大規模修繕工事の談合は必要悪か?

 お江戸の頃、新井白石(1657-1725)が「入札者が百金、千金を奉行にいれ」と官製談合を批判していました。この人は5代将軍綱吉の「生類憐みの令」を廃止、8代将軍の吉宗になる前までの、家宣(6代)と家継(7代)の将軍に仕えました。
 江戸の後期、家慶(12代)の頃、民衆が飢饉に苦しむ中、豪商と不正を繰り返す奉行所に憤り、大塩平八郎が立ち上がりました(1837年)が失敗、でも後々の討幕への先駆け、機運醸成に役立ったと思います。

川瀬巴水の「洗足池乃残雪」昭和26年(1951)

 幕末、明治、大正、昭和と戦争利権にも絡んで官と財閥の癒着が続き、戦後はゼネコンの担当が日常的に情報交換(価格調整=カルテル、入札者取決め=談合)するスタイルが、今に続きます。

 昭和から平成になっても、賄賂に麻痺した大臣・議員・首長の「天の声」による官製談合が常態化、そのために「改正官製談合防止法」を成立(2006年)させましたが、効果はあったのでしょうか?w
 (追加)最近では、東京五輪の電〇の中抜き(ほぼ9割抜き)でしたね。www

 首都圏のマンション(タワー含む)の大規模修繕工事で、工事業者約20社が談合を繰り返していた疑惑(内部告発)について、公正取引委員会が独占禁止法違反(不当な取引制限)の疑いで立ち入り検査を開始(3/4)、設計監理会社(コンサル)側の関与も含めて実態を調べる方針という報道がありました。
 会社名が示されたのは9社だけ、その他の社名の発表はまだありません。報道各社にとっては、自分たちのスポンサー企業系の工事会社については「報道しない自由」として記事に載せないのなら、これぞマスゴミと・・・。ww

川瀬巴水の描く大森海岸 「昇る月」
昭和6年(1931)

 大規模修繕工事の関連記事では、素人集団の管理組合を手玉に取る悪質コンサル!、悪徳工事業者!とよく騒いでいますが、たとえ理事会メンバーが工事に関しては素人であっても、社会人としての常識や経験等により、疑問があっても調査する手段はいくらでもありますね。怪しい工事会社やコンサルは排除され、絵にかいたような悪徳業者の立ち入る余地は、まずありえません。
 ワンマン理事長が自分の知り合いの業者を強引に元受けにしてリベートを受け、工事は下請けに丸投げで杜撰な施工をした事件はよく聞く話です。これ、江戸の頃から成長していません。ww

川瀬巴水の描く「矢口」東京20景
昭和3年(1928)

 分譲マンションの場合は大規模修繕といっても、中規模程度で足場を架けて行なう一般的な仕様の工事で、4.5~6千万円程度(戸当たり100万~140万円税別・設備関係を除く)が多いため、これを計画段階の目安にできると思います。
 工事関係会社は新しい材料知識・施工技術の習得や関連機器の導入が必須ですので、毎年各社は努力を怠っているわけではなく、社員も各資格・免許の取得もマストですから大変だと思いますよ。ww

 競争入札では、ギリギリの価格で入れ札するので、受注できても決して大儲けできるような業界ではありません。

 「働き方改革」のマニュアル通りに人工(にんく=人件費)計算を見積もりへ組み込むと、間違いなく高額になります。安全管理を掲げていても、作業環境は決して恵まれているとは言えません。渡り(同じ業種で転職)が容易なこともあり、人を繋ぎ止めるための努力も必要なのでしょう。

 さて、大規模修繕工事においての談合です。毎回毎回、各業者が値下げ競争をやっていては業界は疲弊し共倒れになると周辺への影響も大きいため、業者間で仕事を順番に回して助け合う「談合」を、また同時に相互監視を行い全体バランスをとっている業界です。
 これを社会が完全否定していないのは、村(集落)単位で年貢を納めるため、凶作であっても皆で助け合うこと(互助・共助)で生き抜いてきた日本人の意識が、根強く残っているのではないかと思います。

 公取委がどこにポイントを置いて違反であると判断するのでしょうか、棟ごとに予算も仕様も違うので単純比較ができないマンション大規模修繕工事では、「不当な価格」の根拠も不明確です。
 官民癒着(特に地方の官の担当者)、大手の下請け丸投げ(ピンハネ)等の仕組みを改革するのが先決問題でしょうね。
 タワマンしか報道しないメディアが、この報道をしたことは、マンション業界、大規模修繕工事に関わる会社への注意喚起、不正防止に効果があると思います。
 メディアが「長い間の業界の悪習は、ここで膿を出しきらなければならない!」等と正義面して吠えていますが、どの口が?と思ってしまいます。www

川瀬巴水「馬込の月」昭和5年(1930)

 マンション管理士が、大規模修繕工事の設計監理や顧問、コーディネーターの立場になったとき、見極める力が問われることになりますね。

 挿絵は大田区の風景を大田区出身の川瀬巴水が描いた水彩画と版画です。
松尾好朗

カラス被害よりゴミは人害・・・

 大田区は「令和7年度 保存版 資源とごみの分け方・出し方」の冊子を2月末に全戸へ配りました。よくできていると思います。

 大きな改善点がありましたが、それは何でしょうか?・・・答えは、マンション管理室ポストへもこの冊子が投函されたことです。
 2024/10/4の区報、プラスチック分別回収(以下プラ回収)が4月から始まるという特集号は、区民へは配られたのですが、直接関係のある管理室(ポスト)へは配られず、広報の目的が果たされていませんでした。しかし、即時改良したのは役所らしくない出来事です。ww

雨空の干し草の山、1890年7月

 以前ここにも書きましたが、プラ回収の曜日が増えたことによる人員やその経費負担等で現場は混乱しています。本来は製造側とサービスの受益者の責任と負担で回収すべきところ、弱い立場の人が犠牲になり、作業を単純に増やされその経費は知らんぷり、末端へしわ寄せ行政です。
 「プラ回収に協力しません。」という選択をするマンションも出てくるでしょう。薄っぺらい「地球環境がぁー」よりも、管理員の生活の方が大切です。
 

Van Gogh Ebene bei Auvers mit Regenwolken
オーヴェル近くの平野、1890年7月

 タイトルの「カラス被害よりゴミは人害・・・」ですが、区が貸出す「カラス除けネット」を集積所の可燃ゴミに被せてしまうことで、ゴミ収集車が到着するまでの間、カラスの食い荒らしや悪戯から守るためのもので、効果は確かにあります。但し、1枚しか貸し出しがないので、中規模マンション以上ではでは全くサイズ(3m×4m)が足りずカラスの味方をしています。w

 マンション居住者に限らず出勤ついでの近隣住民が集積所へ持参した場合は、そのカラス除けネットを捲り、自分のゴミを中に放り込みネットを元通りに戻さないことが多く、賢くて視力の良いカラスは高いところからその行動をガッツポーズをして見ています。
 バサッと舞い降りてきて、隙間にくちばしを入れて中身を引き摺り出すと、あっという間に何羽も集まってきて食料の争奪戦が始まります。
 つまり、カラス被害の原因を作っているのは人なので人害です。

 カラスといえば、映画ファンならヒッチコックの「鳥」を、そしてゴッホ好きならこれ「カラスのいる麦畑」です。
 雷雲の下、強風になびく麦のざわめき、たくさんのカラスが風にあおられ不安げに騒ぐ鳴声が聞こえてきそうです。
 彼が亡くなる年に描かれましたが遺作ではありません。しかし、このカラスが舞う3作品から漂うのは不安と寂寥感です。

Vincent van Gogh(1853-1890)
Wheat Field with Crows(1890)

Latest  広報東京都(2025年3月1日発行)より
 都は2030年までにカーボンハーフ(温室効果ガス排出半減)の取り組みの中で、2025年4月から太陽光パネル設置を「都内実績年間2万㎡以上のハウスメーカー等」住宅の新築時に事業者へ義務付けしました。
「設置費用は補助制度により通常は約8年間で回収ができます。」とありますが、メンテナンスをしていても15~20年で総入れ替えになるとすれば、処分費用を含めて次世代の住民にとっては負の遺産に、また「屋根から煙が出てますよ」てことにならないように願いたいですね。
松尾好朗