居住区分所有者と外部区分所有者

 2023/05/28 大田区管理士会の無料相談会にて、賃貸化の増加や外国人の入居に伴う居住者マナーの低下、ルール違反が目立つことについてご相談がありました。
 このような相談の場合は「居住者間のコミュニケーションと啓発活動、掲示物などによりルールの周知を図り・・・。」というお決まりの回答が用意されています。これは、全ての居住者が素直で協力的なら素晴らしい答えなのですが、実際このような助言で解決に至ることはまれでしょうね。
 ご相談者は時間を割いて来ていただきましたので、後日管理士会2名で現地(マンション)を訪問し、立地環境からゴミ置場等まで管理状況を拝見した上で、いくつかの助言をさせていただきました。

 内容によりますが、現場を見ないようなアドバイスは、AIにやらせておけば間に合うと考えています。管理士会はそのため地域を絞って活動しています。
 当管理士会では初回(相談会は回数に含まず。)のご相談は無料で行っていますので、遠慮なくご利用下さい。(大田区とその周辺)
 経験上、理事長の頑張りで賛同者を得て、少し改善がみられても、鮮度を保って維持するのは難しく、時の経過や役員交代により戻ってしまう例を見ています。

オルガ・ヴィジンガー=フローリア
「窓際のケシの花束」

 スプリングマットレスや壊れた自転車などの粗大ごみを、区が指定する処理券を貼らずに共用部分へ放置、それを管理員不在の時間帯に出しソッと退居されたら、いつ誰が出したのかさえ分かりませんね。
 防犯カメラがあっても、映っているのが誰だかわからないこともあり、そもそも再生して一人ずつ確認するには膨大な時間が必要です。
 やむなく管理組合の費用で撤去しましたが、でも明日の朝また一つ増えていたら?・・・ストレスがたまりそうですね。
 賃貸者が放置したものなら、この費用は外部区分所有者から集めた方がよくないですか?

オルガ・ヴィジンガー
裏庭の池

 数千万円もするマンションの購入は多くの場合、一生のうち何度もない買いものです。ローンを組んでの返済は命がけです。
 一方で家賃を払い、気が向いたら住処を移せる賃借人とは、同じ棟に暮らしていても、意識の違いがあって当然です。
 もう一方で外部に居住する区分所有者の多くは、主な目的が家賃収入を得ることですので、立場に違いがあります。

 その上、組合役員を免除されていることも多く、収益性が下がれば部屋を売却するだけですので、建物の長期的な維持管理を語る上で両者に齟齬が生じます。

 少し前の話です。
 いつの間にか外国人らしき数名の若者が居住し始めました。所有者から届出はなく、ポストにも名前は見当たりません。時々、夜遅くまで騒ぎ、近隣に迷惑をかけていました。管理会社はそれを受けて、日本語に英語併記で注意書きを掲示をしましたが、その後のフォローはありません。
 部屋の所有者は賃貸管理会社へ任せているので、どんな人物が借りていることさえ把握していません。その賃貸管理会社は「(賃借人へ)伝えておきます。」というだけで、その経過や結果報告もありませんでした。

 本来は、部屋の所有者が契約した賃借人に対して、定められた管理規約、使用細則を遵守することの「誓約書」をとるのですが、多くの会社(担当によります。)は、手間がかかりお金にならないことは省きます。

 この真相は、賃借人がアジア系の複数人へ「また貸し」をしていたのでした。一般の賃貸借契約では禁止されています。

1890年 エミール・ヤコブ・シンドラー
プランケンベルク近くのポプラ通り

 マンション管理会社も不動産賃貸管理会社も「今やってます。」ばかりなので、そのアジア系の人が持っていた連絡先から理事長が探り出したものです。
 三流の賃貸管理会社に任せるとこうなってしまいますね。
 マナーやルールを守らない状態の放置は、居住者に不安を与え、スラム化が始まります。
 管理会社は管理組合から管理事務を委託されているだけの立場に関わらず、個人情報ガーなどと、名簿を管理者(理事長)へ提供しないという勘違いをしていることがあります。

マリー・エグナー
洗濯物の干してある風景

 委託契約書には、管理会社は「甲(管理組合)の組合員等異動届に基づき、組合員及び賃借人等の氏名、連絡先(緊急連絡先を含む。)を記載した名簿を整備する。」とあります。
 理事長へは、区分所有者名簿、居住者名簿、入退居届出等も管理会社から提出されていませんでした。

 マンション火災発生時、救急・消防隊が管理者(理事長)へ至急要求するのは、最新の居住者名簿ですので、いつでも最新版を提出できるようにしておくことが必要です。
 管理会社の夜間休日緊急センターは、外部委託が多いので、名簿検索が制限がされている場合が多いのです。(制限なければ逆にずさんな管理と言えます。) 
 部屋の賃貸人(入居者)を届け出るのは区分所有者の義務ですが、整備しておくのは管理会社だけでなく、管理者(理事長)の義務でもあります。

 一棟のマンション内で複数の部屋を所有している区分所有者(法人が多い)は、各部屋ごとの居住者届けをプライバシーを盾に提出しない傾向があります。部屋の入退管理はこっちでやるからということのようですが、居住者名簿は必ず提出させて下さいね。
 総会時に外部在住の区分所有者へ、収支報告だけでなくマンション内で起きている問題を提議し少しの波風を立て、区分所有者と賃借人の居住者票の再提出(連絡先の変更が多い)を行って下さい。

 何か特別なことがないと理事会を開催をしない組合がありますが、せめて2~3か月に一度(年に4~6度)、理事会として成立しなくても、管理会社の参加がなくても、意見交換会で良いので、理事長が中心になって開催することをお薦めします。何か得ることがあります。

 文中の絵画は、19世紀末ウィーンに活躍した情趣的印象主義の3人です。
 仏印象派とは違い、風景画が中心です。
 オルガ・ヴィジンガーは絵を学ぶも上達が見られないので、ピアノに専念し5年間はピアニストとして成功していましたが、30歳で手のけがをきっかけに今度は絵画に力を入れ、同じ女流のマリー・エグナーと共に、エミール・ヤコブ・シンドラーに師事し、後には独自の画風を築いた少し変わった経歴の持ち主です。
 ついでにですが、師のシンドラーの娘は、作曲家のグスタフ・マーラーの妻になりました。
 松尾好朗

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