アマゾンDPから悪質をお届けします。

 今、現場で起きていること。
 宅配ボックスは生活様式の多様化の中で、マンション共用設備の必須アイテムとして定着しています。
 Aマンションでは、アマゾン配達員(DP=デリバリープロバイダー)が早朝から入り込み、受け取り側が在宅、留守に関わらず、搬入した荷物のすべてを宅配ボックスに放り込み、次の宅配ボックスのあるマンションへ急ぎます。
 居住者は、夜までに宅配ボックスに預けられた荷物を引き取りますので、朝は空いているボックスがほとんどです。
 配達側は朝の時間帯は持ち帰りロスがなくて効率が良いのですが、在宅していても宅配ボックスへ預けられてしまいます。
 ただ、早朝にピンポンと呼び出されても困りますけどね。


 午前9時を過ぎた頃には、クロネコや佐川等の宅配業者が動き出します。
 届け先が留守の場合、宅配ボックスへ預けようとすると、朝一の配送なのにすでに満杯ということが実際に起きています。

川瀬巴水『七里ガ浜』1928年

 感染防止による外出制限や在宅ワーク等の影響で、特別な注文ではなく通常の食材や日用品の配達や重量のある飲料、ペットフードやトイレ砂、更にお中元のシーズンとなり宅配ボックスの数不足が目立ちます。増設したくても、設置する場所がないということもありますね。

 宅配ボックスもオートロックもないマンションでは、配達員(一部)はマンション内のあちこちに台車をぶち当てながら泥靴で侵入、届け先が在宅していても玄関前に勝手に置配(オキハイ)やドアノブにぶら下げ等、手渡しはしません。
 注文者(受取側)もオキハイ希望が多いのも事実で、配達員がオートロックで中に入れずオキハイができないので、管理会社に訳のわからないクレーム電話をした配達員がいました。

エドマンド・タル『薄明かり』


 郵便小包の時代を経て宅急便・宅配便は新語として登場、運輸流通経済を支えてデジタル時代にも対応、自主ルールと関係人材の教育に費用をかけてきた業界は、いま明らかに乱されています。
 悪質な配達員は淘汰されるのでしょうが、アマゾンの組織が末端までコントロールできない状況なのか、勝ち逃げを図っているのか、そのまま放置するのか、以前ヤマト運輸がアマゾンの配送を請けていた時代とは大きく変わりました。


 高級と呼ばれているマンションにアマゾンDPやウーバーの類に見られる素人配達員を、ノーチェックで建物内へ侵入させている限り、セキュリティーやプライバシー上で一般マンションと差はありません。

 居住者の側から素人配達員を呼び込んでしまっているので、今のところ防ぐ方法はありませんが、居住者であまり宅配などを利用しない方が問題視するような時が来ると思います。
 

ウィリアム・アレン『子供たちの聖なる行進』
ハンプシャー文化トラスト

 不潔そうな身なりや挨拶もしない人物は館内には入れたくないと思いますね。
 最近では、ウーバー配達員が入り口と間違って常時(開)格納の防火扉を閉めてしまい、火災警報盤が鳴動、警備会社が出動したことがあります。

*世情のこと*
 「うちの子が練習していた文化祭コンサートは中止なのにオリンピックはやるのね」というようなフレーズが溢れています。
 本当にコンサートをやりたければ、ゲリラでもズームでも失敗しても実行する気概を持ってほしいと思います。オリンピックを並列させて語るのは、言い訳のように聞こえてしまいます。

 「おもてなし」をお題目にインバウンド需要を見込んで投資した多くの日本人は、ウィルス感染防止のため五輪が延期の上に無観客となることが現実になってしまいましたが、逆境の中で耐える工夫をし、様々なことを考え、意見を聞く機会を与えられたところをヨシとしたいです。

 本日、貼り付けした絵は「薄明りの絵画」様のセレクションから拝借しました。
 先日、小学生の列へと酒酔いトラックが突っ込んだ事故がありました。
 葬儀の列、後に続く子供たちは仲間が亡くなったことを理解できてるのでしょうか。素朴なタッチ故、涙を誘います。
 松尾好朗 

ジュゼッペ・ペリッツァ・ダ・ヴォルペード「亡くなった子供」
1902年頃、オルセー美術館

 

みんな大好き「ランク付け」

 内容にかかわらず週刊誌などでランク付けの特集を組むと、その記事の関係者が購入するため一定の売り上げと、読者の新規開拓が望めるメリットがあります。
 マンション関係では、管理戸数の多い順に管理会社をランク付けした特集記事を見かけます。「管理戸数が多いので良い管理会社です。」というわけではなく、管理する範囲や方法は契約内容によってマチマチです。
 管理組合の望む良い管理会社というのは別の尺度があります。
 でも、相撲番付のように懲りずに毎年やっていますね。(笑) 

 住みたい街のランキングでは、不動産業界の作った台本に誘導することもありますが、一定の根拠があり、その時代の傾向を知ることができます。

 都道府県の住みやすさランキングの一つでは、上位に石川、福井、富山と北陸3県が占めている調査結果がありますが、東京や大阪とは人口が桁違いなので、なんでも都道府県単位で比較するには無理がありますね、物価と所得、福祉や医療、子育て教育、何を基準に何を重要視するのかによって違ってきます。
 

ポンパドゥール侯爵夫人

 欧米のある住みやすさランキングの調査では、スカンジナビア半島の北欧3国が占め、日本では北陸3県が占めていることが少し似ているような気がします。
 その住みやすい県や国に住みたいかというと答えは違う結果になり、公共サービスの充実と税負担は連動します。また寒いのが苦手な人にも敬遠されるでしょうね。

 人は何かしら順位付けやグループ分けをして自身の位置を確認し、安心感や優越感、妬み嫉みを感じるのが好きなのかもしれません。

狩りの女神ディアナの衣装をまとったポンパドゥール夫人
このコスプレでパリの仮装舞踏会に現れルイ15世を夢中にさせました。

 LGBTは性的マイノリティーの略称として使われていますが、最近、後にQIA(クイア)がくっついてLGBTQIAと文字が増えています。(意味は下線のリンク先)
 英米ではFacebookの登録時に自分の性別を71種類の中から選ぶということですが、もう私には訳がわかりません。
 これらが不安の裏返しの逃避(ごまかし)行動でなければよいのですが、少数者、少数意見を言われるままに受け入れ拡大解釈するのは、民主主義の根幹部分がぼやけてゆく気がしています。

 最近、管理組合の総会決議でも、少数意見を大切にと議決権行使書により、すでに可決している議案を保留にするなど、同じ傾向(風潮)があると感じています。

 肖像画の女性は、ロココの華、ポンパドゥール侯爵夫人(ジャンヌ・アントワネット・ポワソン)以下、ジャンヌと呼びます。
 ジャンヌは16歳でパリの社交界へ、1745年24歳でベルサイユにデビューしました。
 明るく知的でよく笑うホンワカ系美人のジャンヌは、たちまち仏国王のルイ15世の心をつかみ、平民出身ながら公妾としての地位を確固に築きます。
 文化芸術だけでなく政治にも深くかかわりをもち、貴族やイエズス会の妨害も才覚で乗り切ります。
 ジャンヌは、仏ブルボン朝の宿敵、女帝マリア・テレジア(オーストリア:ハプスブルク家)、そしてロシアの女帝エリザ・ヴェータと3名の女性により、後年「3枚のペチコート同盟」と呼ばれる同盟を結び、侵略を続けるプロイセン王フリードリヒ2世包囲網を完成させます。7年戦争の始まりです。(1756年)
 当初は優位に立っていたものの、すでに疲弊していたフランスには無能政治家と賄賂軍人しかおらず、そのため軍事的才能豊かなフリードリヒ2世に軍配が上がり終戦になります。(1763年)
 

ラ・トゥール モーリス・カンタン・ド
「ポンパドゥール夫人」1755年
Maurice Quentin de La Tour(1704-1788)
Portrait of the Marquise de Pompadour

フランソワ・ブーシェ( 1703-70)
『ポンパドゥール夫人の肖像』1756年
35歳のジャンヌ

 ジャンヌは、42歳で結核の病で亡くなります。(1764年)この年、モーツアルトが6歳で演奏会を開き、100年後には新選組が池田屋を襲撃、200年後には新幹線が開通して東京五輪が開催されています。
 5年後の1769年、マリー・アントワネット(マリア・テレジアの娘)が、次の仏王ルイ16世に嫁ぎます。そしてナポレオンが生まれた年でもあります。


 その後、1789年のフランス革命、1793年のギロチンまでの道のりは、「ベルばら」に描かれたとおりです。

 美術史上の分類は、ルイ15世のロココ様式からルイ16世の新古典主義(ネオクラシシズム)に変わります。なお、ルイ14世はバロック様式(ベルサイユ宮殿など)です。これは分りやすいグループ分けですが、これも何を基準にするのか、ランク付けはできないですね。

晩年のポンパドゥール夫人
フランソワ・ブーシェ

 繊細優雅なロココ調文化の裏には、贅を尽くし円熟した中の刺激のない退屈感、刹那的快楽を繰り返す虚無感、長引く戦争への退廃的思考、物憂い気怠さが漂う「アンニュイ」という言葉がとても似合います。
松尾好朗