マンションに変わる馬込文士村

 大田区は西島三重子が歌う「池上線」が走る街です。頭にメロディが流れた人、歳がわかります。www
 その当時にレコード会社にいた友人が、東急電鉄(池上線)に協賛をもちかけたところ、「すきま風に震えて~♪」という歌詞がイメージダウンになるので変更してくれと言われたと話してくれました。流行したのはサイゴン陥落、天安門事件、1975(昭和51)年頃です。
 大田を縦書きすると、大(大がしら)の下に田は、中国簡体字(奋)で奮という漢字(フン・ふるう)です。興奮は簡体字で(兴奋)なので、もう字面だけでは興奮できないですね。

名所江戸百景 八景坂鎧掛松 歌川広重 
安政3年(1856)刊

 昔は東海道から多摩川(六郷)を渡り、宿場で身なりを整えてから江戸入りしたと言われ、旧東海道沿いには今もその名残があります。
 山手線に新しくできた駅「高輪ゲートウェイ」の木戸口からようやく江戸に入るので大田区は江戸のハズレでした。

 大森駅を出て池上通を渡って階段を上ると馬込文士村で文筆活動をしていた面々のレリーフ(ちょっと作品レベルが残念・・)があります。


 この広重の版画はそのレリーフがある大森駅前の天祖神社から見た風景といわれています。
 今は八景坂(マンション)として名前が残っていますが、一帯が八景園というリゾート地でした。財界人の別邸があったところにもマンションが建ち、今はテニスコートだけが残っています。
 文士達が暮らしていた家も、マンションに建替えられていることもあります。馬込文士村をめぐるツアーでは、マンションが建っている前の石碑で記念撮影ということになりますが、それでも文学ファンにとっては思いをはせてたまらない気持ちなのでしょうね。

 尾崎士郎、川端康成、萩原朔太郎、室生犀星、三好達治、石坂洋二郎、徳富蘇峰、三島由紀夫、山本周五郎、山本有三、北原白秋らの名前が連なります。宇野千代、村岡花子(朝ドラ主人公)という時代の先端を走っていた女性たちの名前も見つけることができます。私といえば名前は聞いたことあるような…レベルです。

東京二十景 「池上市之倉 夕景」
1928(昭和3)年 川瀬巴水

 山王や馬込界隈に住まう作家たちは交流し、互いに刺激し合っていたのでしょう。漫画家では池袋のトキワ荘、画家ではパリのモンマルトルやモンパルナスの環境と似ているところがあったのだと思います。

 大田区は40万世帯、74万人が暮らしています。分譲マンションは推計1,800棟90,000戸、分譲マンションだけで約21万人が暮らしています。築年数が30年を超え様々な問題を抱える管理組合が増えてきています。

『江戸近郊八景之内 池上晩鐘』天保年間
歌川広重

 珍しく、今回は挿絵と文章の内容が合っている回です。
 時々、大田区のことをつぶやきます。
 モース博士の大森貝塚、大森の海苔、高級住宅街の田園調布、下町ボブスレーの舞台になった大森銀座と町工場、キネマ蒲田行進曲、アジサシの営巣地、羽田空港等々話題はたくさん持っています。
松尾好朗