区境いを越えて

 会に大田区という地域名をつけていますが、私を含め会員は大田区内に限って活動をしているのではなく、区外、近県にまで活動範囲が及びます。まだ海外はありません。(笑)

①最初のひまわり
フィンセント・ファン・ゴッホ
1888年8月
②芦屋のひまわり
フィンセント・ファン・ゴッホ
1888年8月 

 先日、大田区ではなくて都内一等地に建ついわゆる高級マンションの管理組合からご連絡をいただきました。
 現在委託している管理会社から委託料等の値上げ要求があり、これが妥当なのか、管理組合では判断が難しいため全体収支を含めた見積査定の依頼でした。

 その後、数社の管理会社から委託料等の見積を受け、比較検討の結果、管理会社を変更するところまで漕ぎ着けることができました。
 以前もこのブログで書いたことがありますが、会社変更や点検回数を減らしたりで金額を下げ、報酬を受けてからは何があっても知らぬふり(又は別料金)という下げ逃げをする管理士がいます。
 しかし、変更後の新しい管理会社が軌道に乗るまでは責任があると思いますので、アドバイスを続けさせていただく予定です。

 前回の続きで夏の花「ひまわり」です。
 ゴッホは南仏のアルルを仮想日本として、黄色い家に招待したゴーギャンを待ち焦がれていた間、部屋に飾る「ひまわり」を描き始めました。彼の心が充実してもっとも幸せな時代だったと考えられます。

 ①1888年8月、最初に描いた3本のひまわりです。
 ②同月の作品、武者小路実篤が計画していた白樺派美術館の目玉をパトロンである実業家の山本小彌太にに依頼、現在価格換算2億円で購入(゚Д゚;)、戦争中は他の絵画は疎開できましたが、芦屋の家の壁に固定していた「ひまわり」は空襲で家と一緒に焼失してしまいました。残念です。

③ミュンヘンのひまわり
1888年8月
④ロンドンのひまわり
1888年8月
⑤SONPO美術館のひまわり
1888年12月-1889年1月


 ③ノイエ・ピナコテーク(ミュンヘン)蔵、同月3番目に描きました。黄色い家の壁紙の水色がバックで花の黄色と補色関係になっています。心が安定しているような色と構図です。
 ④ナショナル・ギャラリー(ロンドン)蔵、8月だけで4枚目のひまわり、花もバックも台も黄色系です。花の本数も12本から15本に増えています。いわゆるゴッホらしさが見えてきました。
 ⑤SONPO美術館(旧東郷青児美術館)、1987年のバブル期に安田火災海上が58億円で落札、世界中から贋作といわれましたが、真筆であることが証明されました。
 耳切り事件の直前に描かれたもので、④以上にゴッホらしい心の高揚が見えます。
 閑散としていた美術館がこの1枚で行列ができました。

⑥アムステルダムのひまわり
1889月1月

⑦フィラデルフィアのひまわり
1889年1月

 ⑥耳切り事件の後に⑤を模写、現在ファン・ゴッホ美術館(アムステルダム)で門外不出になっています。
 ⑦ミュンヘン③を模写したものです。

松尾好朗  

マンション管理士の副業

 私の場合は年、月、週とルーチン作業があるものの、マンション管理士の仕事で予定がいつも満杯ということは、まずありません。(悲)
 主に建物不動産管理関係の外には、数社の派遣会社に登録していて、次の予定までの空いた期間に他業種のアルバイトをすることがあります。
 その派遣会社から五輪の直前に、「オリンピック関係駐車場誘導員」という急募がありましたが、選手をサポートする等のふれあう機会がなく、炎天下の旗振りは、さすがにボランティアには頼めなかったのでしょうか、私なら一時間も体がもちませんね。
 五輪関係では元請け価格は特上なのですが、順々に末端にまで下りてくるのに合わせて、時給も加速をつけて下がってしまいます。(涙)

 その五輪では、金メダルをどこぞの市長に噛まれて、選手の女の子はさぞ驚いたことでしょう。でも「メダルは神聖」などと周りが勝手に決めつけるのはありがた迷惑で、ソフトボール競技が五輪採用がなかった中で、実施できたことに価値がある気がします。
 選手は辞退しても、メダルは交換されるようです。
 しかし、やり方を間違うと前のメダルの所有権が、代金を払う市長に移ることもあるわけで、そうなれば市庁舎に「噛みつき金メダル」として展示すればとてもシュールですね。(冗談です。)

伊藤若冲 1757~動植綵絵の中の
「向日葵雄鶏図」

 夏はこの花、江戸時代の4代家綱の頃に日本に入りました。
 なでしこの可憐さ朝顔の儚さなどのイメージとはかけ離れているこの花は、当時は品がないと言われ人気がなかったようです。
 「あなただけを見つめる。」と、花言葉がちょっと重い「ひまわり」です。
 紀元前からアメリカインディアンが栽培を始め、欧州から中国経由で1660年代に日本に入ってきました。

鈴木其一(1795-1858)
「向日葵図」
Suzuki-Kiitsu1080x1920

 欧州では観賞用の外に、ロシア・ウクライナ等へはヒマワリ油の栽培目的と品種が分れました。
 ソフィア・ローレンがマルチェロ・マストロヤンニを探して訪れるシーン、映画「ひまわり」1970年のロケ地は、ウクライナのひまわり畑です。

 以前マンション敷地の空いたところに、ひまわりの種を蒔いたことがありますが、成長良すぎて花は2メートル以上の高さで咲き誇り、葉っぱしか見えずに失敗、やはり改良した園芸種(背が低い)の苗を植えるのがよいと思いました。

 ひまわりを描いた日本画は少ないのですが、洋画ではゴッホのひまわりが有名です。
 次の機会に紹介させて下さい。
松尾好朗

注文の多い定時総会

 すでに議決権行使書の賛成票と議長への委任状を合わせて過半数に達していましたが、総会当日の出席者の意見により、議長が議案の一部を変更して決議した2つの例があるので紹介します。

 そのⅠ(宅配ボックス設置)
 今や珍しくなった宅配ボックスを持たないAマンションですが、若い夫婦の多くから再三の導入希望があり、設置の予定場所と見積もり、機器の仕様を添付して総会議案としました。
 その時の理事会は若手中心でしたので、議案書について違和感がなかったのですが、宅配ボックスのオプション機能にスマホ連動にはアプリをダウンロード云々、一部の高齢居住者から、わけがわからんと反発を買ってしまいました。

歌川国芳「金魚づくし」全9図のうちの1枚です。

 在宅していることが多い高齢者は、留守の時にしか使えない高額で場所をとる設備などは不要であり、点検費用や電気料を利用しない人までが負担することは疑問と、導入に反対する意見がありました。
 高齢者の中でも毎日のように外へ出かけ、テレビショッピングを楽しんでいる人の多くは宅配ボックスの導入を望んでいます。また、賃貸する場合に必須条件である宅配ボックスは資産です。

 そのⅡ(多目的室のミラー貼り)
 都下、Bマンションの1階部分には広い多目的室があります。
 居住者に限らず近隣住民も参加して、いくつかのダンス系やヨガ、フィットネスのクラブが以前からそこで活動が続けられています。
 自身の動きや姿勢を見るためには、キャスター付きの姿見を使っていましたが、固定ができないので危険でした。
 そこで、各クラブからの希望をまとめ、バレー教室のように壁面にミラーを貼ることを総会提案することにしました。議案書にはその目的と仕様、見積書を添付、こちらも議決権行使書と議長委任状により、すでに賛成票が足りていました。

 出席した高齢者からの意見は、一部の利用者だけのために管理組合が高額な費用を支出するのは疑問があり、室内の静寂を求める法要や読書会、茶道の場面では、壁にミラーを貼った万華鏡のような部屋では落ち着きに欠けるという内容でした。
 活動する場所の確保が難しい地域において、設備・環境を整えた活動場所を近隣住民にも開放、提供することによる地域コミュニティーへの貢献は大きなものがあります。

歌川国芳「金魚づくし」
上の猫は怪談100物語に出てくる化け猫です。

 これらⅠ、Ⅱに共通するのは、多くの高齢者には日常生活に関りのない事に余計な費用が使われることや未知な部分には保守的で、管理費、修繕積立金の値上傾向へのけん制をしているのかもしれません。

▢ 宅配ボックス設置についての決議
 夜間もマンション内に出入りが多い配送業者の再配達による立ち入りを減らし、提携クリーニング店や荷物発送などの高齢者にも便利なサービスについても掲示周知し、オプションは希望者のみに個人負担、導入台数も減らし大きくコストダウンを図り決議を取りました。しかし、将来台数が不足する場合は増設することとしました。

▢ 多目的室ミラー貼りについての決議
 ミラー貼りの範囲を見直し、部屋の2面に現場加工で天井高さまで貼る予定を、規格サイズ(三分×六分)4枚だけを壁の片面に貼ることで大幅なコストダウンとしました。 
 ウィルス感染防止のためにリモート理事会や書類配付だけの場合もあり、工事業者が工事範囲を膨らました計画そのままの見積もりを、理事会は一度も現場確認もせずに総会提案したのが反省点でした。

歌川国貞(三代歌川豊国)「土用干し」1854年

「土用干し」図の床の上、お皿に盛られた西瓜、細かくカットして食べていたんですね。

 総会は管理組合の最高の意思決定機関であるため、議長が一定の少数意見を取り入れ議案の範囲で調整することは可能です。
 この2例のように理事会の中だけで盛り上がり、理事長一人に任せたり、管理会社任せにするだけでは組合員への説明不足、確認不足で高い買い物になるところでしたね。

 最近では少数意見を尊重し過ぎる傾向がありますが、意見を無視をすると不満が残りますので、良い意見なら取り入れるような議事進行やその意見を議事録に残すことが重要です。
 管理組合の総会の出席組合員は会社の部下ではありませんので、議長は組合員から恨みをかうような態度を見せるのは良くありません。しかし、自分の主張を押し通したり妨害するだけの組合員には強い態度で対応してほしいと思います。

 夏らしい浮世絵の挿絵を選びました。
 猫の戯画が有名な国芳ですが、金魚シリーズに可愛いのがあります。
 来月から太田記念美術館.にて没後160年記念、国芳の作品が展示されます。
 もう一人、国貞の浮世絵は虫干しですね、梅雨明けから数日後のからっと晴れた日を選んでの行事です。
 節目という言葉があるように季節感を大事にしたいですね。
松尾好朗

 


 


 

 ここまで違うと別物と思わせてくれる本場の味、夏ならではの風味です。
 手延素麺、季節を美味しくいただきました。