Aマンションでは、共用廊下の床に溜まった雨水が乾いた後に、カビのような黒い輪染みが残っていました。
マンションの共用廊下や階段、バルコニーの床には、長尺塩ビシートと呼ばれる塩化ビニル樹脂系で表面をノンスリップに加工した仕上材がよく使われています。
耐候性、耐久性が向上、現場加工が容易で比較的安価、施工も短期間で可能です。以前は安っぽさが気になりましたが、今は用途により様々なデザインが用意されている仕上材です。微妙な勾配にもなじみ良く、シートの溶接も貼り仕舞い(見切り)も難しくありません。
特に種類の選択範囲の広さから、店舗等のデザイン性や施工スピードが強く求められる改装工事にも扱いやすい仕上材料です。廃材焼却時に発生するダイオキシンも焼却装置等の改良でほとんど問題がなくなりました。
Aマンションでは、経年により床下地とシートの間に雨水などが浸入し、接着が剥がれてシートが縮んで波打ち、そこに雨水が溜まる乾燥するを繰り返す状態でした。
問題は汚れだけでなく、高齢になるにつれ歩くときに足が上がらない傾向があるので、廊下のシートの波の膨らみにつまずいて転倒する危険性があります。
また専有部分ドアの前のシートが波状になってしまうと、ある日、外に出ようとドアを押したらシートが邪魔をしてドアが開かない・・・少なくともドア(底裏)と床シートがズリズリ擦れることは考えられますので、居住者には大きなストレスになります。
貼り替えがすぐにできない場合は、床下地とシートの間に水分を含ませない状態、つまり問題箇所は剥がして乾燥させておいた方が健康的であり、事故が起きないための最低限の処置と思います。
床の材料は、土を踏み固めた土間、石の産地威なら敷石、粘土があればタイル、木が豊富な地域なら下地組みをしてフローリング、イグサが採れる地域では畳など、気候風土によって発達してきました。
主題のある絵画の中で、白黒の大理石の床が強調されているこの作品は、モノが多い割には静謐な空気を感じます。
この絵の床が板張りであったりすると、静謐感も清涼感もなくなりボケた印象になっていたでしょう。
フェルメールは左側から光が入る同じ構図を数点残していますが、輸入品であろう大理石貼りの床やペルシャ絨毯が配され、柔らかな光が入る部屋で音楽教育を受けられる環境、まだピアノのなかった時代(関ケ原の戦いの頃)にヴァージナル(小型チェンバロ)を所有しているオランダの裕福な家庭であったと想像できます。チェロのような形の弦楽器もみえてますね。
「真珠の耳飾りの少女」の背景には深い色を置くことで、少女の表情を際立たせ、この上なく印象深い作品に仕上げています。
髪を隠し眉も省略して目とターバンを強調しています。
父親の毒牙にかかりそうになった少女が抵抗して父を殺してしまい、そのため死罪になったという異国の少女の話を伝え聞いたフェルメールが、想像の中で描いたといわれています。
当時は真正面を向いた肖像画が当たり前の時代に、頭を45度、目を45度振り向いた構成は斬新です。瞬間の表情、少し開いていても清らな口元と、澄み切った目に寂しさを感じます。
少女が頭にターバンを巻く風習は、どこの国の衣装なのか分かりません。
実在しないだろう大粒すぎる真珠(錫という説もありますが重すぎます。)、高価なラピスラズリ(瑠璃)を配合した絵具のターバンの青色、またその青を強調にするための補色の黄色の配色など、トロニー(モデルがない)であることが解ります。
耳飾りの大粒の真珠は、不幸にも未来を絶たれた少女へ、せめてものフェルメールからのプレゼントかもしれないですね。
謎を多く残したまま後世に伝えたい作品です。
松尾