質問への回答リクエスト(廃墟化するタワマン)

 私はこの場所とは別に某有名ページに別名で投稿をしています。そこでAさんの質問にBさんから私に回答リクエストをされた時に回答した文章がありますので、本日はそれを転記して紹介させていただきます。
 タワーマンションへの否定的な意見が多い中、反発してやや肯定的意見にしました。
 尚、文中の挿絵は内容と関係がありません。質問はこれ。

質問:タワーマンションの大規模修繕費用は巨額であり、いずれ破綻して廃虚化するというのは本当ですか?

 分譲マンションの場合は、管理組合が適正な運営を行っていれば、修繕費用が巨額であることが原因で破綻して廃墟化することはないと思います。
 例えば5階50戸の中規模マンションが8棟ある400戸の団地の場合、屋上の防水工事は8回の施工が必要です。これと同じ水平投影面積の40階400戸のタワーマンションでは、同じ面積の施工が1回で完了します。棟ごとに必要な設備更新等も1回で終わることがあるタワーマンションの方が、はるかに経済的で合理的なこともあるのです。そのため巨額であることが破綻の原因には繋がりません。

 超高層建物は従来の枠組足場等が対応できないため、設計段階で移動昇降足場等が想定されています。それは部分修繕やメンテナンス、定期的な清掃にも使われますので、足場が原因で巨額になるという訳ではありませんね。

The Porte Maillot ,Snow Effect,Sunset
ルイジ・ロワール

 余談ですが、ゴンドラ足場の乗り心地は上層階ほど自然の風をたっぷり受けてスリル満点、普通のエレベーターがいかに快適なのかを実感できますよ。

フランソワ=ジョゼフ・ルイージ・ロワール《乗車のまえ、薄明かりの効果》(1893年)バロワ美術館

 「すべてのマンションは廃墟になる。」と煽るような記事を書いている人もいますが、この意味は管理組合が何もせずに放置しているとタワーマンションでなくても廃墟化が進むので、長期的に計画して適切に管理しましょうという解釈が正しいと思います。誰しも自分の家は守りたいですからね。

 欧米では、適切に建物修繕を施している築百年超のコンドミニアムが多く健在しています。
 そもそもタワーマンションが求められた理由は、都心等の非常に利便性が高い立地で限られた土地を(横には広げられないので)上に伸ばして有効活用することですね、そのため土地や一戸建てが安価に手に入る地域ではタワーマンションは全く必要とされません。リゾート地に林立しているマンションを見かけますが、上層階からの眺望以外にはタワーマンションを建てるメリットは見当たりません。その地のマンション内の温泉設備の運営管理が破綻して閉鎖している物件があり、売りたくても買い手が現れずという場合では廃墟化が早く進むでしょう。リゾートへ訪れる目的が何かを考えれば、近隣のホテルを利用した方が経済的で時間も使えて名物料理を食べ歩いて何倍も楽しめると私は思うのですが・・。

 私の知人の範囲ですが、タワーマンションに居住、所有している人の共通点は、高値安定の年収であっても生活に派手さがなく、国産車を長く使用しているような堅実で余裕のある層であり、ローンに追われるような人には不向きです。独車を何度も買い替えたり、高級スーパーにしか行かないような成金さんもすぐにタワーマンション生活に飽きてしまって定着しにくいのかなと思います。

Paris sous la neige 雪のパリ
ルイジ・ロワール

 つまり、修繕積立金が高額であっても理にかなっていれば負担するしっかりした層が居住、所有しているという印象です。

 回答に戻ります。上記リゾート立地の一部タワーマンション及び、成金さんが喜ぶサービス施設が盛り沢山で、その施設があるタワーマンションの上層階を買い占めた外国人が営業する民泊客に独占されている投資用のタワーマンションにおいては、これを制御できる人がいないと破綻し廃墟化する可能性は大いにあります。

 付け加えると、すでにタワーマンションのステータス感が薄れていて、温水プール等の運営コストが負担になる施設は販売促進上で目新しさがないことや、生活時間の多くをマンション内で完結する思考よりも、近隣地域との接触機会を持つ生活スタイルに比重を置く方向に変化しているのかもしれません。
 気取ってないで、地元で買い物して地元のスポーツクラブに入って交流しろってことですかね-。

 3枚の絵画はルイジ・ロワール(1845-1916スロバキア)というパリで活躍した画家の作品です。冬の絵だからということではなく、少し冷たいよそよそしさがあるパリの街の雰囲気が良く描かれていると思います。この人のファンは日本にも多くいます。
松尾好朗

管理スタイルを変えるとき

 東京23区にも大雪警報が出されました。
 昨日、築古ながらもキッチリ管理された500戸超えの大規模マンションを訪問してまいりました。

 日勤の管理員1名、清掃スタッフの外に、日替わりで管理会社の担当者(フロント)、建物設備担当者、組合会計担当者等々が順々に管理サポートする中の1名として、今後月に2~3回だけですが、現場対応と理事会(必要な場合)に参加させていただくことになりました。

歌川国芳「東都名所 洲崎初日出の図」
大勢の人が海岸沿いで歓声を上げているのが小さく見えます。

 知る限り他のマンションでは例がなく、新しい管理のスタイルだと思います。管理員1名ですべての対応はできない場合でも、様々な専門分野を持つスタッフが定期的にサポートできれば理想形であり、管理員も作業に追われることがなく全体を把握できると考えます。
 ここまで大規模なマンションに入館することも初めてです。夜景の迫力は圧倒されるものがありました。

歌川広重「江戸名所 洲崎はつ日の出」

 
 こちらで体得した情報その他が、各方面で役に立つようなことがあれば、当ブログでも提供したいと考えています。
 もし訪問が今日だったら、雪かきおじさんとしてカチカチに凍っていたと思います。ww

 もう6日になりましたが、皆様本年も宜しくお願い致します。
 おめでたい絵の代表、日の出がテーマの版画を挿絵にしました。

歌川国貞 二見浦曙の図

 この風景のあるところ、私が中学生の修学旅行で初めて訪れました。学校へお土産を事前注文をして名物赤福とショウガ板を旅行解散時に渡されたことを覚えています。自分の小遣いで買った土産は竹笛1本だけでした。
 数年前にも訪れる機会があり、夫婦の岩とその距離が絶妙の美しいバランスながらも、中学生の時の記憶よりも意外と小ぶりだったなという印象でした。
 明治皇太后が神宮参拝の折に名物の赤福を召される際、それまで黒砂糖を使っていた赤福を白砂糖に切り替えた結果、好評をいただいたことで今の赤福の味へと繋がっているようです。2007年の食品偽装事件も乗り越えて赤福は元気です。
 名物の伊勢エビや真珠にはずーっと縁がありません。(ついでに松坂牛も)
松尾好朗