支持する???、選挙は難しいですね。
 松尾好朗

各制度から共用部分を考える。

 Aマンションの〇〇号室を買いました。
 と言っても、その部屋へは共用部分(エントランス、エレベーター、廊下など)を通らないと到着しませんね。
 部屋の中(専有部分内)にいたとしても、給排水汚水管、電気・通信・ガス設備などは共用部分の本管から各部屋へつながっていますので、居住のためには切り離すことはできません。
 さらに言えば、マンションでは住戸の玄関扉や窓サッシも床、壁、天井のコンクリート部分と同じ共用部分です。

 専有部分・共用部分は必ずセットになっていますので、マンションの専有部分だけ、共用部分だけと分離しての売買は成り立ちません。
 ある施設跡地に複数の戸建て住宅が分譲されました。
 各戸へは共有の敷地(私道)を通りますが、私道の下には各戸への設備配管が埋設されていますが、これもマンションの共用部分の考えと同じですね。
 

銀座三越1930年(昭和5年)4月10日開店のポスター杉浦 非水

 購入時は、ローンのこと、引っ越しのこと、部屋の中のキッチンの配置、カーテンの丈のこと等々、もう目の前のことで頭が一杯です。
 「共用部分が気に入ったのでマンションを購入しました。」という話はあまり聞かないですね。
 見渡すと外観やファサードは個性的な構えよりも売りやすい(買いやすい)平均的な(無難な)デザインになりがちです。
 また建設会社によってはコストやメンテナンス面で全国どこも同じような平凡な仕様で建てられています。地方の駅前にチェーン店が並んでいるようで面白くありません。
 ひと昔前は、マンションの屋上に建設会社の看板をデーンと掲げるという光景をよく見かけました。ww

《爽快美味滋強飲料カルピス》
1926年 愛媛県美術館蔵

 マンションは共用部分を除くとすべてが各々の専有部分です。それは個人が所有していますので、何ら戸建て住宅と変わりません。マンションは共用部分であっても公共物ではなく私有財産(所有権)です。
 しかし国・都・区その関係機関からは、個人の所有物であるマンションに対して、次から次に様々な(時にはおせっかいな)制度、検査・調査を課し、またその費用までも負担をさせます。不思議ですね。
・管理計画認定制度
・マンション管理適正評価制度
・管理状況届出制度
・優良マンション登録表示制度
・マンションみらいネット
・12条点検等
・様々なアンケート調査
 これらの制度等の効果を聞くことはまだ少ないですが、手続きがウェブ申請等で簡素化と改良もあり、普及を期待したいところです。

 データの信頼度は正確さと継続性、そして圧倒する数が必要です。
 笛吹けど踊らずだった、以前に実施した数々の制度の失敗を逆に生かして欲しいものです。
 管理組合の活動の中、防災・防犯、危険防止(老朽化放置・耐震未実施)等の人命に関わる部分、他に迷惑をかけるおそれがある場合等、必要性が理解ができます。

 しかし福祉(高齢者独居、要介護・援護、孤独死等)、犯罪防止(スラム化放置、特殊詐欺等拠点、不法占拠等)対策等、なんでも管理組合へ押し付ける(ように思える)のは筋違いで、これらは公が行うべき仕事だと考えます。
 大田区管理計画認定制度の独自基準は、管理組合は緊急時名簿に「要援護者名簿を備える。」とあります。
 管理組合はマンション内の共用部分の管理を行うための組織ですので、区分所有者や賃借人等と同居する家族が要援護者であるかどうかの個人情報を得る手段も権限もありません。
 任意の回答しか期待できません。

東洋唯一の地下鉄道 上野浅草間開通」昭和2年(1927年)

 各家庭の事情は、地域コミュニティーの範囲になります。
 例えば、援護が不要になったり、在宅しなくなったりと、状況は変化すると思いますので、理事会が最新のデータをキープできるのか疑問です。また古い調査データは、反対に緊急時に混乱を招きます。
 管理組合で組合員の調査が必要になっても、高額な弁護士費用を払うほどの緊急性や損害がなければ放置となってしまいます。逆に公的組織の側から、管理組合へ必要なデータの公開、提供ができるはずです。

「朝寒」杉浦非水
雑誌「三越」1929年11月表紙

 何度も記載していますが、管理適正化法で免許登録している管理会社へ(全部・部分)委託しているマンション管理組合では、定期的な会計報告、点検等をプロが実施し、区分所有法や管理規約に基づいた運営が行われていれば健全であり、人様の家(マンション)へ役所が立ち入る必要はありません。
 個人の所有物であるマンションに、ヨソ者が点数をつけて格付けするという上から目線の登録制度なら不要です。

  公が助言、指導、勧告すべきは、例えば公的書類が到達しない、アンケート等に一度も反応がない、見た目でもスラム化を放置している等の管理組合をターゲットにして実施すべきで、健全な管理組合を含めて全組合を対象にするのは税のムダでしょう。
 これまでの制度等の失敗を生かして欲しいと思います。・・・これ2回目
 毎年度、一定額を回収できる制度を作って、それを天下り収容集金システムと揶揄されないように期待します。
 最近では、もっともらしい名前を掲げた多くのNPO組織へ都がもっともらしい名前の事業を丸投げして、事実上チェックも行われずに公金を吸われ放題になっていることは周知のとおりです。
 地価が高い土地に効率よく居住空間を提供できるマンションは、すでに国民の1割を超える人々が居住し、生活形態は定着してきました。
 公が管理組合へ何度もあの手この手で負担を求め続け、法で縛って委縮させるのは将来的に得策にはなりません。

 挿絵は杉浦非水(ひすい)、松山生まれです。
 現芸大で日本画家を目指していましたが、図案家に転向、三越(当時は三越呉服店)の図案主任(チーフグラフィックデザイナー)となり、後に多摩美の創設、校長になります。
 図案描き(商業美術のデザイナー)の身分を向上させた人と言えます。時代に敏感でないとできない職業です。
 銀座線開通のポスターの人々の衣装に注目、あえて多くの人を配置して賑わいを、憧れのリッチでおしゃれな人々ばかりを描きました。子供もよそ行きの洋服ですね、日本髪の女性も見られます。
 一点透視図はこうやって描けという図法のサンプル画になりそうです。
 視覚的に特にカラーでの伝達手段が少なかった時代に、写真では表せないポスターでならではの夢を刷り込んでいます。ところで銀座線は最初から黄色だったのですね。
 この人は商業美術で活動し名を残しましたが、描写力の実力が分かる植物画も貼っておきます。(非水百花譜より)
松尾好朗

さるとりいばら

モクレン

ぼけ

山百合



専有部分と共用部分の境界を考える。


 標準管理規約では、専有部分を他から区分する構造物の帰属は次の通りです。
 (専有部分の範囲)
第7条 対象物件のうち区分所 有権の対象となる専有部分は、住戸番号を付した住戸とする。

2 前項の専有部分を他から区分する構造物の帰属については、次のとおりとする。
 一 天井、床及び壁は、躯体部分を除く部分を専有部分とする。
 二 玄関扉は、錠及び内部塗装部分を専有部分とする。
 三 窓枠及び窓ガラスは、専有部分に含まれないものとする。

と記載されています。
 2-二の玄関扉について、某マンション管理規約の例です。
 「錠、チェーン錠、ドアスコープ、蝶番で外気に接する部分以外、ドアクローザーは専有部分」と明記されています。蝶番は形状を確認しない限りこれでは分かりませんね。

ピーダ・イルステズ
(Peter Vilhelm Ilsted)

 ドアノブの廊下側は共用部分ですが、交換の場合は内外のハンドル2つで一組ですので、室内側だけを違うデザインに交換する場合は、負担割合の線引きも必要です。
 ドアノブの室内側(専有部分側)は外側(共用部分側)の形や色を合わせる必要はありません。外側ノブの心棒が合うものなら選択は自由になります。

 子供が廊下側のドアノブにぶら下がって壊れたとか、アルコーブの門扉(専用使用)に乗って遊んで蝶番が壊れたという例があります。これらは共用部分でもその専用使用権者(原因者)が交換修理費用を負担しなければなりません。

 サッシ回りの部分(ガラス、戸車、クレセント錠)に関して、一つの判例では「通常の使用に伴わないもの」とは、「計画的または性能向上のために一斉に修繕や交換をする場合」を言い、経年劣化は「通常の使用に伴うもの」とされ、経年劣化に伴う改修費用の負担は専用使用権者(仙台高裁判決・平成21.12.24)としています。

 この判例から解釈すると、総会で予算を示し十分に内容の説明をした上で承認があれば、専用使用の部分で「通常の使用に伴うもの」である経年劣化であっても、管理組合の費用で実施ができることになります。
 この地裁の判例は、当事者以外の居住者への周知不足、理事会承認だけで見切り発車した工事(総会追認を計る)、総会議案書での説明不足等、運営手順にも不備があるため、この判例が今後も基準になるのかは疑問です。

ピーダ・イルステズ
(デンマーク、1861〜1933)

 以前は声が大きい人の意見で決まっていたような、管理規約に記載されていない場所が共用部分の負担なのか専有部分なのか、修繕や交換をする場合の費用負担はどうするのか、時代変化などは無視をして公平のため先例にならうべきなのか、問題が多いです。 
 理事長が交代する度にその判断がマチマチでバラバラでは区分所有者間でその費用負担についてトラブルになることも考えられます。
 区分所有法 第九条(建物の設置または保存の瑕疵に関する推定)
 建物の設置または保存に瑕疵があることにより他人に損害を生じたときは、その瑕疵は、共用部分の設置または保存にあるものと推定する。とされていますので、判断がつかない場合など、管理組合が明確に反証しない限り、区分所有者の負担は免れることになります。

ピーダ・イルステズ

 管理規約・使用細則はできるだけ具体的に、そして今後ありがちな事項を含め、そのマンション独自の施設なども費用負担を明記しておく必要があります。 
 裁判になった場合は、管理規約が重要視されますので、後々の運営に役に立つことがあります。
 カッコつけただけの規約ではなんの役にも立ちません。

 以前ここで「ルーフバルコニーの柵の外周管理」という題を書きました。そのブログの閲覧数が高い理由は、同様に迷っている方が多いからと思います。
 関連で、多くの規約はメーターボックス及び給・排水ガス配管の各メーターまでが共用部分と記載されています。その先の配管は専有部分になりますが、共用部分であるメーターボックス壁面と専有部分を仕切る壁面は共用部分なので、例えばその壁(コンクリートブロックが多い)の中の配管が貫通している場所で給水管や排水管から漏水が発生して、階下へ被害を与えてしまった場合は、どちらに責任があるのか問題が残ります。

 共用部分である壁面の中については、その専有部分の所有者は管理ができない(壁の中の配管の状態は見ることができない)ため、メーターより先の配管は専有部分とされていても、メーターボックスの壁の中は共用部分であるため疑問が残ると思います。メーター後の配管は専有者の所有であっても、管理は共用部分という解釈も成り立つと思います。

The_dining_roomピーダ・イルステズ

 実際にその壁面の中で漏水事故がありました。ただ被害に対しての保険金が下りたため、その範囲で配管の修理も賄えたため、費用負担の問題は判明しないままでした。
 こちらも管理規約・使用細則で明記しておく事項だと考えます。

peter_ilstedkafkaピーダ・イルステズ

 絵はピーダ・イルステズ(英語だとピーター・イルステッド)の作品です。デンマークの王立美術アカデミーでハンマー・スホイの影響を受けました。スホイはイルステズの妹(赤い壁のダイニングルームの女性)と結婚したので義兄の関係です。
 両者作風は似ていますが、シンとした北欧の静寂の風景が多く、沈黙の詩人と呼ばれて人間心理を追求したスホイに比べ、北欧では貴重な日差しのある少しリッチな生活風景、子供(4人の子宝)が多く登場することから国ではイルステズが好まれています。
 スホイについては別の機会に紹介します。
 松尾好朗

 





スラブ下配管が専有部なのか?

 「東京地裁令和2年1月29日判決」判例集の中では探せなかったので、センター通信10月号の記事を拝借します。判決への流れを簡単にいうと・・・
 【マンションの2階に住むAさん宅の排水が不良のため調査したところ、床コンクリ―トスラブ下(1階の天井)の排水管腐食による閉塞が原因と判明、1階に配された排水管を修理して復旧しました。1階は共用駐車場です。
 その排水管は天井から壁を伝って下り、共用の主排水管または排水桝へ合流して公共の排水管に継がれていくものと思われます。(明細資料なし)
 修理部分はスラブから外の共用部分であるため、管理組合へAさんが立替払いしている修理費用20万円を請求をしました。
 しかし、駐車場天井にある排水管の修理箇所は他の部屋からの合流がなく、Aさんが専用使用しているため、修理費用はAさんが負担するべきと管理組合が主張しました。
 Aさんはコンクリートスラブに囲まれた内側の専有部分から外の排水管の不良であり、駐車場が共用部分であることは管理規約にも明記され、管理組合が負担するものと主張し裁判となりました。
 そして裁判所の判決は、管理組合の主張の通り、排水管は共用部分に設置されていてもAさんが専用使用していること、管理が容易に出来ることを理由として共用部分には当たらないとしました。】

ピエール=オーギュスト・ルノワール
《読書をする女性》1874-1876年

 まず、一般人の中には駐車場の天井の多くの配管の中から「これがウチの排水管です。」と見分けることができる人は少ないと思います。その駐車場天井にある専用使用している配管は、容易に管理ができる存在であるのか非常に疑問です。もし、車が駐車されている直上にその配管があり、汚水、雑排水が漏水して他人の車を汚損させた場合、上階の区分所有者に責任があるという解釈になりますが、そんなことは全く知らずに生活しているのが普通だと思います。

 もし共用の排水本管や排水桝に合流するまでその専用使用している排水管が長く建物を這っている場合も、Aさんの責任と費用で管理せよということになります。
 詰まりの原因がすぐに判明しない場合等は調査のため、駐車場契約者に自らが交渉して場所を空けていただき代替駐車場を探し、その手配や支払いもしなければなりません。
 場合によっては埋設排水管(連結部分)を調査することになることも考えられます。
 このようなリスクがあることは、マンション購入の重要事項説明書に記載しません(売れないので)が、責任はどこに問えばよいのでしょうか?

 通常は、区分所有法第9条に該当すると考えられます。
(建物の設置又は保存のかしに関する推定) 
第9条 建物の設置又は保存にかしがあることにより他人に損害を生じたときは、そのかしは、共用部分の設置又は保存にあるものと推定する。

 これまでの解釈だと、明らかに専有部内が原因である場合以外は、共用部分が原因と推定するとされていました。
 最高裁判例 平成9(オ)1927 建物共用部分確認等事件を参考にしてください。
 関連したところでは、標準管理規約に(敷地及び共用部分等の管理)第21条2 専有部分である設備のうち共用部分と構造上一体となった部分の管理を共用部分の管理と一体として行う必要があるときは、管理組合がこれを行うことができる。
 専有部分の排水枝管は共用本管とつながっているため、定期的に設備一体として管理組合が実施する全館の排水管清掃がありますね。

 現場がどうこうではなく、裁判官はあくまでも法律の範囲の中で判決を下すので、今後もこのようなあれれっ?と感じる判決に出くわすこともあるかもしれません。
 私たちマンション管理士は、区分所有者以上に管理規約や使用細則、そして総会の決議事項を把握しておかなければ、アドバイスなどができるはずもありません。各マンションの特徴、特性を理解して、様々なケースを想定して管理規約等に追加記載しておけば裁判所もそれは否定できません。

ジャン・オノレ・フラゴナール
《読書する娘》1775年頃

 秋は読書です。
 読書をする女性を集めてみました。

クロード・モネ
《春》1872年
メアリー・カサット
《縞模様のソファに座って読書をしているダフィー夫人》1876年
フェデリーコ・ファルッフィーニ《読書家(クララ)》1865年

 今は読書離れと言われていますが、まだ文盲率が高かった時代は一冊の高価な本を、字を読める人が朗読し、多くの人が集まって聴いていたといわれます。
 ここに出てくる本を読んでいる女性は教育を受け、字が読める人たちです。
 画家が女性と知性を表す本の組み合わせに魅力を感じるというよりも、画家が「本を読んでていいから」というと、モデルを探すのに楽だったという理由があったのだと思います。
 フラゴナールの「読書する娘」は知的で凛とした印象深い作品です。電車でスマホをにらんでいる女性たちから最も遠いところにいる存在だと思っています。
 本を持つ手の指は後世に何かのサインを我々に送っているのでしょうか?
松尾好朗