市街地再開発に今さら反対って?

 以前にも紹介させていただいているAマンションが建つ地区の再開発計画での最近の話です。
 同じ計画区域内のマンションの居住者が、対象区域にあるマンションの居住者へ「再開発計画に反対しよう!」という内容のビラを配布しました。
 人それぞれ立場や考えが違うので、反対する人がいても不思議ではありません。しかし、そのビラの内容には根拠がなく、不安をあおるウサン臭い文言が並んでいます。

 その内容を要約すると、「この町から追い出されます。」「建替え後のマンションでは、今より部屋が狭くなります。」「税金が2倍、管理費・修繕積立金が高くなるので年金生活者は払えなくなります。」「部屋を強制執行で追い出されて路頭に迷います。」「建替え後に入居しない高齢者は住居の保証人が立てられません。」「仮住まいと2回の引越しは高齢者には過酷です。」「賛否の票が戸建ては1戸1票なのにマンションは1棟で1票なのは権利の侵害です。」等で、そのため再開発計画に反対しようということでした。

「平泉金色堂(絶筆)」
木版画 川瀬巴水

 計画を知らされてから10年以上経っているので、今さら何?感を持たれた方が多いと思います。
 事業の目的に防災機能の強化がありますが、この地区は増改築を重ねた古い木造建物が密集(多数の狭小敷地に低層老朽建物)し、その中で数多くの権利が複雑に絡み合い(土地利用が細分化かつ不健全、土地の合理的で健全な高度利用と都市機能更新)、道幅が狭く(道路等未整備・2項道路)、緊急車両が進入ができない場所がある等、個人の力では、にっちもさっちもない現場です。

「東京二十景」より 『芝 増上寺』
川瀬巴水

 また、当マンションは旧耐震基準の建物ですので、資産を維持して安全に住み続けるためには、耐震診断のうえ、必要な耐震補強工事が必須です。さらに周期的な大規模修繕工事、そして将来の建替え計画を始めなくてはなりません。

 マンション単独の建替え計画においては、現状の容積率では増床ができないため、増えた部屋を分譲して生まれる売却益を建築費に充てることができず、解体費用も新築費用も全額を区分所有者が負担することになります。全部屋をワンルームに変更しても採算が合いません。

 更地にした土地の価格は、建物の解体費用にも満たないこともあります。

 高齢者であっても再開発による建替えは、自己の負担なく良質な資産を残せることを魅力的だと思わないのでしょうか、永遠に住み続けられるところなどありません。


 建替え後は高層化による敷地割合の減少により税負担は少なく、管理費・修繕積立金は、無駄の多い初期設定の減額整備は管理組合の努力で変更できます。
 古い建物設備を社会的水準を保って維持管理するのはストレスも生まれ、各戸負担金が高額にならざるを得ません。
 マンション1棟で1票であることは法(都市再開発法第20条)の通り、土地が対象ですので土地の共有者全員で1票です。ここで決めたかのように権利の侵害というのは場違いです。

「東京十二題」より
『冬の月(戸山の原)』
(大正9年)川瀬巴水

 計画に反対しても具体的な代案がなければ多くの人の賛同は得られないでしょう。

 老朽化して荒れたマンションにはオーナーは住まず、コミュニティーは無くなります。
 家賃は下がり、修理のために管理費・修繕積立金等は上がるという負の循環で、放置すると未収金が目立ち始め、賃貸も「不利な人」=審査なしの外国人等が住むようになり、スラム化の始まりです。こうなってしまうと次世代へ負の遺産を残すだけです。

 大田区の南馬込と上池台に住んでいた日本画家・版画家である川瀬巴水(かわせ はすい)
の版画を挿絵に使わせていただきました

「東京十二題」より『深川上の橋』
川瀬巴水
「旅みやげ第二集」より『大阪 道とん掘の朝』
(大正10年) 川瀬巴水

以上
松尾好朗

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