「チラシお断り」は通用するのか?

 住宅街に建つ中規模のAマンションの話です。エントランス集合郵便受けの脇には、「チラシ投函厳禁、見つけ次第警察に通報します。」というパネルがデカデカと掲示され、美観を損ねていて残念です。
 このパネルの通りに「あのぅ、マンションでチラシを投函している人がいるんですけど・・」と110番通報したところで、チラシ投函は犯罪ではありませんので、不法侵入でもしない限り警察は相手にしないでしょう。

 管理組合がチラシ投函禁止というなら、それはマンション内だけに通じるローカルルールなので、警察ではなく組合の誰かが四六時中見張ってないといけないことですね。
 管理規約や使用細則で定めることができるのは、共用部分の管理と使用の範囲なので、もしチラシ禁止ルールを総会で決議しても無効になるどころか、居住者からは(印刷物などで)情報を受ける権利を管理組合が阻害したので、損害賠償請求するとでも言われかねません。

スタンラン ≪ Chocolat de la Compagnie Francaise ≫ 1896-1900
アレクサンドル・スタンラン Alexandre Steinlen [ヴァンジャンヌ殺菌牛乳]

 高齢の居住者が「チラシは迷惑だから入れさせるな」と管理員へ文句を言うことがよくありますが、それは多くのチラシが自分にとっては不要な内容(例えば、エステやネイル、フィットネスやスポーツジム、ピザやフードデリバリーのメニュー、不動産や英会話など)であるのが腹立たしく、自分が理解できない不満や疎外感、面白くない感情を立場が下の管理員へぶつけているだけでしょう。

 その人に関係がある内容(例えば、クリーニング店のクーポンや最寄りスーパーの特売、趣味サークルや知人の短歌の掲載誌、知人の選挙ビラ、広告ティッシュなど)であれば受け取っていると思います。チラシのすべてが迷惑で要らない訳でなく、ただのわがままでしょう。
 管理員が不在の時間帯のチラシ投函は防ぐことはできません。区報は配付しても、チラシがダメなら同封されるチラシ(商店街がスポンサー)を区報の束から抜き取るというのはありえませんね。

 新聞を購読してない家庭にも、購読者と同じチラシの束が入りますが、もしこれも禁止するなら、この社会で通常に情報を受けることができる人の権利を無視することになるでしょう。なお、束になっているチラシはポスティング業者が数件分まとめたものをリスト通りに投函していますので、あて先名と包装がないだけで郵便や宅配と変わりません。
 つまり、チラシ投函禁止ルールは個人の問題であり、管理組合が禁止することは合法になり得ないと思います。
 インターネット環境が身近ではない人(または遠ざけている人)にとっては、活字や写真(印刷物)の媒体が見やすく便利で安心な場合もあるでしょう。そこまで奪う権限は組合にはありません。

≪La Chat noir ≫1896 スタンラン『ルドルフ・サリスの「ル・シャ・ノワール」の巡業)』 

スタンラン ≪ Motocycles Comiot ≫ 1896-1900

 マンション管理会社ではチラシ厳禁を掲げながら、自社や協力会社の専有部分のリフォーム、ハウスクリーニング、不動産仲介、個別保険、給湯器など多くの案内広告をしれっと管理員に投函させているところが笑えます。

 その昔、郵便受けに毎日のように入っていたピンクビラに悩まされた経験のある世代は、「チラシやビラ」=「教育上イケナイもの」という公式が頭のどこかにあって、自分に関係のないものには排除癖があるようですね。

 不要チラシ対策は、投函元の会社に「着払いで送り返す。」という脅し文句を投函口に掲示するというアイデアが以前に紹介されていましたが、実行するには送り主個人の名前と電話番号をさらすリスクがあります。
 管理員へ送付を依頼された場合は「個人名でどうぞ」とはっきり断りましょう。
 唯一、個別の投函口に「チラシ不要」などと意思表示しておけば、トラブルになった場合の対抗策にはなります。
 ただし、集合郵便受けが見た目雑然としてしまい美しいものではありません。

 本日、挿絵に使わせていただいたのは、商業絵画の代表格でモンマルトルを根城にして活躍したスタンランのポスターです。猫好きです。
 パリが好きな人はおなじみのポスターですね、可愛さがあるこれらのほかに名前を隠して政治風刺画や労働者層をテーマにしたものも多く描いています。
 パリの下層民の哀愁、哀歌を感じさせるものです。
松尾


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