コロコロ、タンブルウィード

 西部劇の決闘シーンのバックに主題歌が流れ、タンブルウィードと呼ばれる枯草等が丸くなって風でコロコロ転がっていくお決まりの場面がありますね。
 Aマンション共用廊下をコロコロ転がっているのは、ペット(犬)の抜け毛の塊です。休み明け、階段室の吹き溜まりには、たくさんの塊が集まっています。
 風向きによっては一か所のバルコニーに毛が重なり積もることもあり、その部屋の居住者(犬を飼っていない)から理事会へ強いクレームがありました。
 犬の換毛期は春秋の年2回あり、いつも手入れをしているワンコでも驚くほどの量が生え替わります。
 飼い主たちに注意すると、自分の飼っている犬(ウチの子)はちゃんと管理しているので、毛が舞う原因はヨソの子だと主張して譲りません。これは他のマンションでも同じ結果になるので、マンション共通のような気がします。(笑)

 

『Jeanne d’Arc, ou Jeune Bretonne au rouet』Paul Gauguin

 ゴーギャンの絵には数多くの犬が登場します。代表作の「我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか」に黒い犬が登場しているのはご存じだったでしょうか?犬が主役の「犬のある風景」という暗い絵や、仔犬の絵も描いています。
 左の縦長の絵は「ジャンヌダルク」という題のフレスコですが、ワンコの顔立ちから見てテリアではないでしょうか。
 ゴーギャンはこの作品(1889年)の前年に耳切り事件のゴッホと9週間アルルで同居していました。事件後別れ、寒いブルターニュで不遇な時代を過ごし、これら作品を残して原始の憧れや彼の宗教観から文明を嫌い、活動をタヒチへと移します。

『Pastorales Tahitiennes』Paul Gauguin

 タヒチの女性のそばには犬がよく登場しています。
 ブルターニュやパリで描かれた犬は首輪をしています。
 首輪も鎖もない伸びやかなタヒチの犬はゴーギャン自身を象徴しているのではないでしょうか。

 マンション室内で飼われるワンコは精神面でエラーがみられる場合が多いといわれます。これはこの度のコロナ禍での外出制限を経験して納得するところがあります。
 

 マンションのペット問題は、社会や時代の変化の要素も加わり複雑化しています。マンションではアレルギーやトラウマを持つ弱者を優先し守るのが第一ですが、文字で記したルール「ペット飼育細則」または「犬猫等のペット飼育の禁止」だけではコントロールできない状況になりつつあると思います。
 犬猫だけの問題だけでなく、人より長生きする可能性のある生き物(亀やオウム等)の管理組合としてその情報をどのように扱うのか等も課題になります。
松尾

オンライン理事会始めました。

 A マンションからオンライン理事会の招待を受けアドバイザーの立場で参加しました。
 これまでは、リモートワーク等を外から見ていて、顔を映す必要があるのかなと感じていましたが、実際にはパソコン、スマホ、タブレット等のモニターを通して出席者等の表情や声を確認でき、議案の微妙なニュアンスも顔を見て話せるので、通常の理事会と大きな違いはありませんでした。
 自宅からとはいえ適度な緊張感もありますが、今後新型コロナウィルス感染リスクが弱まったとしても、現地(マンション集会室)までの往復と交通費、時間も経費も有効に使えメリットが大きいと実感しました。外部に住んでいる役員も出席しやすくなり、議案によりますが、アフターコロナでも定着するのではないでしょうか。
 その日の理事会議案の一つ、取引会社からの毎月の請求書を郵送ではなく、メールに添付する形に変更させてほしいとの依頼の可否についてでした。

 他の業者の場合でも郵送されてくる請求書などは、すでに印鑑が印刷された書式を使っていることが多く、金額確認ができればプリントしなくても目的は果たせます。その上、紙に比べて保存整理が楽ですね。この小さな業界でも、この機会にペーパーレスが進みそうです。

アンディ・ウォーホール

 たとえ規模の小さいマンションであっても、管理室や集会室にインターネットの環境があれば、電子書類の受領や、インターネット環境を持たない役員でもオンライン理事会等に参加が可能になりますね。電子化への過渡期では、主導する役員ばかりに負担が大きい現状もあります。数十年間分の管理組合の書庫に眠っている紙の資料をこれ以上増やすことは避けたいですね。

 オンライン理事会を中華風にすると「在線(遠程)董事會」のような・・・国が推奨する標準管理規約での表現は、メール送付等を「電磁的方法」、紙面上の記録に代わるものを「電磁的記録」としています。 
 オンライン(リモート)理事会や総会を標準管理規約に追加して記載する場合は、無理になじみのない漢字を使うことなくカタカナを使って欲しいものです。
松尾

外壁タイルの信奉者たち

 日本のマンションの外壁はタイル貼りが多いですね、小口平タイルはレンガの木口寸法が基準、二丁掛タイルはレンガの木端寸法(木口の倍)が基になっています。シリーズマンション最盛期から、これらのサイズのタイル貼りが採用され、シリーズを展開する各社の標準仕様になっていました。初期のマンションではコンクリート打放の外壁に現場で小叩きの市松模様を入れたり、スタッコを盛るのが流行りましたね。
 外装タイル貼りの第一の目的は建物を保護することです。コンクリートの中性化や鉄筋の爆裂のことは別の資料を探していただくとして、外壁タイル貼りの他の目的の一つは、

日本のマンション創成期、欧米に憧れ真似をした世代、そのマンションを購入する世代が、「タイル貼り(レンガを積んだような)=欧米のようにゴージャスでモダンな生活」とイメージを持っていたからです。 
 塗装の場合は「ペンキ塗り=進駐軍(古っ)がなんにでも塗りたくった安っぽい=すぐに剥げる」というある世代までの人は記憶を持っていて、塗装に拒否反応を示す人もいます。その後もマンションを(安定して)販売するためには、外装タイル貼りでないと許されない時代がありました。 
 結果、レンガ積みのように見せることから始まったレンガタイルが完全に定着し、日本の建築仕上げ材料で独自に発展しました。
 主に水場で防水目的としてタイルを使用する欧州、独特の絵柄を施す装飾タイルが発達したイスラム文化圏、これらと比較すると現在の日本の外装タイルは、レンガ積みの代替品から発展したともいえます。

上の木の葉は、多分マロニエの葉(栃の木)

 実際には、石材やレンガを主な構造として積上げるだけの工法は、地震国である日本では発達する余地がありませんでした。
 外壁にタイルを貼ったマンションの修繕工事では、一般的な築年データや手の届く範囲の現地調査の上で劣化状況(貼替枚数や補修面積)の予測値は出せても、変動が大きいのが欠点です。外壁塗装では、劣化度合いに左右されず全体を塗装する場合が多いので、費用の変動が少なく、また塗装の色が選べる幅が広いので、時代に合わせたイメージチェンジができるのが大きなメリットです。

 塗料の品質が大きく進歩した塗装仕上げを見直してみてはいかがでしょうか、例えば、昭和の香りが強いマンションの薄暗く重いタイル貼りのエントランスでは、部分的にでもタイルの貼り替えのために、似たようなタイルを探す苦労の割に効果は少ないと思います。それよりも壁面タイルを全部塗装に変更して、大きなイメージチェンジを計画してみてください。
 塗装仕上げの中にアクセントやボーダーに竣工時に貼っていたタイルを少し取り入れてもいいのではないでしょうか。明るく広い空間に生まれ変わります。
松尾

ゴミ処分場は負け組の象徴なのか?

 民放の人気ドラマで、社内抗争に敗れた男が作業着姿でゴミ最終処分場らしき場所に立ち「俺はこんなところで働くような男じゃないのだっ!」と叫んでいました。
 落ちぶれた負け組感を演出したかったのでしょうが、「こんなところ」にいる職員(地方公務員)への転職は簡単ではないと思うのですが。(笑)
 また、最終処分場は民間委託の仕事が多いのですが、大型特殊自動車の免許ぐらいは持っていないと民間でも採用は望めません。
 別のドラマでも、ある年配女性が「いざとなったら掃除人夫でもなんでもやる覚悟はあるわよ」とのセリフがありましたが、実際の求人では最低賃金が上がり続けていることもあり、即戦力で経験者を優遇するため、いざとなってしまってからの高齢者の採用は難しいんでしょうね。

Caspar David Friedrich

 作家や脚本家の頭の中には、負け組が働けるのはゴミ拾いのようなキタナイ仕事に違いないという認識なのかもしれません。
 差別だポリコレだとすぐに大騒ぎするのが好きな業界の割には、あまりに時代錯誤だと思います。 
 ホームドラマを楽しんでいる子供の親が清掃関係で働いていることもあると思います。そんな子供の気持ちを考えられないのか、さすがに民放と言われても仕方ないですね。

 ウチのマンションでは、たとえ一日だけでもゴミ収集に来れない日があれば、ゴミ置き場はパンクします。
 パリで清掃員のストライキがあった時、あっという間に街にゴミが溢れたというニュースがありました。日本で真夏にストがあればハエやネズミが大繁殖、悪臭が漂いオモテナシどころではなくなりますね。
 コロナ禍の終息が見えない今、ゴミ収集車で走っているエッセンシャルワーカーと呼ばれる職員に感謝します。
松尾