駅チカのマンションの運命

 Aマンションを含めた駅周辺の市街地再開発が計画されています。
 3~4年後にはマンションを明け渡して建物を解体、そこに新築のタワーマンションに7~8年後に戻ってくる(または他の選択)というスケジュールが進行しています。
 今年度中に都市計画決定、権利変換のモデルが示されると、いよいよ計画の現実味が帯びてきます。
 Aマンションは築40年、耐震改修の検討(前面道路は緊急輸送道路指定外)及び、第3回目の大規模修繕の検討時期ですので、この市街地再開発計画がなければ、独自で大規模修繕計画を練っていた頃だと思います。


ピエール=オーギュスト・ルノワール
ピアノを弾く少女たち(ピアノに寄る娘たち)1892年

オルセー美術館
オランジュリー美術館
メトロポリタン美術館

 外部から窺うと、新築マンションに戻って来られること、明け渡し後の仮住まいと引越し等の経費は一定金額まで自己負担がないこと、階数や広さは自由に選択できないもののタワーマンションに居住(を所有)できることなど、良いこと尽くめのように見えてしまいます。
 しかし、当事者たちは準備組合から報告されるスケジュールがすでに遅れがちであること、(戻ってくる場合)7~8年後さらに遅れた場合の自分の年齢や家族の状況、権利変換の結果(部屋の広さ等)の財産価値、希望の広さを求める場合の上積金額、竣工・入居時の経済状況、個人も地域全体も漠とした不安が大きくなりつつあるのも否定できません。

『田舎のダンス』
1883 アリーヌ
『都会のダンス』
1883 シュザンヌ

 私は、Aマンション築年数を考えるとこの計画は大歓迎しています。
 単に建物の補修だけではなく居住性を高めるための設備の導入や、時代に合った資産価値の向上を含め、建物を健全に維持するためには修繕費用が今後さらに必要になります。
 何よりも、築年数を重ねると建替えの検討を始めなければなりません。

 Aマンション単独での建替え、容積率の緩和がない現行法(つまり売却できる増床面積が確保できない。)では事業にならず、敷地の売却費用を建物の解体費に充て終了となってしまいます。
 自主管理のAマンションはマンション管理士(私)がアドバイザーの立場で管理組合をお手伝いさせていただいてます。
 この市街地再開発計画の続報を期待してください。

ルノワール【ピアノを弾くイヴォンヌとクリスティーヌ・ルロル】 
ルノワール【ピアノを弾く二人の少女】ネブラスカジェスリン美術館
ルノワール『カテュール・マンデスの娘たち』

 文章の途中にピエール・オーギュスト・ルノワール Pierre-Augustê Renoir(1841-1919)の絵を貼り付けています。
 印象派の大御所ですが、画家としての不遇な時代も長く、普仏戦争にも召集されています。  
 1892年ピアノ3作は晩年の彼の最も充実した時代の作品です。

 オルセー美術館の1点は、政府御買上作品になっていますが、緑系のバック(カーテン)に補色の赤(オレンジ)のドレスの少女を立たせ、その手前の色はもう白(ドレス)しかありませんが、締めるためにウエストに青いベルトを巻いています。ベルトの対角に青の花瓶もしっかり描き、顔色の良い健康的で跳ねるような子供を2人配置し、豊かな上流社会の風景を描いています。貧しくても、ひととき辛いことを忘れてしまいそうな絵に仕上がっています。
 3作の他にもピアノを描いた作品を残しています。労働階級に生まれた彼が、当時上流社会の象徴であったピアノに強く固執していたのかもしれないですね。

 最後にモーリス・ユトリロの作品を1枚貼り付けます。

モーリス・ユトリロ《サン・リュスティック通り、モンマルトル、雪》1940年

 パリをよく知っている人はおなじみで嬉しくなる風景ですね、モンマルトル界隈の画家が地方出身が多い中、ユトリロは生粋のパリっ子です。アル中療養のために始めた油絵ですが、哀愁を感じるパリらしい風景を多く残しています。

 上のダンス2部作の内、「田舎のダンス」の女性アリーヌさんは、後にルノワールの奥さんになる女性で、ふっくら健康的でルノワールの好みだったのでしょう。
 「都会のダンス」の女性シュザンヌさんはルノワールの元カノで、このモンマルトルの街を描いたユトリロの母親です。 

 シュザンヌさんは女流画家であり、奔放な女性でルノワールの他にもロートレックやドガのモデルをしていた上に交際もしていましたので、ユトリロの父親が誰なのか分かりません。
 シュザンヌさんは、ようやく息子のユトリロが画家として成功し、その稼いだお金を若い男に貢いで逃げられています。
 恋多き女性ですね。
松尾好朗
 
 
 
 
 
 
 



排水桝の水、ぜんぶ抜く

 国道に面したAマンション、歩道との境界には雨水を集める排水溝がありグレーチング(格子)で塞がれています。流れ込んだ雨水は排水桝に溜まり、排水本管へ合流します。
 排水桝の蓋を開けてみたところ、国道を行き来する車の排気ガスの煤煙(スス)のせいか堆積したヘドロの色は真っ黒です。

 昔の話、朝早くから住民総出の「ドブさらい」がちょっとしたイベントでした。ザリガニや水生昆虫のタイコウチがいたことをあのドブ臭さと共に思い出されます。さらった泥は肥料に使っていました。
 近くのドブ川ではこれを職業にしている人がいてガタロと呼んでいました。漢字だと「河太郎・潟郎」でしょうか?

ジョセフ・マロード・ウィリアム・ターナー
「鍛冶屋の店先」1807年

 昨年、目黒川に浮かぶ花筏(桜の花びら)を河口で回収する船を見かけたのを思い出しました。東京都建設局河川から「目黒川水面等清掃委託」されている民間業者ですが、少し雅なガタロに見えました。(笑)

「カルタゴを建設するディド」 1815
ウィリアム・ターナー
『霜の朝』 1813年 ィリアムターナー

 さて、そのマンション排水桝のヘドロをさらってみると、上層には驚く量のタバコのフィルター部分(プラスチック=セルロースアセテート)が、その下のヘドロの層には意外にも人の髪の毛が目立ちました。
 そのほか、わざわざグレーチング(蓋)を開けて捨てたのか、コンビニ弁当容器、ストロー、コーヒーカップやペットボトルの蓋、レジ袋のようなものが見つかりました。
 枯葉が多いだろうと思っていましたがほとんど形をとどめていません。

 小金属と毛髪以外の、形状をとどめている物の全てがプラスチック類でした。
 分解するのが遅いプラスチックごみの深刻さを見せつけられた気がします。
 
 AIロボットが作成したデジタルアート作品が7,500万円と、高額落札されたというニュースが流れていました。
 これは、7,500万円の値が付いたという実績作りのため、「購入者未発表」様が超高額で落札しましたよと、マスコミに話題を提供しておくだけで、騒いで世界中に宣伝してくれるので、第2作目からは1作目と近い落札額が期待できるという画商が用いる古典的な素人相手の手法です。

1835-40 ノラム城 日の出
ウィリアム・ターナー
Approach to Venice 1843
ウィリアム・ターナー 
   

 それでも、価値があると認めた人が個人で購入するのは自由ですが、日本の美術館等は、海外の画商にとってはありがたいお客様で、実際、駄作を買わされたなと思えることが地方の美術館などで見かけます。しかし、地方美術館が様々な苦労を経て、購入するまでの経緯を評価に入れるならそれもありですね。 
 しかし、マスコミが騒ぐような怪しい話には乗せられないようにして欲しいものです。

 仏伊西蘭に比べ有名画家が少ないのが英独です。
 本日は、イギリスのロマン主義のジョセフ・マロード・ウィリアム・ターナー(1775-1851)の水彩・油彩画を貼り付けました。
 彼は伝統的な手法で風景画を描いていましたが、晩年は異常なほど色と光にこだわり、形は抽象的(というか正体不明)なものに変化し、色と形の調和という基本から大きく脱した画風が「ターナーみたい」という代名詞にもなり、名を残しました。現在もイギリス国民から愛されています。
 日本のポスターカラーといえば、ターナー色彩株式会社の製品が長くトップシェアを誇ります。
 ターナーの画法は色を塗った後の擦り掠りが多いので、印刷で見るより立体的です。デジタルアートからは、遠いところに位置する絵画です。 
松尾

 


笛吹けど、踊らず。

 街は桜色、汗ばむほどの陽気なのにセミナー会場の後ろから見渡すと、冬色をまとったオジサンたちの後頭部ばかりが目立ちます。
 2021年3月24日(水)マンション管理センター主催の特別セミナーが開催されました。
 世間ではジェンダーについて話題しきりですが、このセミナー一つをとっても女性の参加が極端に少なく、こんなところにもリアル日本とのギャップが見てとれますね。
 ジェンダーギャップ指数ランキング(WEF)が156ヵ国中、日本は120位ということですが、大田区人口の半分にも満たないような国々と日本を比較してマスコミが騒ぐ意味があるのでしょうか、イスラムやヒンドゥー教の国々は下位に追いやられていますが、私こそ正しいという欧米の物差しでしか測れないことがすでに差別だということを早く気付いて欲しいと思います。

 「改正民法及びマンションの管理の適正化の推進に関する法律の一部を改正する法律の概要と管理組合運営への影響等についての解説セミナー」

1864年《白のシンフォニー№2 白衣の少女》 James Abbott McNeill Whistler ホイッスラー

 
 改正民法について、私は仕事で話を合わせる程度でよいと思っていますが、相続発生時の配偶者居住権は、具体例を知りたいと思います。
 適正化法の改正について、マンション管理計画認定制度の基準(案)の中、「計画期間30年以上、かつ残存期間内に2回以上の大規模修繕工事を含む長期修繕計画に基づき修繕積立金の額が設定されていること」と記載されています。
 建物の劣化周期はその使用材料、環境・立地条件、建物規模などによって大きく変わってきますので、何をもって大規模修繕工事という括りなのか、まだ不明確なところがあると思います。
 

 管理組合によっては建物診断結果をよく検討し、新しい設備方式やIT化の導入などを含め、改修すべき箇所を明確にして、中小規模な工事を高い頻度で実施している成功例もあります。

 
 これまでもマンションに関わる総合調査や制度(東京都優良マンション登録表示制度管理状況届出制度マンションみらいネット)などがありました。
 このマンション管理計画認定制度が、認定条件をクリアするためのハードルが少し高いところもあり、直接マンションの理事長に送られた場合には、目的やメリットがよく伝わらなければ記入も面倒なので、「またなんか来てるけどウチはこういうのは結構ですんで・・。」となってしまう恐れがあります。

John Singer Sargent – Morning Walk『朝の散歩』(1888年)ジョン・シンガー・サージェント

 以前、「東京都優良マンション登録表示制度」に登録したマンションが大手管理会社3社が管理する物件ばかりに集中し、登録も増えずに更新もされないという現状があります。
 新しい制度がこれの二の舞にならないようにしなければ、また役人の天下り先を作っただけといわれかねませんね。

 行政が笛を吹いて、大手管理会社がお付き合で踊ってくれた数字を実績にするのでは意味がなく、管理不全マンション予備軍のようなところが届け出るように努力するのが本来の目的だと思います。
 この制度のマンション管理士の役割は大きいと思います。

《白のシンフォニー No.3》 James Abbott McNeill Whistler ホイッスラー

1887John Singer Sargent Carnation, Lily, Lily, Rose『カーネーション、リリー、リリー、ローズ』
ジョン・シンガー・サージェント

 挿絵の作者は、ホイッスラーとサージェントの二人、共にジャポニスムの影響を強く受けた画家で印象派、写実主義、唯美主義、耽美主義と呼ばれますが、その枠に収まらない表現も多く、独特の構図や視点にも東洋美術の影響が見られます。
 美しいものを美しく描き、心地よい印象を残しました。
 エンヤの「On My Way Home」のMVにはこの提灯の絵の実写版のようなシーンが見られます。
 女性たちの白い衣装、ホイッスラーは白の背景に白のドレスという絵画において禁断の手法を試みました。
 二人の様々な試みも、卓抜したデッサン力と質感表現により魅力あるものになっているのだと思います。
松尾
 
 
 



「チラシお断り」は通用するのか?

 住宅街に建つ中規模のAマンションの話です。エントランス集合郵便受けの脇には、「チラシ投函厳禁、見つけ次第警察に通報します。」というパネルがデカデカと掲示され、美観を損ねていて残念です。
 このパネルの通りに「あのぅ、マンションでチラシを投函している人がいるんですけど・・」と110番通報したところで、チラシ投函は犯罪ではありませんので、不法侵入でもしない限り警察は相手にしないでしょう。

 管理組合がチラシ投函禁止というなら、それはマンション内だけに通じるローカルルールなので、警察ではなく組合の誰かが四六時中見張ってないといけないことですね。
 管理規約や使用細則で定めることができるのは、共用部分の管理と使用の範囲なので、もしチラシ禁止ルールを総会で決議しても無効になるどころか、居住者からは(印刷物などで)情報を受ける権利を管理組合が阻害したので、損害賠償請求するとでも言われかねません。

スタンラン ≪ Chocolat de la Compagnie Francaise ≫ 1896-1900
アレクサンドル・スタンラン Alexandre Steinlen [ヴァンジャンヌ殺菌牛乳]

 高齢の居住者が「チラシは迷惑だから入れさせるな」と管理員へ文句を言うことがよくありますが、それは多くのチラシが自分にとっては不要な内容(例えば、エステやネイル、フィットネスやスポーツジム、ピザやフードデリバリーのメニュー、不動産や英会話など)であるのが腹立たしく、自分が理解できない不満や疎外感、面白くない感情を立場が下の管理員へぶつけているだけでしょう。

 その人に関係がある内容(例えば、クリーニング店のクーポンや最寄りスーパーの特売、趣味サークルや知人の短歌の掲載誌、知人の選挙ビラ、広告ティッシュなど)であれば受け取っていると思います。チラシのすべてが迷惑で要らない訳でなく、ただのわがままでしょう。
 管理員が不在の時間帯のチラシ投函は防ぐことはできません。区報は配付しても、チラシがダメなら同封されるチラシ(商店街がスポンサー)を区報の束から抜き取るというのはありえませんね。

 新聞を購読してない家庭にも、購読者と同じチラシの束が入りますが、もしこれも禁止するなら、この社会で通常に情報を受けることができる人の権利を無視することになるでしょう。なお、束になっているチラシはポスティング業者が数件分まとめたものをリスト通りに投函していますので、あて先名と包装がないだけで郵便や宅配と変わりません。
 つまり、チラシ投函禁止ルールは個人の問題であり、管理組合が禁止することは合法になり得ないと思います。
 インターネット環境が身近ではない人(または遠ざけている人)にとっては、活字や写真(印刷物)の媒体が見やすく便利で安心な場合もあるでしょう。そこまで奪う権限は組合にはありません。

≪La Chat noir ≫1896 スタンラン『ルドルフ・サリスの「ル・シャ・ノワール」の巡業)』 

スタンラン ≪ Motocycles Comiot ≫ 1896-1900

 マンション管理会社ではチラシ厳禁を掲げながら、自社や協力会社の専有部分のリフォーム、ハウスクリーニング、不動産仲介、個別保険、給湯器など多くの案内広告をしれっと管理員に投函させているところが笑えます。

 その昔、郵便受けに毎日のように入っていたピンクビラに悩まされた経験のある世代は、「チラシやビラ」=「教育上イケナイもの」という公式が頭のどこかにあって、自分に関係のないものには排除癖があるようですね。

 不要チラシ対策は、投函元の会社に「着払いで送り返す。」という脅し文句を投函口に掲示するというアイデアが以前に紹介されていましたが、実行するには送り主個人の名前と電話番号をさらすリスクがあります。
 管理員へ送付を依頼された場合は「個人名でどうぞ」とはっきり断りましょう。
 唯一、個別の投函口に「チラシ不要」などと意思表示しておけば、トラブルになった場合の対抗策にはなります。
 ただし、集合郵便受けが見た目雑然としてしまい美しいものではありません。

 本日、挿絵に使わせていただいたのは、商業絵画の代表格でモンマルトルを根城にして活躍したスタンランのポスターです。猫好きです。
 パリが好きな人はおなじみのポスターですね、可愛さがあるこれらのほかに名前を隠して政治風刺画や労働者層をテーマにしたものも多く描いています。
 パリの下層民の哀愁、哀歌を感じさせるものです。
松尾


子供椅子からの卒業

 このマンションで生まれたAさんの息子は元気に育ち、これまで5年間毎日使い続けて、ちょっと窮屈になった子供椅子にお別れをすることにしました。成長に合わせて座面の高さを調整できる子供椅子です。
 区の粗大ごみ受付センターの手続きも終え、マンション内の指定場所に置いたところ、管理室へ「あの子供用の椅子をいただきたいのですが」と子供を抱いたBさんから依頼があり、Aさんに了解いただきリユースが成立、その椅子はめでたく2番目の主人を持てることになりました。

劒山の朝1926(大正15)年
エルキャピタン1925(大正14)年
ジュマ マシッド1931(昭和6)年

 5年間使用してシートが古くなっているものの、木部は良品です。
 Aさんは、子供の成長を支えてくれた椅子だからと、ピカピカに磨いてから出されたことで、Bさんは、これなら大丈夫と椅子から何か感じたものがあったのだと思います。
 家具であってもゴミとして捨てたことで所有権はなくなりますが、粗大ごみシールが貼ってあれば管理下にあると解釈できるので、勝手に持ち去るのは犯罪でしょう。
 黙って持ち去る人や、区の回収より早く回収する業者(売れそうなモノだけ)が多い中で、ちょっといい話だったので書き留めました。
 AさんBさん共に若いママです。捨ててしまうモノでも感謝を込めて見送ることが出来るAさんの澄んだ心、そのモノの価値を見極めて受け入れられるBさんの感性を見習いたいですね。

 本日紹介したいのは吉田博(1876-1950)という人の版画です。没後70年の展覧会を観に行ってきました。(東京都美術館:2021/3/28迄)
 西洋画家、版画家ですが、次男を穂高と命名するほど山が好きで、登山家でもあります。山岳画家と呼ばれる彼の構図は、おきまりの山の構図とは大きく異なります。

亀戸 1927(昭和2)年
神楽坂通り 夜の雨後1929(昭和4)年

 その昔、テントだけでも重かったでしょうが、その上画材も持ち歩いています。このような姿で登っていたようです。そんな彼が自ら体得した者にしか分からない自然観と版画とは思えない繊細な描写は、誰も真似ができない境地に達しています。
 同時代の黒田清輝ら官費でのフランス留学組(油絵・洋画)に対抗して、自費でアメリカへ渡っています。そこでは粗悪で下品な日本の浮世絵が流通していました。
 その経験から彼は後半生、日本の版画の質を向上することに全力を注ぎます。


 彼が他の画家・版画家と違うところは卓越した技量はもちろんですが、海外の人々が想像、そして期待する日本らしさ、いわゆる外国人受けする題材を決して質を落とさずに大量に摺って、商売として版画の販売をやってのけているところです。
 また、四季の移ろい、一日の時間変化、お天気模様を同じ版木を使って色や版木の枚数の変化で表現することに抵抗がありませんでした。これは、同じものを一定枚数摺ったら版木を燃やす場合がありますので、邪道といわれることがあります。
 桜と五重塔に和服の娘、富士山と松など、期待通りの日本らしさで買って帰りたくなるような上質な版画を摺り、その資金で多くの貧乏画家に活力を与え、戦後の芸術復興に尽くしました。 

 ダイアナ妃の執務室の壁には2枚、吉田博の版画が存在感を示していました。
 作品のコレクターには、フロイト、マッカーサー元帥、ノラジョーンズがいます。

猿沢池
光る海

 吉田博、伊藤若冲等、日本のアカデミックな視点から外れ、主流から認められなかったアーチストが、海外に認められてから逆輸入され、注目されるところが美術界に限らず日本的です。
松尾

わきまえる賃借人?

ポール・デルボー「駅と森」
1960年 Paul Delvaux

 マンションの区分所有者がその専有部分を管理規約・使用細則に定められた用途の範囲で使用する限り、本人が居住しても他人に貸しても本人の自由であり、立場の優劣も発生しません。
 マンションの共用部分の駐車場使用細則において、その専用使用権に優先順位を定めていることがあります。
 

 Aマンションでは駐車場に空きが出た場合、次の順序になることが駐車場使用細則に定められています。
   1.居住する区分所有者及び同居人で1台目の契約の場合
   2.居住する区分所有者及び同居人で2台目の契約の場合
   3.区分所有者から部屋を賃借等をした者及び同居人
 というように、「駐車場に空きが出ました。」というアナウンスがあっても、2台目の希望者よりも後の順位では、賃借人が駐車場を使用できることはあまり望めません。
 但し、賃借人どころかマンション外に募集しても、まだ空きが埋まらないマンションもありますので、立地、環境、地域特性等で違いがあるようです。
 管理会社が管理を徹底できていないマンション駐車場では、居住していない区分所有者が賃借人を「同居人です。」と偽って申込み、「駐車場付き」という有利な条件で賃貸募集していることが以前にありました。しかも賃貸付けしたのがその管理会社の賃貸部門だったりするとほぼ詐欺ですね。(笑)

 居住、非居住の区分所有者は、権利が平等であることから、非居住の区分所有者が優先順序で差別を受ける根拠は全く見当たりません。
 優先順位を付ける議案を総会で決議することは有効でも、公序良俗に違反するということでしょうか、ましてや賃借人へは駐車場使用料を割り増しする差別はあってはなりません。

ポール・デルボー「聖夜」
1956年 Paul Delvaux

 「賃借人はルールを守らないし、駐車場使用料を滞納して夜逃げ(古っ)するので使わさない方がいい」と言われることがありますが、これは無意識の偏見であり、区分所有者に対しても同じことが当てはまります。

 マンション内の駐車場抽選から外れた車を所有する居住者は、一般的には近隣の駐車場を借りる(組合が借り上げることもあります。)ことになります。管理組合はきるだけ費用負担の公平を保つために近隣駐車場賃料相場を頻繁に確認して、マンション駐車場の使用料(賃貸料)へ反映しなくてはなりません。
 例えば、近隣の駐車場が露天にあり、マンションの駐車場は屋根付きであれば、近隣のそれよりマンションの使用料の方を高く設定しなければ公平性は保たれません。雨の中、傘をさして水溜りをまたいで車に辿り着く駐車場の使用料の方が、マンションのそれより高い場合は、抽選に外れた以上に不満や不信感を増すことになるでしょう。

 公平性の原則から駐車場区画の抽選会を毎年開催することがあります。しかし、車両台数が多い場合や、車両サイズ、機械式駐車場の高さ制限の確認、車両移動日の不在者連絡、不参加者の確認作業等、大変な作業であり何らかのトラブルも起きることもあります。
 例えばハイルーフは機械式駐車場のどの段にも入らないことがあるため、平置きを希望している人がいても、ハイルーフの所有者が優先されて平置きを取られ不満を残します。また広くスペースが必要な身障者用駐車場の使用者が、その本来の目的で使用せずに独占使用しているというケースもあります。

ポール・デルボー
「small square station」
1963 Paul Delvaux

 そして機械式駐車場の場合は、年間のメンテナンス費用は軽微であっても、数十年後のリニューアル費用に必要な工事費は、規模にもよりますが駐車場使用料の収入だけでは桁違いに不足します。
 駐車場に何ら恩恵を受けていない区分所有者も負担する工事費を、赤字事業のリニューアルのために取り崩すには賛同を得にくいことが考えられます。

 機械式駐車場に空きが目立ち始めたら、一部又は全部を平置き駐車場に変更した場合のシミュレーションを描いて検討することをお薦めします。

 相変わらず、切取り発言で印象操作を行い得意がっている日本のマスコミですが、刺激的な言葉尻だけをわざわざ海外メディアへ喧伝し、その目立つリアクションを切取り、海外ではみーんなこう言っているぞ、世界中で笑いものになっているぞという両方共3流メディアのやり取り報道を何度も見せられるのは迷惑ですね。
 世界196ヵ国77億人の中で何%が日本のことを少しでも知っているのか、その中でも地球のどこにあるのか区別などできる人はほとんどいません。
 ましてJOC人事のドタバタ等は、夏のオリンピック開催経験国17ヵ国に絞ってみても、どうでもよいのが今の世界でしょう。
 最近、午前や昼過ぎのワイドショーを見る機会がありました。この時間帯のTVは誰が見てるんだろうと思ってしまいますが、魅力のある番組を作って欲しいものです。

 シュールレアリスムの画家、ベルギーのポール・デルボーを紹介します。1897-1994
 生涯愛し続けた女性タムを多く描いているのが有名ですが、上の3点は駅舎の夜景が描かれていることでわかるように、この人は鉄道オタクでもありました。
 裕福な家庭ですが厳格な父、溺愛と束縛の母の環境の中で育てられ、彼は内部にあるイメージを日常から切り離し、非日常へと転化して描き続けました。幻想的でも基礎力があり空気が澄んでいる印象を受けます。
 以前、府中の美術館でデルボー展が開催され、どの絵からも感じたのがクールな「静寂」でした。
 彼は死を迎える前の数年間は、殆ど目が見えなくなりましたが、それでも愛するタムを描き続けました。 
松尾

Paul delvaux





ある財閥系管理会社の錬金術

 100戸を超えるマンションに暮らすAさんは、数年前に理事長に推され、何もわからないうちに1年が過ぎ、次の理事長へ引継ぎを終えました。Aさんは、ある大手財閥系グループが分譲したマンションの組合員(区分所有者)です。
 その後、マンション管理についての知識を少しずつ増やすうちに、管理費(委託費)が近隣の同じような規模のマンションに比べて高額で、修繕工事の規模や内容に関わらず、すべてを管理会社が実施していることに疑問を抱きました。
 理事会は管理会社の工事見積もりと他社の工事見積とを比較している様子はありません。管理会社へいくつかの質問をしましたが、理事会を通して下さいとのことで回答はありません。

Gustave Franciscus (Gustaaf) De Smet、”Het goede huis” (1926)

 築10年に満たないにも関わらず、管理会社は補修工事の原因や目的の説明も不十分なまま次々と工事を実施、このペースで工事支出が続くと、修繕積立金の大幅な値上げか、大規模修繕工事の時には各戸へ一時負担金が発生するのではないかという危機感から、Aさんは次期の理事長に立候補しようと考えました。
 長期修繕計画は、存在があっても修正が必要なので、すでに何の役に立っていません。

 しかし総会では役員選任の議案の前に「役員を経験した者は、その翌年から5年の間は役員にはなることができない。」というおかしな使用細則が提案され決議されてしまいました。Aさんを立候補させないために管理会社が主導して、現在の理事会に「特定の組合員の独裁を防ぎ、多くの組合員に役員を経験していただくため・・」ともっともらしい理由を付けて急ぎ議案化したものです。
 その上、管理委託費の値上まで決議されてしまいました。

 区分所有法では組合員総数、議決権総数の1/5以上に当たる組合員の同意を得ることができれば臨時総会を招集できます。
 しかし管理に関して疑問を抱いた少数の組合員が手を挙げても、ここではグループ系列の組合員の票数、その系列の理事長が持つ委任状を合わせると、どのような議案でも系列の思うがままに押し切られてしまいます。
 やり方を間違えるとAさんを色々文句をいってる「変な人」扱いされてマンションの中で孤立してしまうこともあります。強引に進めると居住者間を分断することになり、Aさんはそれは望まないところです。

Gustave Franciscus (Gustaaf) De Smet、芸術家と妻 (1927)

 マンション販売時には売れ残りを出さないためそのグループ系列の販売会社は、同系列の会社や社員、下請け会社に割引価格で販売協力(購入)させ、そして購入者へは住宅手当等(実際は管理費相当額)が支給されますが、その手当の原資は系列会社以外の一般組合員が支払う相場より高い管理費から間接的に調達しているという構図になっています。
 また系列の賃貸不動産会社にまとめて協力を請い(買い取らせ)、賃貸や系列の社宅等に使われていることで、議決権数(票数)を増やしていることもあります。
 理事長が系列の組合員(区分所有者)の場合は、同じく系列のマンション管理会社は安泰で、修繕積立金は使い放題、値上げ決議も賛成多数(理事長への委任状)で乗り切り、管理組合を支配できます。

Gustave Franciscus (Gustaaf) De Smet

 すべてではありませんが、このように大手財閥グループ系列のマンションを購入すると、未来永劫しっかり財務コントロールされてしまいます。
 大手というブランドで安心を買ったと思う人は、それで居心地よく暮らせるので反対はしません。

 財閥はますます太り続け強固に城を固め、一般組合員は財閥に貢ぎ続けてやせ衰え、手を挙げる元気もなくなるというお江戸の頃から続く財閥の錬金術です。

 ベルギーのスメットの絵画を挿絵にしました。表現主義の画家です。
 絵画が思想、哲学、宗教、権力者の伝達手段の要素を引きずったまま、絵画の法則に縛られていた時代から脱し、人間の内面を表現しようとしました。
 表現主義の代表的な画家は、Edvard Munch(1863-1944)あの「叫び」のムンクの他、ルオーやクレー、モディリアーニがいます。
松尾

資産価値下落の補償は誰が?

 昨年(2020年)の2月5日、逗子市池子に建つマンションの斜面が崩れ、下を歩いていた18歳の女子高生が土砂に埋もれ死亡する事故が起きました。
 これからの人生を絶たれてしまった本人も、18歳まで育て上げたご両親の悲しさ口惜しさ計り知れません。
 遺族は崩落した斜面の土地を所有しているマンションの各区分所有者(管理組合)と、安全管理を怠ったのが事故の原因としてマンションの管理会社へ業務上過失致死で刑事告訴、1億1800万円の損害賠償を請求しました。
 管理会社との委託契約の中で、管理対象範囲に斜面(擁壁)の管理が明記されているのか等の判断材料があるでしょうが、斜面が崩落する前日に管理員が斜面にヒビ割れがあることを管理会社へ報告していることから、その時点で緊急対応も追いつかない突然の事故だったと推測できます。

 遺族は管理組合の管理者(理事長)を相手に訴えることになります。管理者は委託している管理会社へ責任を問う順序になるので、報道されているように遺族は管理組合が契約している管理会社を相手に直接の告訴ができるのか、また竣工(2004年)後の2011年に土砂災害警戒区域に指定されましたが、管理組合と管理会社は後の指定による責任を問われるのか、今後の展開を追うしかありません。

ジーノ・セヴェリーニ(伊)1883-1966

 管理会社の善管注意義務の対象になるのか=崩落を予見できたか=どのような判断になるのかも注目したいと思います。

 業界の現実は、管理会社が巡回点検を委託されている場合でも、多くても月1回、限られた時間と予算の中で電気、給排水衛生設備等の点検確認に時間を費やすため、敷地をじっくり見て回ることはまずありません。まして巡回点検員や管理員は土木、地質造成等の専門家ではありませんのでどこまで責任を問えるのか疑問があります。
 現場はグーグルマップの写真で見ることができますが、「よくこんなところに建てたね。」といわれそうな立地です。神奈川県にはよくある立地の物件です。

ジーノ・セヴェリーニ(伊)1883−1966

 報道記事には市が行った応急の仮復旧の費用を管理組合が分割で支払うとありましたので保険会社とは交渉中なのか、そして遺族からの損害賠償は戸当たり300万円を超える金額になりますので、これも判決の行方を見守りたいと思います。
 これだけでは済みません。資産価値を回復させるための斜面(擁壁)の本復旧は保険対象外のため管理組合(各区分所有者)の費用から捻出しなければなりません。そのための工事には相当の各戸負担金が予測されるので、今マンション売却を望んでも価格が付かない(買手が付かない)状態になります。

 人一人亡くなっていますので賠償責任は免れません。借入をして本復旧が終了しても資産価値は当面の間、望み通りには戻らないでしょう。
 賠償責任の上、多くの人は資産価値が下落した自宅のローンも払い続けないとなりません。崖地に起きた災害と災難です。

 台風19号(2020.10)で水害が起きた武蔵小杉のタワーマンションについて地域的に資産価値が一時期大きく変動しました。これは自然災害ですが、2019.2.9のブラタモリという番組で武蔵小杉のタワーマンションが紹介され、その道路の下には河川(暗渠)が通っていると説明があったのをすぐに思い出しました。
 武蔵小杉の近隣でも高津、梶ヶ谷、溝の口、向河原等、窪、沢、沼、池等のサンズイや谷がついている地名は特にハザードマップやその昔の地図、標高等を確認しなくてはなりませんね。
 マンション購入時にはその価格はもちろん、仕事場へのアクセスや買い物、子供の教育環境からキッチンの使い勝手まで様々なことを考えてしましますが、立地は重きを置くべきであることをこの事故が起きて痛感させられました。

 建物構造にたとえ素人であっても、街の中でこのマンション大丈夫か?と見えた(感じた)建物は大丈夫ではありません。法的にはクリアできていても、大丈夫かなと不安(ストレス)を抱えながら住み続けることはできませんね。

 最近のこと、83歳の森会長の発言の一部をとらえてマスコミを中心に女性蔑視だと非難しています。もちろん正しいとは思いませんが、この年代に生まれた人達とは価値観も大きく違うのではないか、よってたかって自分こそ絶対正義だと非難する傾向こそ危なく、得るものはないと感じます。
 そんな低俗な風潮は誰も望まないでしょう。国会議員も含め最低限度の礼節は守ってほしいと感じています。
 気に入らないから辞任させて謝罪させて勝ち誇っているアホの顔ほど安っぽく醜いものはないと言いたいところです。
 海外の女性が、追い詰めてやるとまで発言していますが、一時的、感情的な発言はお互い様であり森会長と似てしまっています。
 子供のケンカのようですね。
 みなさん武漢ウィルスでイライラしているのかな。
松尾

アンコンシャス・バイアス

 中規模の築浅Aマンションは、デザイナーズマンションと呼ばれて分譲販売されていました。共用部分の内装は自然石や木調の設えでエントランスロビーは清掃が行き届き、ゆったりしたホテルのような高級イメージを持つマンションです。

 竣工以来、日常清掃は管理員のBさんが一人で続けていますが、冬の寒い日、雑巾を握るBさんの手は赤くはれていました。
 ここには雑巾一枚洗うのもモップや作業着を洗うのもゴミ置場にシンクが一つあるだけで、洗濯機も給湯設備もありません。
 この規模のマンションを清掃するのには毎日どのくらいの雑巾等を洗うのか、冬場に冷水と湯とではどちらが短時間で効率の良い清掃作業ができるのか素人でもわかりそうなものですが、インフラの費用が削られ整備されていないマンションは後々大きくランニングコストに跳ね返ってきます。

 ゴミ置場の開口部は搬入出に支障がないように親子扉で広く取り、2方向の開口部で自然換気により湿気や臭いを防ぐことは常識ですが、Aマンションには開口部が鉄扉一枚だけで風は通りません。

水耕栽培の「春の花ミックス」花はこれから咲く予定
水耕栽培「水中の根」

文章と関係がありませんが、私のデスクの上の水槽です。先住民のカラフルなエビと、どんどん場所を占める根っこが共存しています。

 夏になるとゴミ置場にこもった熱気と臭気で、利用者は奥に設けた分別場所へ進まずにゴミを入り口付近に投げ入れ、次の人も手前の床に放置して扉も開けることができない悪循環が起き、清掃作業も増加している状態です。
 その扉の幅は取っ手分を除いても有効72㎝しかなく台車(本体60㎝幅)が枠に当たりながらやっと通る幅なので、資源・リサイクル(ペットボトルやアルミ缶等)のパンパンに詰め込んだ大袋(直径約1m)は外へ運び出せないという喜悲劇をBさんは毎週体験しているようです。
 その上、ゴミ置場の出入り口は裏通りに面していて、マンションのゴミ集積所は反対側の表通りにあるので、大量のゴミや資源を何往復も台車に乗せて運ぶという本来はやらなくてよい作業をさせられる羽目になっています。よほどの新米が設計したのか、あり得ない動線です。

「花」フランチェスコ・アイエツ 1791-1882 イタリア・ロマン主義

 この時代には主流の古典主義が、調和や理想を重く見る様式であったのに反して、ロマン主義は個人、個性、自由、想像力、時には不合理なもの、幻想的、怪奇的なものに重きを置く思想でした。人物画が多い中では珍しい絵、花よりも花瓶を支える手が気になります。

このAマンションは、販売目的のためだけに見栄えよくデザインされていても、メンテナンスにかかるランニング計画においては大ハズレのマンションと言えます。
 Aマンションに限らず、販売目的がかなっていれば、あとはどうでもよい傾向は他でも多く見かけます。
 人によりますが設計者に無意識の偏見があるのではないのでしょうか、管理員には湯を使わせないで我慢させればいい、ゴミ置場なんてコストをかけなくていい、ゴミ置場の出入口は裏に隠して管理人にゴミを運ばせればいいという上から目線の意識があるのではないのかと、このマンションを見ると思ってしまいます。
昼間は利用が少ないロビーや廊下に24時間空調を続けるより、時間によってはゴミ置場や集合郵便受けの投函側にも空調を入れる方が居住者の快適性が増します。

 ペットの脚洗い場に誰も使わない給湯器を設置しているよりも、管理室やゴミ置場の洗い場に給湯器があれば作業効率が格段に上がるのは間違いありません。
 設計者は我を通さず、後になってから誰からにも感謝される設計をして欲しいものです。
松尾

老害マンション

 大通りから少し入れば閑静な住宅地、豊かに茂った木々の向こうに落ち着いたレンガ色のAマンションを見つけることができます。
 第一種低層住専らしく敷地もゆったりして築年数からビンテージマンションと呼ぶにふさわしい佇まいを見せています。
 新年度、輪番制により新しく役員が決まりましたが理事長は多忙なため、組合運営は副理事長が仕切るようになりました。

植物のあるリビングルーム

 高齢である副理事長は自分には大きな権限があると思い込んでしまい、理事長の名前を使い予算承認も受けていない工事等を発注したり、他の居住者を訪問して命令調で物言いをするようになりました。
 そしてある日、何の承諾も受けずに1階居住者の専用庭に業者を入れて、高木中木を伐採してしまったのです。

 専用庭は、毎月使用料を納めている組合員に専用使用権があります。
 一般的に専用庭の管理については、竣工時からの緑地割合を維持することから共用費用で剪定等の管理をしている場合が多いと思います。
 一定の高さに成長した樹木が隣接地や建物、道路側に枝葉が影響(遮光、標識、電線、落葉等で迷惑)するような場合は剪定を、病害虫等で枯れた場合は伐採することがあります。

今回は伐採する理由は全く見当たりません。
 専用庭への不法侵入の上、専用庭の使用権者と共有の財産を毀損する不法行為です。
 さらに奇妙なのが、伐採した枝葉等のすべてをその場に放置したことです。少なくともプロの植木屋さんではなさそうですね。

植物のあるダイニングルーム

 当の副理事長に理由を聞いても要領を得ず、精神的な病(昔ならご乱心)としか言えません。もし怨恨なら立派な犯罪ですが・・。
 緑がなくなったことで、建物に陰影や奥行きがなくなり、何か落ち着きのない古くて寂れた表情になり、年月を重ねないと雰囲気を醸し出せないビンテージマンションが、ただの古いマンションになってしまいました。
 見かけの資産価値の下落は計り知れません。
 現在、ウィルス感染防止により理事会開催はなく、その後の情報は不明です。

パリの街並み(Google Map)

 絵画や写真では建物が殺風景であっても、手前や上部の隅に枝葉や花を配すれば遠近感とリッチ感が生まれます。インテリアデザインでも硬くなりがちのオフィスや、間が抜けた感のある空間に観葉植物を配するだけでイイ感じに空気が変わることは経験されていると思います。

 マンションに長く住んでいる声の大きな高齢者によって正当な理由なく反対され、すでに委任状等の票数で可決される予定の議案が再審議になってしまったこともありました。議長がコントロールできないことも原因です。
 管理規約も区分所有法も無視される超法規ですね。
 海に近いマンションは塩害対策を、ハトや野良ネコには鳥獣害(糞害)対策を、そして老害対策が必要な管理組合も出てくるかもしれません。
松尾

胡蝶の響きの今昔

 2021年もお付き合いありがとうございます。
 マンションの管理会社は、管理組合の積立額が少なく、または借入金が残っていて、値上げ提案も承認されないどころか、管理委託費の減額を要求され、管理組合の役員等から無理難題を背負わされ、手間ばかりかかる物件は、今後差引するとマイナスになると判断して、管理会社の方から解約するという傾向が昨年は顕著に見られました。
 あるワンマン理事長は管理会社のフロント(物件担当者)を召使のように扱い、結果は何人ものフロントが心の病や転職等で次々と辞めてしまい、管理会社はお金と時間をかけて募集して育てた人材を多く失うことになりました。
 我々の間ではウ〇コ物件と呼ぶこのような物件は、誰も引き受けずに何も知らない新人に担当が回され、そしてつぶされて行きます。
 以前も同じことを書きましたが、管理会社がマンションの棟数、戸数を競い合うのは意味がなく、よい管理会社とはマンションに合わせて上質で効率の良い管理ができることで、それが適正価格となり顧客の満足につながると思っています。 

1953年<聖牛>

 丑年なので奥村土牛(とぎゅう)1889-1990をご紹介します。
 印度から善光寺に迎えられた聖牛を描きました。胡粉(ごふん)を何回も塗り重ねた微妙に深みのある画風です。胡粉:風化させた蛤の貝殻を焼いて粉末にした白の顔料ですが、現在は代用品が多くあります。

 胡は時代によって違いますが、中華から見てあっちの方(西方ですが西戎と蔑んでます。)、ペルシャの民族文化を指しているものと思われます。
 弦楽器の胡弓をはじめ、胡瓜、胡椒、胡桃、胡麻(キュウリ、コショウ、クルミ、ゴマ)、胡坐(あぐら)、胡蝶の夢、胡蝶の舞、とたくさんありますね。

哺乳類ウシ目 ラクダ科ラクダ属 Camelus
胡蝶の紋所(藤胡蝶)

 胡の文字には、遠くシルクロードに思いをはせてしまいます。
 もらった後がちょっと扱いに困る胡蝶蘭というエキゾチックな花がありますが、現代人は胡蝶といえば「胡蝶しのぶ」と「胡蝶カナエ」を連想するようです。鬼滅の刃の登場人物らしいですが、私には解説できません。

 話は脱線しますが、よく知られている「ペルシャの市場にて」という曲が、私の中学校の昼休み時間にいつも流されていました。
 短い曲ですが、ラクダの商隊の到着と出発の場面に物乞いの歌声が2回出てきます。そのメロディーに合わせて「電信柱が屁をこいた。」と男子はお弁当を食べながら大きな声で歌っていたことを思い出しました。全員アホですね。(大笑)
 昔の田舎の中学生の風景でした。
松尾

フランスパンの包装から

 昔々のこと、英仏海峡をフェリーで渡り、小さな港町に上陸したのがが私の初フランスでした。
 当時のイギリスメシに辟易していた私は、無性に本場のフランスパンを食べたくなり、その町のパン屋へ入り、もう売れ残りの時間かなと思いながらもカウンター越しにバケットを指さしました。店の人は折り紙ぐらいの小さな紙にバケットの中央だけを包み、笑顔と一緒に私へ手渡してくれました。 

René Magritte (1898-1967)L’avenir 未来
René Magritte (1898-1967)物の力

 日本では過剰包装が問題になっていた時代、このシンプルで機能的で明確に役目を果たす完璧な包装は、強いカルチュアーショックを体感したのを覚えています。また、欧州に劣等感を持ったり、迷っていた私に前に進むヒントを与えてくれた気がします。 
 今年、レジ袋を悪者に仕立て、袋の有料化やマイバッグが普及しました。軽くて丈夫で安くて清潔で加工も自由なポリエチレンフィルムの袋は素晴らしい発明品だと思っています。
 海洋プラゴミや地球温暖化を防ぐ目的云々、要はその袋は本当に必要なの?と、自分たちの生活スタイルを見直すためのきっかけということでしょうね。

 毎度毎度の「袋はお持ちでしょうか?」では、袋はもらわないものの、私は100均でレジ袋のようなゴミ袋を買ってレジ袋としても使っている悪者です。(555)・・・タイ風の(笑)や(www)です。5の発音がハなのでハハハです。SNS上でよく使われています。

 フランスパンの絵です。パンは知っている限りでは15世紀にダ・ヴィンチの「最後の晩餐」のテーブルの上に転がっている固そうなパン、美術の教科書でおなじみのフェルメールの「牛乳を注ぐ女」(1658年)にみられるブツブツのパンが有名で、ベラスケスをはじめ多くの画家が描いていますが、パンはサブの存在、でもこのマグリッド、セザンヌ、ダリの絵ではパンが主役で存在感があります。
 そして、おいしそうでもあります。食べ物の絵はここが大事なところです。

 2020年は今日でおしまいです。
 たらたらと愚痴を聞いていただいてありがとうございました。
松尾

パンと卵のある静物
1865 ポール・セザンヌ
『パン籠〜屈辱より死を〜』1945年サルバトール・ダリ
スタンラン ≪パン屋の少女≫ 1895

100年マンションの幻想

 100年マンションは響きのいい言葉です。
 その頃は自分はいないけれど、次の世代がきっとうまくやってくれるだろうと勝手に幻想を抱いている人が多いのですが、今の世代がしっかり準備を始めていないと、次の世代には厄介な負の遺産となるかもしれません。

 人間だって50歳も過ぎれば、化粧をするだけではボロは隠せないのと同じで、骨格も筋肉も強くして、臓器も血管も検査治療しなければ元気な体は維持できません。
 建物を適時適切な維持管理をすることなく放置すると、居住者は快適性を求めて去って行きます。空室が目立ち、そうなると査定も厳しく、売却したくとも希望価格には程遠く、部屋を借りたいという人もいなくなります。
 荷物やゴミの放置が始まるとスラム化の合図です。
 しかし、部屋を売却をしない限りは区分所有権は存在するので、誰も住んでいなくても、固定資産税や、毎月の管理費・修繕積立金は払い続けなければなりません。

『流行性感冒』(内務省衛生局1922年)

 では、マンションを建替えしてはどうかという話も、建替えの増床利益や商業ビルへと勝算が見込める立地でなければデベの手も上がらず、資金力の乏しい組合単独では難航するのが見えています。
 建物を解体して敷地を売却精算したいと思っても、敷地が一等地でなければ、解体費用が土地代を上回り、住まいもなくなり借金が残るだけの可能性もあるのです。

『流行性感冒』(内務省衛生局1922年)

 マンションの供給過剰、人口減少の現状を理解しなければなりません。いずれ法も改正されて国が助けてくれるのではないかと思うのは夢物語です。
 築年数が高くても、魅力のあるいわゆるビンテージマンションは多く存在します。繰り返しになりますが、適時適切な維持管理を施していれば資産価値も保たれます。
 投資目的の区分所有者は、特に修繕積立金の値上に反対する人が多いのですが、目先の小銭を確保するのではなく、長く利益を得ようと思えば発想を変えて欲しいものです。

 挿絵に使用したポスターは、友人から紹介されたものです。スペイン風邪の予防のポスターだそうです。一生懸命さが伝わりますね。
 先ほど香港の周庭さん(Agnes Chow Ting)の代理人から、本人が書いた「気を付けてください!アグネス」というメッセージが届きました。あなたこそ囚われの身で、体に気を付けて下さいと言いたいです。
松尾



管理員さん気を付けて

 「地元の人たちへも顔を売っておいた方がいいよ」と理事長に依頼され、Aマンションの管理員のBさんが町会の会合に出ることになりました。
 理事長は忙しくて出られないのか、出たくないのか、毎月の会合や催事に費やす時間と労力は人によっては確かにヘビーです。
 管理員のBさんは隣の市から通勤しています。本来はその町内会に住んでいる人が対象なので、理事長は管理会社を通さずに直接管理員に無理を頼み込んだようです。一種のパワハラですね。(笑)
 後で理事長から聞いた話では、町会活動の毎月の参加について他の役員に依頼したところ、全員から「無理です。」と断られたようです。(泣笑)

ギュスターヴ・ドレ1832-1883
ウォルタークレイン1845-1915

ジェシー・ウィルコック・スミス
1863-1935

 新型コロナウィルス感染の心配もなかった2019年のこと、町内会での立場はAマンション代表である管理員のBさんは、町内会が催す盆踊りの櫓組み作業を手伝うことになりました。これで終わりではなく、盆踊りが終わった時にも呼び出され少人数で、櫓の解体作業を蚊に刺され泥まみれになり終了、解放されました。
 管理員のBさんは、町会の会合の中では発言せずにいたのですが、Aマンションの管理員であることを明かした後は、明らかに「下層民」の扱いを受けたことを感じたと言います。盆踊りが終わった後の汚れ仕事を回され、皆が打上げ会の時間には、解体した櫓の材木を町はずれの倉庫に納める作業を夜遅くまでヤラサレルはめになりました。
 いつも協力的でないAマンションだからということもあるでしょうが、Bさんはもうこりごり、元々運動不足解消のため管理員をしているので力仕事は平気ですが、上から目線で、段取りの悪い指示をする町会の役員たちを相手にするのに嫌気がさしたので、次は断るとのことでした。

 すべての町会とは言いませんが、町会は区や会員が支払う町会費等からそれなりの予算を受けての活動の中、おきまりのような催事を人をタダで労働させて行うのではなく、それ相当の対価を払わないと、あてにしていた人から当日キャンセルや途中抜けをされたり、責任感のない仕事をされたりしてしまいます。また、リーダーシップをとる人がいないと各自の目的意識があいまいで指示待ちが多く、緊張感も達成感も期待できません。
 今年は幸いと言えませんが、町会の会合も色々な催しも新型コロナウィルス感染防止のため中止でした。

 この機会に町内会役員だけが自己満足するような催事が必要なのか、打上げの会だけに「出席」する高齢役員が非常時でも何か役に立つのか、町内会の本来の仕事は何をするべきかを考えて欲しいですね。

 「~気を付けて」つながりで「赤ずきん」のイラストを並べてみました。
 挿絵の変化も見られますが、内容も最初の頃はみんな食われたり殺されたりの教訓めいた内容でしたが、狼だけ懲らしめるに変化、日本の童話では狼がもう悪いことをしませんと反省(笑)して終わります。
松尾

稚拙美

 都内Aマンションのエントランス、ドアの引手を握ったところ違和感というか痛みを感じました。
 公共性のある場所では、握りやすい丸パイプ等の握りバーが一般的ですが、Aマンションのものは特注のようで、バーが細く断面は正方形で角の面取りが少なく、バー上下の切り口は鋭角に尖っていました。
 バーの下端が幼児の顔や頭の高さなので、風の強い日はドアごとあおられて、角に強く当たれば骨まで突き刺さることもあるかもしれません。
 ここはデザイナーズマンションといって売り出されました。
 販売会社にとって良いデザインのマンションとは、他より高く売れることだけで、他との差別化という言葉を自分勝手に解釈しているようです。
 このドア引手のように、わざわざ「デザインしたんだぞ」と言いたいがために安全性を軽視した幼稚なデザインをされては、ウン千万を払う購入者はたまったものではありません。

アンリ・ルソー 「子供の肖像」1908年

 なんともインパクトの強い肖像画ですね、一生懸命な想いが未熟さを軽く凌駕しています。この稚拙な美しさは、あまたの美人画を価値のないものしてしまいます。
 モデルの子がこの絵を見て喜んだかどうかの記録は残っていません。(笑)
 以前の「不協和音」の投稿にもアンリ・ルソーが登場しています。表題の「稚拙美」とは技術的には拙く未熟でも、素朴さ純粋さ素直さが、かえって強く感じられる美をいい、幼稚とは違います。

 スペインの教会の彫刻を神への一途な想いで修復したものの、技術が伴わなかったため残念な結果になったというニュースがありましたが、想いだけでは稚拙美にはなれなかったようです。以前の似たケースが次の2点、各左がオリジナルです。ちょっと笑えます。

「Ecce Homo(この人を見よ)」という題の19世紀の壁画

バルトロメ・エステバン・ムリーリョの作品の複製画

 中国では清朝の絵画を修復したところ、どう見ても別人の作品になったことがありましたが、現地では良くなったと、我々とは違った評価がされています。

 多くの漢字を意味のない記号に変えてしまっても平気な(新しい価値観の?)文化を持つ国ですから、修復の意味を理解するのは難しいです。

 他国の悪口と一緒に世界中にバラまいている「平和の少女像」なるものがありますが、彫刻(芸術)作品としては二流にも届きません。

清王朝時代の壁画(上がオリジナル)

 敵を殺してなんぼの時代のことを、現代の基準で謝罪と賠償を語ること自体かみ合うわけがありませんが、もしこの像を一流作家が手掛けていたら、世界中の人の心を動かし、日本人の受け止め方も少しだけ違っていたかもしれません。 
 この像は初期の単体からベンチになり、今は椅子が二つあり空けた一つは、未解決のまま亡くなった戦争犠牲者と痛みを分け合う場という理由を後付けしています。像の隣に座っての記念撮影は、観光地にある顔出し看板となんら変わらないレベルです。
 正義連は潤沢な資金をケチらずに、もし一流の彫刻家に依頼していれば、正義連ならぬ実はイカサマ連だったことも未だバレていないかもしれませんね。
松尾

「弱き者の戦い」

 最近、マンションの専門家といわれる方が、コロナ禍での管理組合活動において三密を避ける方法の一つとして、オンライン総会・理事会と盛んにはしゃいでおられます。役員や管理会社のフロントは安全面でメリットがあるのですが、現場で人に接し、人が触ったモノやゴミに触る仕事の清掃・管理員について、感染予防のアイデアを出せる専門家は皆無です。
 オンラインの方法等は、すでに自然発生しているので、マンションの専門家が今更騒ぐことではありませんね。

https://www.nasjonalmuseet.no/en/collection/object/NG.M.01867
ムンク《スペイン風邪にかかった自画像》1919年

 感染防止には、私は時短が手っ取り早い方法かと思いますが、それどころか「取っ手は、管理員に1日3回消毒させています。」等の掲示をよく見かけますので、管理会社(管理組合)は反対に管理員の仕事量を増やしてしまっています。
 この時節、清掃・管理員を募集すれば応募はいくらでもあり、使い捨てでよいという考えで目を瞑っているのではないでしょうか?原発事故の時にホームレスを集め、高給を払い現地で危険な作業をさせたのとよく似ています。似ていないのは管理員は高給ではないところです。(笑)

 一般的なマンションで、管理員が3連休した時は、マンションのゴミ置場がどのような状態になっているか、居住者は分かっています。今、仕事を失った人を清掃・管理員に採用しても、社会が落ち着くと必ず転職されてしまうのは分かりきったことです。

 私がアドバイザーをさせていただいている自主管理のマンションでは、新型コロナウィルス感染が始まった頃から、清掃員の負担が明らかに増えているため、理事会は清掃員への支払いの増額を予算化しました。言葉での感謝も必要ですが、本人が不安・不満を持って働く中、「理事会はちゃんと見てます。」と対価により評価をすることは、今できる最高のねぎらいだと思います。

https://munch.emuseum.com/en/objects/2858/selvportrett-etter-spanskesyken
ムンク《スペイン風邪後の自画像》1919年

 象徴主義/表現主義 エドヴァルド・ムンクの《叫び》は1893年に描かれ、1919年(56歳)に、スペイン風邪になった自分の姿と回復した自画像を描いています。
 見るからに体も心も少し病んでいるように見えるムンクは、実際は感染しておらず、パンデミックの中で自分の思い込みでなかったのかという説もあるようです。
松尾 

まだ紙にこだわりますか?

 都内、大きなAマンションの集合郵便受け、脇に置かれた不要チラシ入れには、さっき管理員が投函したばかりの「区報」が早くも捨てられています。翌朝数えたところ、40%以上が捨てられていました。
 目の前で捨てられるのは、割り切れない思いでしょうね、午前中に掘った穴を午後には埋める・・・まるで囚人労働のようです。(泣)

 区報を配るのは区から予算を受けている町会の仕事ですが、このマンションでは月初めに町会から大きな束が届けられ、管理員が配っています。ポスティング作業は区報だけならともかく、地元誌や町会のお知らせも「ついでに」ということでしょうか3~4種類を配るには30分以上も時間を費やしています。

George Nelson

 紙代や印刷代、配る手間と捨てる手間、マンションでは区報等は掲示することで十分ですね、もちろん区のWEBでも対応ができています。
 また最近では、郵便受けに無理やり押し込まれている分厚いタウンページも多くはそのまま捨てられていました。
 タウンページは受付カウンターに一冊あれば間に合いそうですね、時々入っているポケットティッシュも、コロナ禍ではできるだけ触りたくないので可燃ゴミになっています。
 我々が向かうべき方向とは違うような、やっていることがチグハグな気がします。
 週一回の資源回収日、その昔に比べると新聞の量は激減しました。区民はそれぞれ別の形で毎日の必要な情報を得ているということです。

 管理組合活動の中で発生する膨大な書類はデータ化したくても、どの書類ならデータ保管してもよいのか、20数年前の「書類保管に関する細則」があっても、今は適合しない書類が山ほどあります。

George Nelson

 またスキャニングはできるとしても、原本を捨てないと書類は減らないので、細則を追加、変更させてからでないと作業に移れません。明らかに不要な書類を長老役員の一声(超法規)で捨てられなくなったりすることもありそうですね(笑)。
 紙のサイズがマチマチだとスキャニング等のデータ化には膨大な時間がかかりそうです。そもそもその作業は誰がやるの?という大きな問題があります。

 総会で、すべての議案が全会一致で決議された出席票の原本を「永久保存」する必要が本当にあるのか、過去の工事の3社見積書のうち採用されなかった2社の見積書や会社概要等を保管している意味があるのか、交換する前の設備機器の「特に異常ありません。」と書かれた点検表の原本を見たい人がいるのか等、自分の一存では捨てられないまま時間だけが経過している場合が多いのではないのでしょうか?
 管理規約・使用細則はこれらの問題に限らず、時代により柔軟に変更や追加、または削除をしておかないと未来の我々の首を絞めてしまいそうです。
松尾 

マンションの歩き方

 Aマンションでは、共用廊下の床に溜まった雨水が乾いた後に、カビのような黒い輪染みが残っていました。
 マンションの共用廊下や階段、バルコニーの床には、長尺塩ビシートと呼ばれる塩化ビニル樹脂系で表面をノンスリップに加工した仕上材がよく使われています。
 耐候性、耐久性が向上、現場加工が容易で比較的安価、施工も短期間で可能です。以前は安っぽさが気になりましたが、今は用途により様々なデザインが用意されている仕上材です。微妙な勾配にもなじみ良く、シートの溶接も貼り仕舞い(見切り)も難しくありません。
 特に種類の選択範囲の広さから、店舗等のデザイン性や施工スピードが強く求められる改装工事にも扱いやすい仕上材料です。廃材焼却時に発生するダイオキシンも焼却装置等の改良でほとんど問題がなくなりました。

 Aマンションでは、経年により床下地とシートの間に雨水などが浸入し、接着が剥がれてシートが縮んで波打ち、そこに雨水が溜まる乾燥するを繰り返す状態でした。
 問題は汚れだけでなく、高齢になるにつれ歩くときに足が上がらない傾向があるので、廊下のシートの波の膨らみにつまずいて転倒する危険性があります。
 また専有部分ドアの前のシートが波状になってしまうと、ある日、外に出ようとドアを押したらシートが邪魔をしてドアが開かない・・・少なくともドア(底裏)と床シートがズリズリ擦れることは考えられますので、居住者には大きなストレスになります。

「ヴァージナルの前の二人(音楽の稽古)」1662-65頃 ヨハネス・フェルメール

 貼り替えがすぐにできない場合は、床下地とシートの間に水分を含ませない状態、つまり問題箇所は剥がして乾燥させておいた方が健康的であり、事故が起きないための最低限の処置と思います。
 
 床の材料は、土を踏み固めた土間、石の産地威なら敷石、粘土があればタイル、木が豊富な地域なら下地組みをしてフローリング、イグサが採れる地域では畳など、気候風土によって発達してきました。

 主題のある絵画の中で、白黒の大理石の床が強調されているこの作品は、モノが多い割には静謐な空気を感じます。
  この絵の床が板張りであったりすると、静謐感も清涼感もなくなりボケた印象になっていたでしょう。

 フェルメールは左側から光が入る同じ構図を数点残していますが、輸入品であろう大理石貼りの床やペルシャ絨毯が配され、柔らかな光が入る部屋で音楽教育を受けられる環境、まだピアノのなかった時代(関ケ原の戦いの頃)にヴァージナル(小型チェンバロ)を所有しているオランダの裕福な家庭であったと想像できます。チェロのような形の弦楽器もみえてますね。

 「真珠の耳飾りの少女」の背景には深い色を置くことで、少女の表情を際立たせ、この上なく印象深い作品に仕上げています。
 髪を隠し眉も省略して目とターバンを強調しています。
 父親の毒牙にかかりそうになった少女が抵抗して父を殺してしまい、そのため死罪になったという異国の少女の話を伝え聞いたフェルメールが、想像の中で描いたといわれています。

『真珠の耳飾りの少女』ヨハネス・フェルメール 1665年頃

 当時は真正面を向いた肖像画が当たり前の時代に、頭を45度、目を45度振り向いた構成は斬新です。瞬間の表情、少し開いていても清らな口元と、澄み切った目に寂しさを感じます。
 少女が頭にターバンを巻く風習は、どこの国の衣装なのか分かりません。
 実在しないだろう大粒すぎる真珠(錫という説もありますが重すぎます。)、高価なラピスラズリ(瑠璃)を配合した絵具のターバンの青色、またその青を強調にするための補色の黄色の配色など、トロニー(モデルがない)であることが解ります。
 耳飾りの大粒の真珠は、不幸にも未来を絶たれた少女へ、せめてものフェルメールからのプレゼントかもしれないですね。
 謎を多く残したまま後世に伝えたい作品です。
松尾

Rau ja pai duay gan.

 2016年に逝去されたタイ王国のプミポン・アドゥンヤデート王の命日である10月13日、「聖なる日、偉大な王」と、タイから送られてくるメッセージにはどれにもトップ表示されていました。

 やり場のないコロナ禍の不満の矛先になっているのか、息子のワチラロンコンが国王の位に就いてからは国民の評判は下がる一方です。
 そしていつまでも軍事暫定政府を続けるプラユット首相の独裁政権の批判を込めて、前国王を高く尊び賞賛するメッセージが目立ちます。

 首都圏の国立大学のうち、秀才が集まるマヒドン大学が国際ランキングのタイ最上位です。そして元々「王族貴族の教育」のために開校され、今もエリート層の多くが卒業するのがチュラロンコン大学です。

フランシスコ・デ・ゴヤ「カルロス4世の家族」1801年https://ja.wikipedia.org/wiki/カルロス4世の家族#/media/ファイル:La_familia_de_Carlos_IV,_por_Francisco_de_Goya.jpg
 ゴヤは宮廷画家ながらも、この絵の中でスペイン王室の腐敗と衰退を表現することで、精いっぱいの抵抗をしています。
 愚鈍な王を押しのけ、絵の中央に権力をほしいままにする性悪の王妃が立っています。
 顔つきが面白いですね。

 これに対して「広く庶民層への教育」が目的だった難関のタマサート大学があります。

 最近の政権打倒や王室制度改革のデモや集会をリードしているのが主にタマサート大学の学生です。
 この大学でチアリーディング部を率い、ミス・タマサートにも選ばれたリケ女のปุณยวีร์ จึงเจริญが卒業後、故郷のチェンマイで人気アイドルグループのキャプテンをしています。立場上、政治的発言ができないと苦しい胸の内を発信しています。 

フランシスコ・デ・ゴヤ「1808年5月3日 プリンシペ・ピオの丘での銃殺」
 侵攻してきたフランス軍が、抵抗するマドリード民衆の多くを銃殺刑に処した有名な場面です。
 歴史画としても貴重です。
エドゥアール・マネ「皇帝マキシミリアンの処刑」
 フランス(ナポレオン3世)がメキシコに出兵し、武力で墺皇帝の弟のマキシミリアンをメキシコ皇帝に即位させましたが、メキシコ先住民らの巻き返しを受け、銃殺刑となった場面です。

 その彼女も歌うコロナ禍の医療関係者への感謝と市民を勇気づけるためのหัวใจ๋ใกล้กั๋น(Touch By Heart・心で触れて)という歌、その歌詞の一番最後が、「rau ja pai duay gan=一緒に歩みましょう。」という意味になります。
 これが今日の表題です。

 タイは静かにコロナ禍の終息を迎えましたが、鬱積した不満が軍事政権打倒、王室制度改革という活動のエネルギーに置き換わった感があります。

 バンコクは通称で、本当は長い名前です。その一部を訳すと「戦争のない平和で、九宝のように美しい偉大な天使の都」という意味になります。
 戦争のない天使の都に、これらの絵のようなことが起こらないことを願うばかりです。
松尾
 

フェイクフォーレスト

 この日曜日(10/11)、武蔵小山にあるAマンションの定時総会にアドバイザーの立場で参加させていただきました。
 マンション内の集会室では狭く、新型コロナウィルス感染防止上、三密になるのでダメということで、新築の駅前タワーマンションのモールの多目的室を借りることができましたが、そこでも通常定員の半分までと人数制限があり、間隔を空けて着席し、換気を保ちながらの開催でした。
 
 終了後、この新築タワーマンションのモール内2Fと3Fの植栽を見学したところ、まずムクゲ、ヤマボウシ、ソヨゴの若木が植えられ、この3種は半日影でも育つという共通点があります。和風が似合う雌ソヨゴは育つと赤い実を付けます。
 他に実のなるオリーブ、ザクロ、亜熱帯産のフェイジョアの3種を見つけました。フェイジョアの実は食べたことはありませんが美味しいらしいですよ、残念ながら直植えで陽当たりが良いならともかく、実を付けるまでの管理は難しいと思います。
 そして、まだ移植してから間もない弱っている木の幹や枝にグルグルとLEDライトのコードが巻き付けられストレスを与えているのが気になりました。

モール2Fから1Fへ降りるエスカレーターの両脇の店舗は空いています。

 それよりもっと気になるのがモールにまだ空き店舗があることです。コロナ禍などの事情はあると思いますが、このモール店舗のプランにはチマチマ感があります。
 賃貸側のコストプランのいじくり過ぎの結果でしょうか?

 この絵はダ・ヴィンチの初期作品(受胎告知)ですが背景には、まるで剪定したばかりのような真っすぐで左右対称の樹木が描かれています。

レオナルド・ダ・ヴィンチ(受胎告知)1472-1475年頃

 自然の厳しさを象徴する樹形を見慣れている日本人はこの背景の樹木は不自然だと思ってしまいます。

 しかし、地中海性気候のトスカーナの風景を実際に見ればこれが自然だと納得してしまいます。
松尾

フィレンツェ ウンガネッリ・ピアッザ

防犯カメラはみた。

 Xマンションでは以前、管理員の勤務が3交代制、24時間勤務(仮眠あり)、つまり3日に一度、勤務が回ってくる体制でした。
 マンション内に時間貸しの来客用駐車場が4台分あり、そこは居住者への訪問者や出入業者などで頻繁に利用されています。
 時間単位の駐車場利用料金を管理員が受け取り、日々台帳に記入し、現金を当番の役員宅へ預けていました。
 管理員は車の出入りのために長い時間の離席ができず、時には予約もあり、時間の確認や集計、次への引継ぎにも時間を取られていました。
 ワンマン理事長が長く続けている築古の重い雰囲気のマンションでした。
 
 マンション管理会社から新任フロントが現場へ送り込まれました。その新任フロントの管理組合への提案の一つが、金銭事故防止のため、管理員の現金取り扱いをなくすことでした。
 まず時間貸し駐車場の利用状況を把握するため、管理員の日誌や台帳を調査し始めたところ、曜日や天候には関係なく、3日置きのA管理員の勤務日だけ使用回数が少ないことが判明、追及するとA管理員は利用料金の着服を認めました。
 管理室カウンターと駐車場の画像は防犯カメラに記録されているので、言い訳できないと思ったのでしょう。ただ当時の防犯カメラの再生速度が最大4倍速という骨董品で、もし犯行を認めなければ証拠を探すのにはとてつもなく膨大な時間がかかっていたと思います。(笑)

 3回に1回程度、駐車場利用料を着服していたようですが、業務上横領罪というよりも「ネコババ」とか「くすねる」という言葉が合っているような気がしますね。
 問題のA管理員は、ワンマン理事長に取り入って勝手なことをするので、他の2人の管理員からの評判は良くありませんでした。
 理事長の威を借るタヌキとでもいうのでしょうか?

《印象・日の出》1872年 クロード・モネ

 そして今度は、B管理員が勘違いにより居住者の女性とややこしい関係になり辞職、C管理員は健康上の理由で辞める事になりました。同じ頃、ワンマン理事長が入院、マンションには戻ってくることはありませんでした。

 新任フロントの提案の二つ目は、管理員の24時間体制を止めることでしたので、この機会を逸することなく勤務体制の見直しを提案、組合員の理解もあり、暫定ながらも管理員は日勤体制へと変更、来客用の駐車場はすでに準備を整えていたコインパーキング会社へ委託しました。
 続いて機械警備の導入、防犯カメラの入替と増設を行い新体制が整いました。
 
 管理員の人件費3名分の大幅減額などは、組合員にとっては目から鱗が落ちた感があったようです。
 日勤の管理員は時間貸し駐車場の管理事務作業から解放されたので管理室に常駐する必要も無くなり、日常清掃を兼務できるようになりました。
 タバコ臭い仮眠室と、ゴミがギッシリ詰め込んであった管理用倉庫を片付けて多目的室へと改装、管理室の照明もすべてLEDへとスッキリ生まれ変わった印象です。
 ワンマン理事長を恐れて近寄らなかった居住者から意見が出始め、これからは組合活動も活発になるのでしょう。
 
 この新任のフロントの改革提案と実行力がなければ、組合も管理会社もネコババに気付くこともなく、古い体制を守って余計な支出をダラダラ何年も続けていたかもしれません。
 特筆すべきは、この新任フロントはスーツがとても似合う女性のマンション管理士であることです。

 今世間では、見苦しいほど必死になって既得権を守っているように見えてしまう日本学術会議なるものが話題になっていますが、外野の私は攻防戦を面白く見ています。
 世の中で必要とされないのに上から目線の肩書だけの人種、マンション管理組合の中でもこういう類が理事長になったら理事会も組合員もそして管理員も苦労しますね。

 題目とは関係がありませんが、この絵はル・アーヴルという港が描かれています。モネの生まれ故郷です。ここから対岸のイギリスのポーツマスまで船が出ています。
 この絵の「印象」という題名が印象派の名前の基になりました。
松尾

商社になった管理会社

 最近の管理組合からの相談にフロントの対応力の問題がありました。
 マンションの窓口担当であるフロントは管理業務主任者という国家資格が必要な職種で、管理全般に精通し、総会や理事会の準備、進行などを担うのも仕事の範囲に入ります。(組合により違いがあります。)
 フロントにはマンションにトラブルが発生した時の現場対応や、計画工事の調査などの現地作業もあります。 

https://decouvrirlendroitdudecor.blogspot.com/2015/03/une-alcove-pour-dormir.html

しかし、一部ですが大手のマンション管理会社では、フロントが現場に向かうことはほとんどなく、指定の下請け会社が孫請け業者へ指示、組合宛ての報告書はメーカーなどが現場で写真を撮って作成しています。
 伝言ゲームの結果のような正確性に欠ける報告内容や、ムダな時間経過、復旧工事は中間業者のマージンのため費用も比較的高額になりがちです。

 二流商社やブローカーのように、業者を動かすだけで仕事をした気分になっている一部の大手管理会社のフロントは、組合員に対しても自分が元請けである立場を忘れていることがあります。
 組合から指摘されると「指示したのに業者がやってなかったんです。すぐやらせます。」とか「管理員が業者に伝え忘れたようです。」など、自分は悪くないような言葉が出てしまっています。
 このような悪い習慣から抜けられないのなら、管理組合は大手の管理会社へ委託する意味はありません。
 それでもどうしても大手のブランドが好きなら別ですが。(笑)

 机上で迷ってるなら現場に立ってみること。これはどの業界でも共通している言葉と思います。
 フロントは現場に通い、誰よりも現場をよく知っている立場にならないと、組合へ良いアイデア提供はできないはずです。
松尾


みんな大好き「宅配ボックス」

 「置き配でお願いします。」とか「宅配ボックスに入れてください。」と、Aマンションのエントランスのインターフォン越しに高いトーンの声が聞こえてきます。
 在宅していても宅配物を対面で受け取らない人が多い上に、コロナ禍の影響で宅配サービスの需要が高まり、宅配ボックスの利用も増えています。
 困るのは郵便受けにもドアにも表札を出していない人がいるので、受け取り名を確認ができずトラブルになることもあるようです。
 この人たちは戸建てに住んでも表札は出さないのでしょうか?
 今やお歳暮お中元が過去の風習となる中で、違うスタイルの様々な宅配サービスが定着しています。
 小さいものや一人前の出前など、申し訳なくて配達を頼めないオジサン世代には理解が難しいところがあります。

 近年では宅配ボックスの中でゴルフバッグ用ボックスの利用はほとんどなくなりました。他の3~6ボックス分のサイズがありますので交換した方がいいですね。
 集合郵便受けは盗難防止などの理由で受け口が郵便物厚み限度の3㎝より薄く作っている(2.5㎝程度)ため、本来は郵便受けに入るメール便、ゆうメール、レターパックが入らず、宅配ボックスを利用することになりますます不足する状況になっています。
 省スペースや防犯を優先した郵便物が入らない郵便受け、利用されないゴルフバッグ用の宅配ボックス、他にもマンション施設では、上段が全く使えない上下2段式駐輪ラック、子供載せ自転車が並んで駐輪できない駐輪区画、ゴミが入ると持ち運び不可能な90ℓのポリバケツの採用など、新築マンションなのに何故か旧態依然とした設計資料のデータが採用されています。

Portrait of the Postman Joseph Roulin 1888(Vincent Willem van Gogh)

 すぐに満杯になってしまう宅配ボックスの数では居住者にストレスを与えるだけです。マンション共用部分でよく使うものはノンストレスであるべきです。
 マンションの設計者は、脳にこびりついた骨董品のような設計資料(データ)を信奉するのではなく、変化する時代の新しい情報を取り入れ、そこに居住する人とその未来のことを考えて計画してもらいたいですね。

 この絵はボストン美術館が所蔵するゴッホの作品、町の雄弁な思想家でゴッホの理解者であるルーランの肖像画です。postman(郵便配達員)になっていますが、小さなアルルの駅で郵便取扱いの仕事をしていたようです。
 首と上半身の軸を少しずらしカクカクした輪郭線はルーランの性格を表しているのでしょう。曲げていない指は職業柄、慢性の腱鞘炎と想像します。椅子のアームが片方しかなく背もたれのカーブがどうやってつながるのか不思議な絵です。
松尾

フンをしない金魚がアートなの?

 「アートアクアリウム美術館(生命の美を感じる、神秘的なアートの世界)」という暗い部屋で金魚を入れた水槽に色付きライトアップをしただけの「アート」を観ました。
 アクアリウムアーティストなる人物は自称「生態(金魚)を知り尽くしている。」らしいのですが、魚類に詳しい来館者から魚の病気、健康状態や管理の不備について指摘があり、これに見苦しいほどの言い訳をしています。この怪しいイベント屋さんのために文化庁は1600万円の支援をしています。

アンリ・マティス「Goldfish」

 お祭りですくった金魚を洗面器に入れておいたら死んでしまった幼い経験は無駄にはなりませんが、日本の美意識を勘違いしたような税金の無駄使いはやめて欲しいですね。
 この時代、面白いコトはSNS等ですぐに注目拡散されるので、一歩遅れの企画への補助金は要らないと思います。
 私が気付いたのはフンをぶら下げて泳いでいる金魚が一匹もいなくて不自然、つまり何日間も絶食状態でフラフラ、お腹はペタンコでした。
 とても「生命のダイナミズム」など感じられません。
 

 江戸情緒なのに京の光琳模様を使うなどデタラメで、演出が一昔前の外国人向けの土産物屋のようです。
 友人が外国からの客人をイルカショーに連れて行ったら、abuse show(虐待ショー)と言われちゃったよと話してましたが、金魚の虐待ショーで「江戸情緒のおもてなし」など世界では全く通用しない時代になっていることを文化庁は理解しているのでしょうか?
 また地方では、あいちトリエンナーレのように偏向な部分を得意げに掲げて「地方の焦り」をさらしてしまうのではなく、まず世界標準に近づきましょう。

 この絵の色彩は、正攻法で金魚の赤を補色の緑で囲んで強調しています。赤の同系色の薄ピンクを周りに配置し、濃い緑でさらに赤が際立つようにしています。凡人なら、もうこれ以上の色は使えないところですが、右上から中央、左下へ斜めに人工的で明るいターコイズブルーを配したことが、マティスを色の魔術師と呼ばせる所以です。
松尾

地雷マンション

 義母と同居することになったAさんは、少し広めで手ごろな中古マンションを見つけ購入しました。
 建設、販売した大手グループの関連社員が多くを所有、または社宅で居住している中規模のマンションです。管理会社の名前の頭にもグループ名がついています。

 入居後、大規模修繕工事の実施と修繕積立金の値上変更を議案とする臨時総会の知らせを受けました。
 臨時総会では、大規模修繕工事をグループ会社が実施することを承認するだけで、修繕積立金の変更は今後適時適切に修繕工事が行えるように倍額に変更することの報告があり、質疑もなく決議されました。
 管理組合の役員はグループ会社の組合員で占められ、組合運営は完全に大手グループに牛耳られているのが判明しました。

Victor Brauner
Femme regardant au loin
(見送りする女)

 マンション販売当時の売れ残りをグループ各社に販売協力(押付ノルマ)があり、グループ特典割引や住宅購入補助金を受け、販売価格より割安で購入したようです。

Victor Brauner

 さらにグループ居住者は、この度の修繕積立金値上については住宅特別手当等の名目で、金額の大部分を賄われています。
 その費用の捻出元はグループが施工する大規模修繕工事の利益です。
 他社と競合することなく、工事価格の交渉も比較もなく、指名で請負ったグループの工事業者から、利益の一部を戻されている構図でした。

 

 つまり、組合員は割高な修繕積立金や管理費を納め、グループ会社が割高の修繕工事や点検作業を実施し、余剰利益をグループ内の居住者へ間接的に還元することで、グループ以外の区分所有者は、グループ内の区分所有者の負担すべき金額をこの先ずっと払い続ける恐ろしいシステムでした。

 証拠がないのでどこまでが本当なのか分かりませんが、区分所有者が一グループ企業に偏っているマンションは避けた方がいいということになります。

Jardiniers(庭師)
  Victor Brauner

 以前、元地権者のファミリーが多く居住している等価交換のマンションでは、他の区分所有者を間借り人のような扱いをすることもありました。区分所有権を理解していてもオーナー気分が抜けないのですね。

 このシュールな絵を残したヴィクトールブラウナーは昔、片目がつぶれた気色の悪い自画像を描いています。その後、事故で自身の片目を失ってしまったのですが。昔描いた絵が予言していたかのようです。作品よりもそのことで有名だったりします。テクニックを持っている画家よりも、ストレートに普段は使わない心のどこかに届く絵だと思います。
松尾

平和のフン害

 平和の象徴が2羽、Aマンションの屋上に仲良く並んでいます。遠くから見ていると、機械室の換気扇のウェザーカバーの中に入り込んだのは間違いないのに、換気扇の部屋側からは姿が見えません。

 不思議に思い内側から換気扇を外してみると、ウエザーカバーと防火ダンパーの狭い隙間に入り込んで2羽のヒナを育てていました。
 これではカラスも猫も入れません。でも炎天下、鉄製カバーの中は高温になりその上、定期的に換気扇が作動するのでプロペラが至近距離でぶんぶん回る危ない最悪の環境だと思うのですが、それでも子孫を残す本能はすべてにも勝るようです。

パブロ・ピカソ

 カバーの中に侵入できないようにネットで塞ぎ、巣を掃除してヒナは専門業者が引き取り、ハト忌避剤をあちこちに設置して終了しました。
 夏の終わりの汗かきオジサンの体験でした。 

パブロ・ピカソ

 動物は確保できる食料が減少すれば出生率も比例します。パン撒きジイサン、餌やりオバサンになぜ野鳥に餌をやることがいけないのかを説くよりも、また鳥獣保護管理法の不備を嘆くよりも、どうやって自分のマンションに寄り付かせないかの努力をするまでです。
松尾

 

                    

自主管理の達人

 不動産業界でマンションの専門家と呼ばれている先生がテレビでマンション管理について話していました。
 話は平凡な内容でしたが、司会者の自主管理とはどういうものですか?との質問に対してこの先生が答えたのは、「メリットは管理費が安く住民同士に共助精神、連帯意識が強い。デメリットは、清掃やゴミ捨て当番が回ってくる。休みの日には住民同士で植木の世話やペンキ塗りをしなくてはならない。
 そのため不動産としての資産価値は低く、購入はお薦めできない。」・・・?
 これはいつ頃の日本の話でしょうか?戦前の隣組?

ルネ・マグリッド「ゴルコンダ」1953年

 私は自主管理マンションのアドバイザーをさせていただいていますが、この先生の言うようなことは何ひとつなく、管理会社を通さないだけで、点検や清掃、修繕工事等は専門業者へ分離発注しています。つまり管理会社へ全部委託しているマンションと基本的に変わらず、清掃も行き届いています。

 違うところは、理事会がビジョンを持ち、無駄を省いているところです。その分、修繕積立金は一定以上確保できています。
 このような古い固定観念を持つ先生をマンションの専門家として登場させているメディアが不勉強ですね、自主管理を自治会や町内会と勘違いされてるのでしょうか?
 残念なことにマンション管理士という制度、職業があることの紹介もありませんでした。

 このイラストは、67年前に描かれています。どこにでもいるような紳士が浮遊(あるいは落下か上昇)しています。固定観念を軽々と飛び越えているところが素敵です。見る人をシュールレアリスムの世界に最もたやすく連れていける画家と思っています。
松尾

不協和音

 Aマンションは屋上(共用部分)の一画に携帯電話のアンテナ基地局を設置するため、通信事業社と賃貸借契約を結び、賃料収入を得ています。
 ある日、管理組合理事長宛てに課税対象(不動産貸付業等の収益事業等)に関わる調査書が税務署から送られてきました。

建物の区分所有等に関する法律【区分所有法】
(共用部分の負担及び利益収取)
第十九条 各共有者は、規約に別段の定めがない限りその持分に応じて、共用部分の負担に任じ、共用部分から生ずる利益を収取する。

 Aマンションの管理規約はこの条文通りに記載されていますので、収入は各区分所有者へ分配しています。そのため課税対象は管理組合ではなく区分所有者一人一人であるとの見解です。もともと管理組合が所有する共用部分や敷地はありません。国税、地方税の過去5年間の税金と遅延金ですが、区分所有者が納税する場合は、持ち分比で分配すると戸当たり年間20万円を超えないため、給与や年金収入だけの区分所有者は納税の対象者になりません。 

[参考] マンション管理組合が区分所有者以外の者へのマンション駐車場の使用を認めた場合の収益事業の判定について(照会) https://www.nta.go.jp/law/bunshokaito/hojin/120117/besshi.htm#a02

 この納税に関して、各地の税務署や関係者に見解のバラつきが見られました。この不協和音が生まれた原因が、国税庁が分譲も個人所有マンションも課税対象として十把一絡げにしたわけではないと思いますが、その後マンション内での収益事業について「居住者を含めた全体を収益事業として認定する可能性もある。」と脅しをかけています。まるで特殊詐欺師が使う「権威に従わせる」やり方を連想してしまいます。

アンリ・ルソー(飢えたライオン)1905年

 Aマンションが管理組合(法人税法上、人格のない社団)として納税する場合は、先に管理規約の変更が必要になります。しかしその影響を考えると区分所有者の理解を得るのは難しいと予想できます。

 管理組合に対しての情報は一方に偏らず、他の組合例や判例等を示し、法人税法上の問題点等も伝えないとマンション管理士の存在意義はありませんね。

アンリ・ルソー(蛇使いの女)1907年

 税関の職員をしながら絵を描いていたアンリ・ルソーは、素朴派、野獣派(フォーヴィズム)と呼ばれています。
 当時の保守的な風潮に反し、感性を強調した独特の世界を築き、ヘンテコな絵でも一度出会うと忘れられない作品を残しました。
 当時は作品を散々罵倒されながらも、後のシュールレアリスム等への道を勇気をもって切り開きました。

 当時の絵具は、混色するだけでも化学反応等で色が鈍化することがありますが、彼の絵が今も鮮やかさを保っているのは、混色に気を使った上に神経質なほど筆を管理していたと想像できます。遠景も緻密に描いていますが、性格は几帳面で正直、少し頑固というところでしょうか。
 絵にはジャングルや動物がよく登場していますが、彼は一度も南国へ行ったことがありません。
 パリの熱帯植物園の中でイメージを膨らませ、世界中の動物を連れてきてくれるルソーの世界です。
松尾

100日後に死なないイヌ

 Aマンションは犬猫等ペットの飼育が禁止されています。
 最近入居した家族が犬を飼っているのが判明しました。仲介した不動産屋は「いまどきペット禁止なんてしたら、商売なんないっすよ。」と自分勝手な主張をしていたそうです。
 物件の重要事項調査報告書には「犬猫等ペット飼育不可」と明記されているにも関わらず無視したことになります。悪質な不動産業者は、売買の残金が回収できれば、その後にトラブルになろうが全くどうでもよく、札束を数えているだけです。

伊藤若冲「百犬図」

 理事会はその入居者に飼育は一匹一代限りという条件で許可をしてしまいました。何故なら、すでに禁止を知りながら飼育している家族があり、その飼育条件に合わせたものですが、これが失敗でした。

 子犬ならこれから7年以上も生きるでしょうし、犬種、雌雄、年齢等を管理組合が管理していなければ、途中で犬種が変わっても誰もわかりません。堂々といつまでも飼育を続けられることになります。
 
 違反者から「迷惑料」を徴収すれば許可されたと都合よく解釈され、他の居住者も「なんだか協力金のようなもの」を払えば飼えるみたいと勘違いされてしまいます。不動産業者は、ペットは条件付き飼育可という物件データを入れてしまいます。
 子供に「なんで飼っちやダメなの」と質問されたら説明が難しいですね。
 なし崩しで「飼ったもの勝ち」の状態では、ペットに限らず他のルールも必ず緩々(ユルユル)になります。ルールが守られてないマンションは評価が下がり、資産価値を落としてしまいます。

 違反者は「ペット飼育禁止」だから購入したという多くの区分所有者の財産権を侵害していることの自覚はあるのでしょうか、ルールを守っている居住者にストレスを感じさせているだけでも犯罪行為です。

 他のペット飼育禁止マンションの例ですが、数名が飼育していることが発覚、一年以内に飼育をやめる約束をしましたが守られません。総会で催促すると「あなたはウチの子を殺せというのですか」等と、どのマンションでもお決まりの「殺し」文句が出て、いつの間にやらこちらが悪者になってしまってます。(泣笑)

 

パブロ・ピカソ「犬」

 オオカミやリカオン等のイヌ科の動物は、群れをなして縄張りの中を獲物を探して走り回っています。
 マンション内に閉じ込められている犬は本能を狂わされ、「愛犬家」という名のもと、自己満足や手軽に征服欲を満たす道具にされ犬の権利を奪っているのではないでしょうか。
松尾

 

アマビエに叱られる。

 先が見えない新型コロナ型ウィルス感染防止の努力は、まだまだ続けなければならない状況ですね。マンションの受付カウンターに消毒液を設置していることも多いと思いますが、「感染防止設備」が自然発生した2つの例を紹介します。

 中規模修繕工事中のAマンションでは、エントランス脇に工事関係者が使う手洗い場があります。学校帰りの子供たちがそこで手を洗うようになったので、現場監督がプッシュ式のハンドソープを設置したところ居住者、訪問者までが利用するようになりました。もうすぐ工事が終了するのですが、手洗い場だけ残して欲しいですね。

元祖「アマビエ」

 Bマンションでは、「ペットの脚洗い場」の貯湯槽の使い勝手が悪く、放置されていましたが、水だけが出るようにして、キレイキレイ(ハンドソープ)を置いただけで「人間の手洗い場」として復活しました。
 あったらいいモノが、少しの後押しで自然に「公認」された例でした。

 マンションのエントランス付近には散水栓や排水口がありますので、手洗い場を設けたらいかがでしょうか?種類によりますが消毒液は除菌はできてもしっかり石鹸で洗い流すことに比べ、コロナウィルスに対しては不十分と言われています。マンション内にウィルスを持ち込まれることを考えると、手洗い場は安くて効果のある設備だと思います。

祇園祭 山鉾巡行

 祇園祭は、平安時代に疫病封じのために始まりました。絢爛豪華に飾った山鉾は疫神やたたりを鎮めておくためと伝えられています。この夏、この行事が疫病が原因で中止になるとは皮肉なものです。

 これは、あのミレーの作品です。
 鎌を肩に死神が後姿を見せていることで人の心の奥深くまで突き刺さるように怖ろしさが増幅されています。さすがの構図ですね。

「死と木こり」Jean Francois Millet

 これはペックリンの作品、死神が「ペスト」をまき散らしています。思わず息を止めて後ずさりしてしまう場面です。
 倒れている女性のドレスの色は異質です。赤と白の色にはどのようなストーリーがあるのでしょうか?
 疫病は目に見えないので、不安や不満の対象を絵画で可視化し「悪いのはこいつだ!」と視覚的に情報共有することによって人々の恐怖をやわらげ、死神を憎むことで人と人の争いを避け、教会への不信の高まりを鎮める役割を果たしてきたと思います。

 ペストが去ったあと、ルネサンスが花開きました。
松尾

「ペスト」アルノルド・ベックリン

桜を切る会

 初夏、Aマンション入り口の両脇に植えられた桜の古木を見上げ、木漏れ日を浴びると空気が澄んでるような気がしてきます。
 道路側の桜は枝葉が電線に触れないように強く剪定、建物側の桜は葉っぱが窓を塞いで暗くならないよう大胆に剪定しているので、枝が片方に流れていて、枝振りは一九分けのオジサンの頭(「海原はるか・かなた」のはるかの頭)のようになっています。(笑)

202006山王 木漏れ日

 私は以前、造園会社が運営するスクールで、造園製図とプレゼン技法(透視図法)の講師を任されていたことがあります。 
 その時に現場の職人さんに造園実務や樹木の注意点等の教えを受け、それからはマンションの造園や街路樹などにも興味を持つようになりました。 

 Aマンションに限らず、大きくなる樹木が敷地や建物のギリギリに植えられている場合が多く、枝葉は敷地外にはみ出ています。将来を考えてスペースに余裕をみて造園を計画しても、販売側の都合で変更、施工期間も押されてしまうのが常です。設計者のコダワリ(○○の一つ覚え)で希少な樹木を指定され保証させられるのも迷惑な話ですね。

 Aマンションの桜の大木は、そのバランスの悪い形が負担大なのか、台風でもないのに突然大きな枝が折れて住民を驚かせました。造園管理をしている会社は、花が咲く量は今後少なくなり虫害も慢性化、弱っているので回復は難しく、桜を切って違う樹種に植え替えすることを勧めています。

 理事会で危険なため桜を切ることの承認を受け、総会で提案すると、「思い出がいっぱいある家族のような樹を切るのはかわいそう」等と桜を切ることに反対されます。こうなるのは想定内でしたが・・。

 桜の木はマンションの計画時点で、もう少しだけスペースに余裕がある造園計画が実施できていれば、根はコンクリートに邪魔をされることなく深く大きく張ることができ、人間の都合でイビツに剪定されることも少なく、寿命を全うする前に切られることもなかったかもしれません。 
松尾

「フウ」の実です。コロナ型ウィルスに似ているような・・・(泣)

迷惑系アーティスト

 Aマンション道路に面して設置されているパットマウント(地上用の変圧器)扉全面にスプレーで落書きをされてしまいました。英文字らしいのですが読めません。建造物損壊罪にあたります。朝になって気づいたので夜間に行われたのでしょう。
 犯人は、自分は本当はすごいんだぞという歪んだ自己顕示欲と征服欲を満たし、犯罪を背負ってるスリルが快感なのでしょうか?
 落書きをする人の心理は様々ですが、人のいない夜間に行動するところが大物ではないことを証明しています。暴走族が一人では行動できないのも共通していますね。

Shop Until You Drop by Banksy

 文化財に自分の名をナイフで彫る心理、何らかの環境の変化による到達感の興奮の中、未知な世界への不安、恐怖から逃れたい行動、犬を初めての場所に連れて行くとあちこちに縄張りを示すマーキングをしますが、これも本能から来る行動で、温泉の大浴場やプールの中に小便をしてしまう子供も同じで、幼い承認欲求の行動です。
 SNS上では、匿名でないと誹謗中傷を投じられない人もこの小便小僧と同じレベルと思います。

 落書きを放置したままだと「ウチは管理ができてないマンションですよ」と世間に示しているようなものなので、早急に塗装工事が入り見事ピカピカの新品のようになりました。保険が下りるようです。(施設賠償・汚損破損)

「バンクシーと知らず、清掃員が新作を消去」というニュースのタイトルに悪意を感じます。たとえ清掃員がバンクシーを知っていても落書きを消去するのが仕事であり、バンクシーも明らかにすぐに消される場所を自ら選んでいます。
 バンクシー独特の表現は、イラストを描いたその場所とその時の世界情勢、現象を愛と風刺を含んだ彼の思想に加え、世間の反応がセットになって価値が生まれています。

東京2003 by Banksy

 バンクシー自身も、形に残っている作品はただの落書きと認めていることでしょう。今回、地下鉄車内に描かれたのは「If you don’t mask – you don’t get. マスクをせよ、さらば与えられん」という題であることから、そもそも作品を消さなかった場合は見学する人で車内が密になってしまうので、それは彼が最も望んでいないことだと思います。後日、ウエブで公開されました。https://www.instagram.com/p/CCn800cFIbe/
 バンクシーは犯罪者であっても鼠小僧のようなところがあり愛される存在ですが、世界レベルでは認知されているとは言えません。
 バンクシー作品の価格だけで評価し、清掃員を無知であるように扱う各社の報道記者の薄っぺらさを感じます。
松尾

管理員また辞めたの?

 「お隣はまた新しい管理員になったよ」と知人は話してくれました。知人の住むマンションの隣には、中堅どころの管理会社が受託する60戸のXマンションがあります。そこの居住者の二人が、あの手この手で管理員に嫌がらせを繰り返し、あげくに管理員が気に食わないから解約するぞと管理会社へ脅しをかけてくるのがパターンとのことでした。すでに何人も交代しています。理事会は関わりたくないようで知らん顔をしています。

ミラノ・ガブリエレダンヌンツィオ通り

 先日、Xマンションは管理員だけでなく管理会社も変更になっていました。最近の傾向にありますが、管理会社の方から契約解除の判断をしたようです。
 管理会社は、管理員を新しく採用するには募集広告、面接、研修、採用に至るまで多額の経費がかかります。物件を担当するフロントも無理な要求に24時間追い回され、文句ばかり聞かされては仕事にやりがいは生まれてきません。管理員をなだめるのも大変だったと思います。自然、物件への足も遠のいてしまいます。

 管理会社もこれまでのように受託物件数や売上金額を競うのではなく、上質な物件を管理継続できていることが良い管理会社のランク付けになると思います。
 実はXマンションが大規模修繕を実施した頃に現場監督と話しをしたことがあり、工事の説明をして承認を受けているのに気に食わないという理由で何度もやり直しさせられたようです。2度とやりたくないと言ってました。何やら想像できますね。
 管理会社や工事会社に嫌われると、ウワサは末端から漏れるもので、ただの評判だけでなくマンションの価値を大きく落としてしまいます。その二人(女性)は他の居住者にとって迷惑な話ですね。
松尾

ホールは熱帯気候

Rousseau  Woman walking in exotic forest

 レトロで重厚な雰囲気を持っているAマンションで経費節減のため、共用部分の照明をLEDタイプに変更する工事を前理事長が主導して実施しました。この工事は完了後5年の期間に電気料が削減された分で、工事費用が賄える予定という計画でした。
 工事の前はシャンデリア球等で演出されていたホールやロビーのキラキラ感が工事の後にはなくなってしまい、「殺風景」と不評もあったようですが、電気料金の削減は翌月から順調に開始されました。

 汗ばむ季節になり、なぜホールのエアコンを使わないのか、新しく就任したばかりの理事長が調査したところ、LED工事を施工した業者がエアコン室外機だけを撤去して室内側の本体はそのまま、つまり作動しないエアコンが天井に埋め込まれているのでした。他にも蛍光灯の一部が交換されていない等、工事には不可解なところがありました。

 後で判ったのは、業者が電気料削減実績を多く見せるため、古くなっていたエアコンを停止させることを提案、室外機は撤去したものの天井に埋め込んである室内側の本体の撤去には、彼らの専門外である天井修復(内装)工事が必要になるためそのまま放置して完了したこと、蛍光灯を一部交換していないのは、非常灯兼用タイプの蛍光灯の代替品は他社からの仕入れ商品になるため、工事対象から外したのが理由のようです。
 自分たちに利益が出ないところは一切触れないという考えを徹底して工事を行ったのでしょう。これらの仕様について業者は、前理事長へ説明して承認を受けているということでした。
 Aマンションの管理会社(大手)は把握しているのか問い合わせたところ、自社工事以外は一切タッチしないという契約だそうです。
 工事を発注したのは前の理事長ですが、業者が主導する工事にはリスクがあることが良くわかります。
 工事内容によっては、その分野の専門業者に直接発注すれば中間マージン等の余計な経費がかかりません。しかし、仕様や見積書のチェック、工程や他の設備への影響等の全体を監理できる人が組合員にいないと、この工事のように業者のやりたい放題になってしまいます。
 
 営業に来たLED業者に前理事長が対応し、総会で工事予算承認を受けて実行したわけですから違反はありません。しかし結果的に説明不足、前理事長は他業者との見積比較や価格交渉をした形跡はありません。
 このAマンションは比較的安定して修繕費用が積み立てられています。問題があるとすれば区分所有者の無関心ですね。
 ほとんどのマンションは、修繕金を潤沢に積立ていることはなく、区分所有者の大事な修繕積立金です。何らかの工事が絡むプロジェクトにおいては、調査、問題提議の段階でマンション管理士を理事会等に参加させることをお薦めいたします。
松尾

コロコロ、タンブルウィード

 西部劇の決闘シーンのバックに主題歌が流れ、タンブルウィードと呼ばれる枯草等が丸くなって風でコロコロ転がっていくお決まりの場面がありますね。
 Aマンション共用廊下をコロコロ転がっているのは、ペット(犬)の抜け毛の塊です。休み明け、階段室の吹き溜まりには、たくさんの塊が集まっています。
 風向きによっては一か所のバルコニーに毛が重なり積もることもあり、その部屋の居住者(犬を飼っていない)から理事会へ強いクレームがありました。
 犬の換毛期は春秋の年2回あり、いつも手入れをしているワンコでも驚くほどの量が生え替わります。
 飼い主たちに注意すると、自分の飼っている犬(ウチの子)はちゃんと管理しているので、毛が舞う原因はヨソの子だと主張して譲りません。これは他のマンションでも同じ結果になるので、マンション共通のような気がします。(笑)

 

『Jeanne d’Arc, ou Jeune Bretonne au rouet』Paul Gauguin

 ゴーギャンの絵には数多くの犬が登場します。代表作の「我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか」に黒い犬が登場しているのはご存じだったでしょうか?犬が主役の「犬のある風景」という暗い絵や、仔犬の絵も描いています。
 左の縦長の絵は「ジャンヌダルク」という題のフレスコですが、ワンコの顔立ちから見てテリアではないでしょうか。
 ゴーギャンはこの作品(1889年)の前年に耳切り事件のゴッホと9週間アルルで同居していました。事件後別れ、寒いブルターニュで不遇な時代を過ごし、これら作品を残して原始の憧れや彼の宗教観から文明を嫌い、活動をタヒチへと移します。

『Pastorales Tahitiennes』Paul Gauguin

 タヒチの女性のそばには犬がよく登場しています。
 ブルターニュやパリで描かれた犬は首輪をしています。
 首輪も鎖もない伸びやかなタヒチの犬はゴーギャン自身を象徴しているのではないでしょうか。

 マンション室内で飼われるワンコは精神面でエラーがみられる場合が多いといわれます。これはこの度のコロナ禍での外出制限を経験して納得するところがあります。
 

 マンションのペット問題は、社会や時代の変化の要素も加わり複雑化しています。マンションではアレルギーやトラウマを持つ弱者を優先し守るのが第一ですが、文字で記したルール「ペット飼育細則」または「犬猫等のペット飼育の禁止」だけではコントロールできない状況になりつつあると思います。
 犬猫だけの問題だけでなく、人より長生きする可能性のある生き物(亀やオウム等)の管理組合としてその情報をどのように扱うのか等も課題になります。
松尾

オンライン理事会始めました。

 A マンションからオンライン理事会の招待を受けアドバイザーの立場で参加しました。
 これまでは、リモートワーク等を外から見ていて、顔を映す必要があるのかなと感じていましたが、実際にはパソコン、スマホ、タブレット等のモニターを通して出席者等の表情や声を確認でき、議案の微妙なニュアンスも顔を見て話せるので、通常の理事会と大きな違いはありませんでした。
 自宅からとはいえ適度な緊張感もありますが、今後新型コロナウィルス感染リスクが弱まったとしても、現地(マンション集会室)までの往復と交通費、時間も経費も有効に使えメリットが大きいと実感しました。外部に住んでいる役員も出席しやすくなり、議案によりますが、アフターコロナでも定着するのではないでしょうか。
 その日の理事会議案の一つ、取引会社からの毎月の請求書を郵送ではなく、メールに添付する形に変更させてほしいとの依頼の可否についてでした。

 他の業者の場合でも郵送されてくる請求書などは、すでに印鑑が印刷された書式を使っていることが多く、金額確認ができればプリントしなくても目的は果たせます。その上、紙に比べて保存整理が楽ですね。この小さな業界でも、この機会にペーパーレスが進みそうです。

アンディ・ウォーホール

 たとえ規模の小さいマンションであっても、管理室や集会室にインターネットの環境があれば、電子書類の受領や、インターネット環境を持たない役員でもオンライン理事会等に参加が可能になりますね。電子化への過渡期では、主導する役員ばかりに負担が大きい現状もあります。数十年間分の管理組合の書庫に眠っている紙の資料をこれ以上増やすことは避けたいですね。

 オンライン理事会を中華風にすると「在線(遠程)董事會」のような・・・国が推奨する標準管理規約での表現は、メール送付等を「電磁的方法」、紙面上の記録に代わるものを「電磁的記録」としています。 
 オンライン(リモート)理事会や総会を標準管理規約に追加して記載する場合は、無理になじみのない漢字を使うことなくカタカナを使って欲しいものです。
松尾

外壁タイルの信奉者たち

 日本のマンションの外壁はタイル貼りが多いですね、小口平タイルはレンガの木口寸法が基準、二丁掛タイルはレンガの木端寸法(木口の倍)が基になっています。シリーズマンション最盛期から、これらのサイズのタイル貼りが採用され、シリーズを展開する各社の標準仕様になっていました。初期のマンションではコンクリート打放の外壁に現場で小叩きの市松模様を入れたり、スタッコを盛るのが流行りましたね。
 外装タイル貼りの第一の目的は建物を保護することです。コンクリートの中性化や鉄筋の爆裂のことは別の資料を探していただくとして、外壁タイル貼りの他の目的の一つは、

日本のマンション創成期、欧米に憧れ真似をした世代、そのマンションを購入する世代が、「タイル貼り(レンガを積んだような)=欧米のようにゴージャスでモダンな生活」とイメージを持っていたからです。 
 塗装の場合は「ペンキ塗り=進駐軍(古っ)がなんにでも塗りたくった安っぽい=すぐに剥げる」というある世代までの人は記憶を持っていて、塗装に拒否反応を示す人もいます。その後もマンションを(安定して)販売するためには、外装タイル貼りでないと許されない時代がありました。 
 結果、レンガ積みのように見せることから始まったレンガタイルが完全に定着し、日本の建築仕上げ材料で独自に発展しました。
 主に水場で防水目的としてタイルを使用する欧州、独特の絵柄を施す装飾タイルが発達したイスラム文化圏、これらと比較すると現在の日本の外装タイルは、レンガ積みの代替品から発展したともいえます。

上の木の葉は、多分マロニエの葉(栃の木)

 実際には、石材やレンガを主な構造として積上げるだけの工法は、地震国である日本では発達する余地がありませんでした。
 外壁にタイルを貼ったマンションの修繕工事では、一般的な築年データや手の届く範囲の現地調査の上で劣化状況(貼替枚数や補修面積)の予測値は出せても、変動が大きいのが欠点です。外壁塗装では、劣化度合いに左右されず全体を塗装する場合が多いので、費用の変動が少なく、また塗装の色が選べる幅が広いので、時代に合わせたイメージチェンジができるのが大きなメリットです。

 塗料の品質が大きく進歩した塗装仕上げを見直してみてはいかがでしょうか、例えば、昭和の香りが強いマンションの薄暗く重いタイル貼りのエントランスでは、部分的にでもタイルの貼り替えのために、似たようなタイルを探す苦労の割に効果は少ないと思います。それよりも壁面タイルを全部塗装に変更して、大きなイメージチェンジを計画してみてください。
 塗装仕上げの中にアクセントやボーダーに竣工時に貼っていたタイルを少し取り入れてもいいのではないでしょうか。明るく広い空間に生まれ変わります。
松尾

ゴミ処分場は負け組の象徴なのか?

 民放の人気ドラマで、社内抗争に敗れた男が作業着姿でゴミ最終処分場らしき場所に立ち「俺はこんなところで働くような男じゃないのだっ!」と叫んでいました。
 落ちぶれた負け組感を演出したかったのでしょうが、「こんなところ」にいる職員(地方公務員)への転職は簡単ではないと思うのですが。(笑)
 また、最終処分場は民間委託の仕事が多いのですが、大型特殊自動車の免許ぐらいは持っていないと民間でも採用は望めません。
 別のドラマでも、ある年配女性が「いざとなったら掃除人夫でもなんでもやる覚悟はあるわよ」とのセリフがありましたが、実際の求人では最低賃金が上がり続けていることもあり、即戦力で経験者を優遇するため、いざとなってしまってからの高齢者の採用は難しいんでしょうね。

Caspar David Friedrich

 作家や脚本家の頭の中には、負け組が働けるのはゴミ拾いのようなキタナイ仕事に違いないという認識なのかもしれません。
 差別だポリコレだとすぐに大騒ぎするのが好きな業界の割には、あまりに時代錯誤だと思います。 
 ホームドラマを楽しんでいる子供の親が清掃関係で働いていることもあると思います。そんな子供の気持ちを考えられないのか、さすがに民放と言われても仕方ないですね。

 ウチのマンションでは、たとえ一日だけでもゴミ収集に来れない日があれば、ゴミ置き場はパンクします。
 パリで清掃員のストライキがあった時、あっという間に街にゴミが溢れたというニュースがありました。日本で真夏にストがあればハエやネズミが大繁殖、悪臭が漂いオモテナシどころではなくなりますね。
 コロナ禍の終息が見えない今、ゴミ収集車で走っているエッセンシャルワーカーと呼ばれる職員に感謝します。
松尾


 

長期修繕計画はバイブルにあらず。

 Aマンション役員のBさんは、来期は長期修繕計画の中で各扉等の鉄部塗装工事が予定されているので、総会で予算承認を受けるため管理会社に見積(3社)を依頼しました。
 前回の鉄部塗装は5年前の大規模修繕工事でした。現場を確認すると風雨を直接受ける場所の鉄部に若干の白亜化(チョーキング)と扉下端に点錆がみられましたが、開放廊下でない場所の鉄部は目視上、ほとんど劣化が見られません。表面劣化は砂塵等が直接塗装表面にぶつかるキズ等の他、紫外線や乾湿温度変化、様々な化学物質を含んだ塵埃が鉄部表面に蓄積したものとCO2との化学変化等があります。
 Aマンションは鉄部を日常的によく清拭されていたため、清掃管理が建物全体の劣化防止に効果的ということがよくわかる例になります。経験上、掃除(同時に換気)の行き届いているマンションは建物の劣化度合いが低いと感じます。空き家がすぐに劣化してしまうのを考えればわかりますね。

香港の竹製足場

3社に工事見積を依頼するときは1社は管理会社(関連施工会社)でよいと思いますが、2社は組合で探さないと公平な比較ができません。組合内部で共通の仕様書の作成や見積査定ができない場合は、竣工図書や過去の修繕資料を用意してマンション管理士に相談することをお薦めします。この内容については別の機会にします。

 長期修繕計画を決議したからといって、その通りに実行する必要はなく、一般的な計画の目安、資金計画の参考程度と考えた方がいいでしょう。管理会社や各分野の工事業者は商売のため当然のように施工を勧めてきます。
 本当に来期施工する必要がある工事なのか、あるいはAマンションのように鉄部のすべてを塗り直す必要があるのか、そもそも(消防用設備のボックス等)鉄部を違う材質にする選択肢がないのか、まずそこから調査し計画をしないと修繕積立金がいくら潤沢であっても、いずれ収支は破綻(または各戸負担金の値上)します。「管理会社に任せてあります。」とか「施工会社やコンサルタントがこう言ってたから。」の理由で毎度お決まりの工事をやっていては他の組合員に説明がつかなくなります。
 長期修繕計画は現在を基準にして予測値を算出したものであり、将来の生活環境の変化や、その求められる水準に合った仕様ではありません。例えば、セキュリティーやインターホンシステム関連、宅配ロッカーシステム、造園土木計画、IT化への設備対応関連等が予備費等で計画されているのかを確認しておかなければ大きな金額変更が必要になってきます。
松尾

これを着て外を歩けますか?

 知人のAさんは繊維業界一筋で定年退職され、体が動くうちに異業種を経験したいと、マンション管理員の職に就かれました。
 仕事内容に問題はありませんが、服飾も扱っていたAさんにとっては、管理会社が支給したユニフォーム(制服)のセンスの悪さに驚かれたようです。しかも作業用にしては生地の品質が疑問で、デザインはどこかの国の革命の服を連想するものでした。

パブロ・ピカソのバスク柄シャツ

 あなたはこれを着て外を歩けますか?とフロントに質問したところ、他の場所の管理員がこれを着ているのをあまり見ないとのことでした。
 Aさんのように一つの業界で定年まで勤め上げた人は特に、経験とプライドの中でも節度を持って物事を考え行動されます。
 これまでとは全く違う世界に入り、期待と不安の中、都落ちならともかく、社員も着ないような制服を与えられて、「囚われ人」になってしまったような気分だったと思います。

 別の管理会社では、管理員がどこにいるかよく目立つという発想から、制服の上着を鮮やかな黄色に変えたところ、居住者から「ヒヨコが歩いてるみたい。」、「大きな保育園児か?」等と不評でした。
 一方的な考えで「異物」を持ち込むと、マンションによっては、その建物の雰囲気と全くマッチしない場合があります。本部機能がある組織は押し付けではなく、調和を十分に考えてないと現場には受け入れられませんね。

 今はユニフォーム(制服)というより、その文化的な思考を含めた衣装という扱いでコスチュームと呼ばれるようです。
 管理業界が企画会議にデザイナーを入れる時代は望めませんが、管理会社のオジサンのセンスで一律に決めるのではなく、目的のマンションの建つ街の個性、居住者が意識するグレード、管理員の個性等を考えあわせたコスチュームを考える時代です。
松尾

クルーズ船で思い出すこと・・・困った役員

 ウィルスクラスター感染の典型となったクルーズ船で思い出したことがあります。
 教育関係の仕事に長年携わった役人で、定年後に天下った先では特に仕事はなく、そこで自分史を書き上げて退職し、夫婦でクルーズ船に乗り世界一周をして帰国したという管理組合の役員がいました。

Carnival_Panorama_docked_in_Puerto_Vallarta_1-8-2020

 その自分史を自費出版し、上の立場の人には贈呈していますが、下の立場の管理会社のフロントや業者には買わせていたということでした。自分史の内容は、「我が人生に一片の悔いなし」というタイプの人物なので、読まずともだいたい想像できます。(笑) 

 夫婦はクルーズ船内で毎日交換されるシャンプーリンスと石鹸のセットをたくさん持ち帰り「うちじゃあ使わないから」ということで管理室へ持参された。世界一周旅行のお土産をありがたく頂戴したものの、管理員は「うちでも使わないよ」という心境だったろうと思います。
 
 ともかく、こういうタイプの人物(以下A理事)が管理組合の役員に加わったので、管理会社のフロントや管理員は苦労したようです。
 管理員はA理事の「清掃チェック」に付き合う羽目になりましたが、各階の廊下、階段、敷地外周の歩行がハードだったようで、これは自然消滅しました。 
 フロントには、総会に配付する資料の隅々まで「熱心」な質問があり、毎日の対応に膨大な時間を取られたようです。
 総会当日、理事会承認した内容について、組合員から質問を受ける立場であるA理事は、理事長や管理会社に対し、些末と思えることを上から目線で質問して総会を混乱させました。いつも昼前には終わる総会が午後へずれ込み、さらに時間が経過してA理事以外は理事長だけという状態になった時点で、途中退席者の委任を受けた議長(理事長)がすべて可決し終了しました。理事長は最後まで紳士的で、管理会社のフロントも粘り強く、総会議事録(案)もうまくまとめていました。
 このA理事のようなタイプの人物は、マンション内でも孤立してしまい、居心地はいいものではなくなると思うのですが、本人がそれを感じるかどうかが問題でしょうね。
 個人情報になるので開示できるのはここまでです。

 このマンションとの関りはマンション管理士としてではなく、ある工事計画の説明をするために参加した時の出来事です。総会後の打合せのため、最後まで見届けました。
松尾

笑えない事故

 認知症の高齢者が京阪線の線路に入りこみ、電車を止めてしまった事故がありました。(4/25の報道)
 以前、あるマンションの管理員の奥さんから、主人は時々認知の症状が出るので退職するとの連絡をいただきました。新しい管理員と引継ぎも終わり2ヶ月ほど経った頃、その元管理員がひょっこりと「出勤」してきたのです。現管理員がよくできた人で、少しの会話の中で状況を察し、元管理員の心を傷つけないように引き取ってもらったことがありました。その後も何度か出勤され、奥さんが追っかけて来られた日もあったようです。
 管理会社は、簡単な雇用(労働)契約、や業務委託契約により管理員を現場に派遣しています。認知症に限らず、仕事に支障がある可能性がある持病、病歴を隠して契約するのは「健康状態」の詐称になります。雇用側が健康診断書と保証人2名とか、卒業証明書とか、第2次面接の日時等と色々要求しているうちに、他の管理会社に先に採用されてしまい、良い人材に逃げられてしまうことがあるため、短時間でも会話を通してその人の雰囲気、歩き方等を総合して判断し、面接だけで即決(内定)することもあります。また、現管理員が急な入院等で、すぐに働いて欲しいというケースが多いという理由もあり、健康状態を細かく聞き取りできてないのが現状だと思います。
 

 病気を知らず本人がケガをしたり、トラブルの原因を作った後では、雇用側が「知りませんでした。」では済まないので、試用期間中にコミュニケーションをよくして体調のことを聞き出すのがよいと思います。人によっては大病をしたことを自慢気に話すこともありますね。ある日、管理員が屋上で倒れていたなど想像したくありません。

 別のマンションの役員から、以前なら挨拶を普通にしていた方なのに、明らかに認知症状では?という一人暮らしの高齢者が数名居住されているという情報について、管理組合で何かできることはないのか、今話し合っています。それぞれの家庭の事情やプライバシーの問題もあると思いますが、万が一の対応、連絡、定期的な見守りは必要だと思います。さらに期日限定ではなく、持続することが重要になります。
松尾

総会どうする?

 マンション管理組合との管理委託契約の中で、管理会社は管理規約で定めた時期までに通常(定時)総会が開催できるように準備しています。この新型コロナウィルス感染拡大防止の状況下、総会開催について3/27マンション管理センターのQ&A(以下にリンク先)

に総会の延期、議決権行使書及び委任状のみの総会、書面決議等の方法が示されています。

 総会延期の場合は、本来が通常の時期の総会で情報発信(収集)できる内容が時間経過により新鮮さを失います。例えば半年以上前に新年度が始まっていては予算承認等の意味も薄れます。総会議案書を先に配付しても、後の総会開催までの期間中に本人を含め環境、情勢の変化による影響があれば、議案書受取時とは判断基準も違ってきますね。

 議決権行使書と委任状だけで総会を開催する場合でも、役員間に感染意識のレベル差がある不安の中で、最低限の会話が必要になり、管理会社関係者の移動、接触も発生します。経験上、出席通知書を出さずに当日に出席して発言するのが好きな区分所有者もいます。

 書面決議は、①区分所有者(議決権者)の全員から今回の総会は「書面決議の方法をとる。」ことの承諾を受けてから、②議案の決議(規約で定められた通り)をする順番です。①で全員の承諾が条件になるため、1人でも反対や連絡が取れない区分所有者がいた場合は②も不成立になります。

 共用部分の管理に関する事項は「集会の決議で決する。」の原則から、書面決議はあくまでも「決議があったものとみなす。」ものであり集会(総会)を開催したことにはならないのですが、方法も決議も有効です。
 現在、全国に緊急事態宣言が発出され、人の移動、集合し会話する行為を避ける上で最も合理性があると思います。

 マンションの規模やタイプにもよりますが、全員の承諾を得ることが可能な管理組合は、普段でも健全で無駄がなく管理が行き届いていると想像できます。
 開催に否定的な役員さんには書面決議の方法を提案してはいかがでしょうか?

松尾

Augst Macke ( 1887-1914) 「四人の少女達 」

ルーフバルコニーの柵の外周管理

 マンション標準管理規約第14条(バルコニー等の専用使用権)及び別表4共用部分の範囲で、バルコニー等の位置、専用使用権者が記載されています。
 標準管理規約第21条(敷地及び共用部分の管理)第1項では、「バルコニー等の保存行為のうち、通常の使用に伴うものについては、専用使用権を有する者がその責任と負担においてこれを行わなければならない。」とあります。

 一般的なバルコニーの排水溝は柵(手すり壁・腰壁)の内側にありますので、専用使用権者が通常の使用に伴う保存行為(雨水等が流れるように排水溝の掃除等)を行うことが可能ですが、ルーフバルコニーでは、手すり柵の外側に排水溝があり、専用使用権者が柵の外に出て通常の管理を行うことが難しい(危険、出入不能等)場合でも、排水溝にゴミを詰まらせたことが原因で事故等が起きれば、その区分所有者が責任を負うことになります。
 管理会社との委託契約書の仕様書にルーフバルコニーの管理が含まれいても、目視ができない場所で、管理には専有部内と通らないとルーフバルコニーに出られない構造である場合では、在宅していただかないと点検清掃ができません。管理会社は事故があった場合にトラブルを避けるためには、直近の点検時に在宅要請にもかかわらず不在であった場合は責任を負わない旨の契約条項を含めることが必要だと思います。
 仕様にない場合や自主管理の場合等でも、事故発生の責任所在を明記してトラブルを避け、総会などで説明して理解していただくことが重要と思います。


 尚、標準管理規約に「屋上テラス」という記載もありますが、テラスはテラ(土、地球)の意味から1階の床部分(デッキやタイル等で仕上)を指すものだと思います。屋上は床をどう加工しても「屋上」です。
松尾

マンション管理員から感染者が出るまでは?

Alexander Girard
Dolls Little Devil

 戸建てに住んでいる場合ゴミの収集は、指定曜日の朝8時までに出すという制限がありますが、一般的なファミリーマンションの居住者は建物内や敷地内にゴミ置場があるので、比較的にゴミ出しは自由にできます。大規模マンション等の例外もありますが、その出されたゴミを指定の集積所に運ぶのは管理員、清掃員です。
 ニュースではゴミ収集の作業員を新型コロナウィルス感染から守る対策や、ライフラインを支えるエッセンシャルワーカーの感染リスクを減らすため指定ホテルから通勤してもらう支援などの報道がされています。
 マンション管理会社の中で感染リスクが高いのは現場の管理員、清掃員です。管理会社は「感染防止のため管理員、清掃員が休みますので、ゴミは各自で指定曜日の朝8時までに集積所へ運んでください。」と言えず、また居住者全体に伝えて協力を受けるのは不可能なので、管理員、清掃員を具体的な対策も支援もなく働かせているのが現状です。

 多くの人が感染リスクを抱えて働く中、大学生からアルバイトが減った(コロナ禍)ので授業料が払えない旨の報道がありましたが、言い換えれば「時給が高くて、楽できて、きれいな仕事のアルバイトが減ったので・・・」と言っているように聞こえます。同じ年代の多くの人が職を失くし、スマホさえ持てず必死で生きていることを忘れないで欲しいと思います。ここ大田区では3Kと呼ばれる仕事はいつでも募集(今なら運送関係、小売り、流通倉庫等)しています。

 対策もできないままマンション管理員から感染者が出てしまうと、管理会社は管理組合との管理委託契約継続どころではなく会社の存亡に関わってきます。
松尾

ご入居者様アンケートとマスク

 新築マンション入居後の「ご入居者様アンケート」で、明らかに入居後に本人が付けただろうと思えるキズ等に、欠陥品を買わされた等とクレームをつけ、代わりにマンションの駐車場を無料で使わせろ等と関係のないことを言ってくる人が必ずいます。
 この度のマスク騒動の中でもSNS上で、国が配布したマスクの中に虫が入ってたとか、カビの生えてるのを見つけたのを自慢していた人がいました。レストランで注文した料理を8割ほど食べてから虫が入ってたと強請りをするチンピラと似ています。何億枚のマスクの中には不良品もあるかもしれませんが、自分こそ正義で、相手を非難するだけの風潮は幼稚ですね。
 マンションのアフターサービスには予算を取っていますので、顧客対応さえ間違わなければ赤字になることは少ないですが、すでにパッケージしてしまったマスクを検品するのは非常に多くの人手が必要で、高価なマスクになりそうです。
松尾 

https://decouvrirlendroitdudecor.blogspot.com/

バルコニーに布団を干そう!

 分譲マンションの販売営業で多用するカタカナは、ハイソサエティー、ステータス、ハイグレード、セレブの仲間入り等、顧客をなんとなくそんな気にさせます。見栄っ張りの奥様などこれでイチコロの時もあります。マンションを買ったらほとんどの人が借金生活なのに大きな勘違いをさせるわけです。営業トークでも「ここはハイソな方々が暮らすマンションで美観を大事にしますから、バルコニーに布団は干せません。」等と洗脳されてしまい、入居後も本気でそう思っている人が多いのです。
 自然光が射しているのに反エコである布団乾燥機や洗濯物に乾燥機を使う理由はありますか?布団を干すことで、フカフカ感が復活、ダニやカビを抑え、健康管理の上でよい結果が報告されています。干した後はいい匂いがしますね。http://answe119.com/post-711/
 

Apartments in Napoli

景観法に基づく条例などがあれば従うべきですが、マンションバルコニーでの布団干し禁止を細則で定め監視も罰則もなければ人の健康とどちらを優先すべきでしょうか?
 ツギハギとシミのある布団が並ぶ貧乏臭い昭和の光景とは時代が違います。例外はあると思いますが、妙なこだわりは捨ててバルコニーに布団を干しましょう。
松尾

Stay Homeとマンション

tsukimura

 新型コロナウィルス感染防止のためには家にいることが一番でしょうが、毎度の食事を用意しなければなりません。今は外食もできないので、出前を頼む人が増えています。店を開けられないけど売り上げが欲しいレストラン等と、ウーバーイーツのようなフードデリバリーシステムがマッチして、大きなリュックを背負った人がよくマンションにもやってきます。私の世代の多くは、出前は祝い事や大事な来客の時だけという感覚が抜けていないと思います。(笑)

 街へ買い物に出るのも控え、ネットショッピングが増えています。マンションにはいつもの宅配便や見慣れない配送業者がやってきてエントランスのインターホン前には順番待ちをしていました。宅配ボックスもすぐに満杯になるので何度も同じ業者がやってきます。
 困るのは、昨日0418(土)のように大雨が降った日、マンションの床は、次々やってくる配送業者の濡れた台車や靴により、すぐにあちこちの床が泥ビタになってしまいます。一軒でも多く早く配達したい業者が床汚れを気遣うことはありません。
 新型コロナウィルス感染防止のため、清掃員管理員を休みまたはゴミ出しだけ勤務にした管理会社や管理組合は、現在の状況を理解した対応、対策が求められます。
松尾

あと一歩が、後で大きな差

大田区マンション管理士会が関わった都内AとB、2棟のマンションの話です。
 マンションの給水方式を貯水槽方式から増圧直結方式に変更後、貯水槽を撤去したあとの25㎡(15帖)ほどの空間を多目的ルームで有効利用しようということになりました。A、Bともマンション内に集会室はありません。撤去後の空間を簡易に仕上げ、椅子テーブル等も組合員の協力で設置されました。
 

 2年経過後、最初の頃は理事会に使っていたAマンションでしたがモノが増え続け、現在では組合倉庫になっています。これに比べBマンションでは毎月の理事会や業者打合、地域活動の作業場所として開放、子供グループの勉強会等が毎週のように予約(無料)されていています。有料の会館、会議室を借りるほどでなく、喫茶店では騒がしく、個人宅では負担がかかってしまう「集まり」需要にはまったようです。
 この差は、Bマンションが最初から空調(エアコン)を設備しておいたことだと思います。夏は蒸し暑く、冬は底冷えするAマンションの方は利用がなくなってしまいました。倉庫になった後ではエアコンの設置は承認されないでしょう。
 Bマンションの理事会が将来を考え、あと一歩、投資したことが功を奏したのだと思いました。
松尾

コスト下げ逃げに注意

九龍城砦

 第2回目の大規模修繕工事の時期を迎えるA管理組合、修繕積立金の不足は明らかで、まず管理費を削減できないかと、Bマンション管理士に依頼、削減予定年額の半分を報酬とする契約で提案通り実施しました。変更予算実行後、植栽剪定は年4回が1回になり枝葉は伸び放題、定期清掃の回数は半減、日常清掃管理員も時短のため、居住者から清掃があまりにも不十分と指摘されてしまいました。

 法定点検を除く各設備点検の年間保守契約を解除したので、小修繕でもこの経年建物では費用が膨らみ、その上、エレベーターと自動ドアの高額な部品交換工事が必要になり、管理費削減どころか管理費値上を検討しなければならないほどでした。
 この結果にBマンション管理士はさらに別料金を要求したので信頼を失い、A管理組合は全体として今後何を優先するべきなのか、適正な具体策について大田区マンション管理士会に相談がありました。
松尾