100戸を超えるマンションに暮らすAさんは、数年前に理事長に推され、何もわからないうちに1年が過ぎ、次の理事長へ引継ぎを終えました。Aさんは、ある大手財閥系グループが分譲したマンションの組合員(区分所有者)です。
その後、マンション管理についての知識を少しずつ増やすうちに、管理費(委託費)が近隣の同じような規模のマンションに比べて高額で、修繕工事の規模や内容に関わらず、すべてを管理会社が実施していることに疑問を抱きました。
理事会は管理会社の工事見積もりと他社の工事見積とを比較している様子はありません。管理会社へいくつかの質問をしましたが、理事会を通して下さいとのことで回答はありません。
築10年に満たないにも関わらず、管理会社は補修工事の原因や目的の説明も不十分なまま次々と工事を実施、このペースで工事支出が続くと、修繕積立金の大幅な値上げか、大規模修繕工事の時には各戸へ一時負担金が発生するのではないかという危機感から、Aさんは次期の理事長に立候補しようと考えました。
長期修繕計画は、存在があっても修正が必要なので、すでに何の役に立っていません。
しかし総会では役員選任の議案の前に「役員を経験した者は、その翌年から5年の間は役員にはなることができない。」というおかしな使用細則が提案され決議されてしまいました。Aさんを立候補させないために管理会社が主導して、現在の理事会に「特定の組合員の独裁を防ぎ、多くの組合員に役員を経験していただくため・・」ともっともらしい理由を付けて急ぎ議案化したものです。
その上、管理委託費の値上まで決議されてしまいました。
区分所有法では組合員総数、議決権総数の1/5以上に当たる組合員の同意を得ることができれば臨時総会を招集できます。
しかし管理に関して疑問を抱いた少数の組合員が手を挙げても、ここではグループ系列の組合員の票数、その系列の理事長が持つ委任状を合わせると、どのような議案でも系列の思うがままに押し切られてしまいます。
やり方を間違えるとAさんを色々文句をいってる「変な人」扱いされてマンションの中で孤立してしまうこともあります。強引に進めると居住者間を分断することになり、Aさんはそれは望まないところです。
マンション販売時には売れ残りを出さないためそのグループ系列の販売会社は、同系列の会社や社員、下請け会社に割引価格で販売協力(購入)させ、そして購入者へは住宅手当等(実際は管理費相当額)が支給されますが、その手当の原資は系列会社以外の一般組合員が支払う相場より高い管理費から間接的に調達しているという構図になっています。
また系列の賃貸不動産会社にまとめて協力を請い(買い取らせ)、賃貸や系列の社宅等に使われていることで、議決権数(票数)を増やしていることもあります。
理事長が系列の組合員(区分所有者)の場合は、同じく系列のマンション管理会社は安泰で、修繕積立金は使い放題、値上げ決議も賛成多数(理事長への委任状)で乗り切り、管理組合を支配できます。
すべてではありませんが、このように大手財閥グループ系列のマンションを購入すると、未来永劫しっかり財務コントロールされてしまいます。
大手というブランドで安心を買ったと思う人は、それで居心地よく暮らせるので反対はしません。
財閥はますます太り続け強固に城を固め、一般組合員は財閥に貢ぎ続けてやせ衰え、手を挙げる元気もなくなるというお江戸の頃から続く財閥の錬金術です。
ベルギーのスメットの絵画を挿絵にしました。表現主義の画家です。
絵画が思想、哲学、宗教、権力者の伝達手段の要素を引きずったまま、絵画の法則に縛られていた時代から脱し、人間の内面を表現しようとしました。
表現主義の代表的な画家は、Edvard Munch(1863-1944)あの「叫び」のムンクの他、ルオーやクレー、モディリアーニがいます。
松尾